403 / 498
キュルケースパンチ
しおりを挟む
ローズは強く宣言すると、持っていたジュースを飲み干す。
アメリアは幼いライバルからの言葉を受けて、自分の気持ちと向き合ってみた。
まだ子どものローズにここまで言わせておいて、自分が逃げ続けていいのだろうか。
冨岡が自分の気持ちを受け止めてくれなければどうしよう、という怖さ。ようやく安定し始めたというのに、全てが壊れてしまうかもしれない。
利益など求めず、助けてくれた冨岡に対する侮辱になる可能性もある。
それでもアメリアの中に芽生えた、冨岡への気持ちは日に日に増していく。ずっと一緒にいたいと望むからこそ、恐怖を感じ保身的になる。動けなくなっていくのだ。
本当に自分でいいのだろうか。自分が、冨岡の隣にいていいのだろうか。
「ローズ様、私・・・・・・」
「何? 私なんかでいいのか、なんて言ったらキュルケースパンチをお見舞いするわよ」
そう答えながら、ローズは右手を掲げる。華奢で可愛らしい右手だ。
「キュルケースパンチ?」
「キュルケース家に伝わる秘伝のパンチよ。主に、臆病者の性根を叩き直すために使われるわ。いい? アメリア。トミーはあなたたちのために、様々な行動をとっているでしょう? それはどうして?」
ローズはアメリアの手を握ってから問いかける。
どうして冨岡は、アメリアたちを助けるのか。アメリアは真正面からぶつかってくるローズに対して、本心で答える。
「それは、優しいからじゃないでしょうか」
「優しさ、それもあるでしょうね。トミーは私に対しても、優しさで問題を解決してくれたわ。けれど、優しさには限界があるのよ。トミーの行動は、優しさの範疇を超えている・・・・・・そんなことあなたが一番理解しているでしょう」
確かにそうだ。アメリアは現在の安定を壊したくなくて、直視していなかったが、冨岡の行動は優しさだけで説明できるものではない。
破綻寸前の自分たちと一緒に住み、仕事を生み出し、借金を整理し、多くの子どもたちを救うための場所まで作ってくれた。成り行きや優しさだけでそこまでできるだろうか。
「じゃあ、トミオカさんはどうして・・・・・・」
そこまで言っても本心を自覚しないアメリアに痺れを切らし、ローズは彼女の胸を鷲掴みにした。
「きゃっ、ローズ様! 一体何を!」
「アメリア、立派に育った乳房のせいかしら? あなたが本心に届けないのは、これが邪魔しているからね?」
「痛いです、ローズ様。ちょ、ちょっと」
「ムカつくわね、せっかくトミーと大きな年齢差もなく今すぐ婚姻を結べるのに。これほど成長しているというのに。この奥にあるものがわからないの? それと同じものをトミーも持っているのよ。全く、ここまで言わないとダメなの、あなた」
「私の本心と同じ・・・・・・トミオカさんが私を助けてくれるのは、愛情を持っているから・・・・・・」
ようやく答えに辿り着いたアメリア。
そんな彼女の言葉を聞いたローズは、優しく微笑む。
「わかっているじゃない、アメリア。そして、自分自身がトミーを愛しているって気づいたのね」
「・・・・・・はい。ローズ様、私・・・・・・トミオカさんが好きです。遅くなりましたが、これが私の答えです」
「ふぅ、大人ってめんどくさいわね。最初から私は、それを聞いていたのよ、アメリア」
アメリアは幼いライバルからの言葉を受けて、自分の気持ちと向き合ってみた。
まだ子どものローズにここまで言わせておいて、自分が逃げ続けていいのだろうか。
冨岡が自分の気持ちを受け止めてくれなければどうしよう、という怖さ。ようやく安定し始めたというのに、全てが壊れてしまうかもしれない。
利益など求めず、助けてくれた冨岡に対する侮辱になる可能性もある。
それでもアメリアの中に芽生えた、冨岡への気持ちは日に日に増していく。ずっと一緒にいたいと望むからこそ、恐怖を感じ保身的になる。動けなくなっていくのだ。
本当に自分でいいのだろうか。自分が、冨岡の隣にいていいのだろうか。
「ローズ様、私・・・・・・」
「何? 私なんかでいいのか、なんて言ったらキュルケースパンチをお見舞いするわよ」
そう答えながら、ローズは右手を掲げる。華奢で可愛らしい右手だ。
「キュルケースパンチ?」
「キュルケース家に伝わる秘伝のパンチよ。主に、臆病者の性根を叩き直すために使われるわ。いい? アメリア。トミーはあなたたちのために、様々な行動をとっているでしょう? それはどうして?」
ローズはアメリアの手を握ってから問いかける。
どうして冨岡は、アメリアたちを助けるのか。アメリアは真正面からぶつかってくるローズに対して、本心で答える。
「それは、優しいからじゃないでしょうか」
「優しさ、それもあるでしょうね。トミーは私に対しても、優しさで問題を解決してくれたわ。けれど、優しさには限界があるのよ。トミーの行動は、優しさの範疇を超えている・・・・・・そんなことあなたが一番理解しているでしょう」
確かにそうだ。アメリアは現在の安定を壊したくなくて、直視していなかったが、冨岡の行動は優しさだけで説明できるものではない。
破綻寸前の自分たちと一緒に住み、仕事を生み出し、借金を整理し、多くの子どもたちを救うための場所まで作ってくれた。成り行きや優しさだけでそこまでできるだろうか。
「じゃあ、トミオカさんはどうして・・・・・・」
そこまで言っても本心を自覚しないアメリアに痺れを切らし、ローズは彼女の胸を鷲掴みにした。
「きゃっ、ローズ様! 一体何を!」
「アメリア、立派に育った乳房のせいかしら? あなたが本心に届けないのは、これが邪魔しているからね?」
「痛いです、ローズ様。ちょ、ちょっと」
「ムカつくわね、せっかくトミーと大きな年齢差もなく今すぐ婚姻を結べるのに。これほど成長しているというのに。この奥にあるものがわからないの? それと同じものをトミーも持っているのよ。全く、ここまで言わないとダメなの、あなた」
「私の本心と同じ・・・・・・トミオカさんが私を助けてくれるのは、愛情を持っているから・・・・・・」
ようやく答えに辿り着いたアメリア。
そんな彼女の言葉を聞いたローズは、優しく微笑む。
「わかっているじゃない、アメリア。そして、自分自身がトミーを愛しているって気づいたのね」
「・・・・・・はい。ローズ様、私・・・・・・トミオカさんが好きです。遅くなりましたが、これが私の答えです」
「ふぅ、大人ってめんどくさいわね。最初から私は、それを聞いていたのよ、アメリア」
0
お気に入りに追加
317
あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。

おじさんが異世界転移してしまった。
明かりの元
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか?
モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。

勇者PTを追放されたので獣娘たちに乗り換えて楽しく生きる
まったりー
ファンタジー
勇者を支援する為に召喚され、5年の間ユニークスキル【カードダス】で支援して来た主人公は、突然の冤罪を受け勇者PTを追放されてしまいました。
そんな主人公は、ギルドで出会った獣人のPTと仲良くなり、彼女たちの為にスキルを使う事を決め、獣人たちが暮らしやすい場所を作る為に奮闘する物語です。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる