百億円で異世界に学園作り〜祖父の遺産で勇者・聖女・魔王の子孫たちを育てます〜

澤檸檬

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ノルマンの提案

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 物語のあらすじを話すように、簡潔にまとめた冨岡の話は必要な情報だけをノルマンに与える。
 余計な情報が省かれていることもあり、ノルマンはただ戸惑うだけだった。

「まさか、あの男に・・・・・・いや、考えてみれば子どもがいること自体不思議ではない、か。愛妻家じゃったし、家族への想いは人一倍強いはずじゃ。何がなんでも子どもを生き残らせようと考える。自分の状況を理解しておったとすれば、国の目を掻い潜る魔法くらい開発しておろう。他の者からすれば、未知の魔法じゃ。どれだけ調べようとも足はつかん。一応じゃが、筋は通っておるか・・・・・・」

 すっとぼけた老爺。そんな印象だったノルマンだが、彼も元々は優秀な研究者である。今のノルマンからはそんな雰囲気が感じられた。
 真剣に考え、自分なりに結論を出す老爺。

「ひと目合わせてもらえんかのう。その、リオという少年に。そうすれば結論は出る。いや、お前さんのことを信じていないわけではないんじゃ。だが、どうしてもこの目で確かめたい。もしも、あの男に子どもがおるのなら、ワシにできることもあろうて」
「ノルマンさんにできること、ですか?」
「そうじゃ。魔王の血を引いているのなら、何を秘めているかわからん」

 ノルマンがそう話すと、冨岡は眉をピクリと動かして言葉を割り込ませる。

「もしかして、魔法を教える、とか? あの、もしもリオくんが魔王の息子だとしても、どんな未来を望むかはリオくんの自由です。もしも彼が望まないのなら、どれだけ才能があっても無理強いは・・・・・・」
「ほっほっほ、勘違いせんでくれ。魔王の息子に魔王と同じ魔法の道を歩め、などと思わんわい。じゃが、子どもの体に強大な力を宿しておれば、予期せず何か発現する可能性があるんじゃ。いわゆる『小児暴走』というやつじゃ」

 冨岡の不安をよそに、微笑みを浮かべるノルマン。
 どうやら杞憂だったようだ。

「小児暴走?」
「聞いたことないか? 魔法の才能を秘めた子どもが、意図せず魔力を暴走させてしまう現象じゃ。体を変質させたり、炎を纏ったり、風を起こしたり。症状は様々じゃが、高名な魔法使いの子どもに起こりうる現象でな。原因は自分の魔力をコントロールしきれないことにあるんじゃ。お前さんの話を聞けば、その少年は魔力痕をはっきりと目視したんじゃろ? 魔力痕を確認するためには、魔力を必要とする。子どもらしからぬ魔力を持っておることは間違いないじゃろうて」

 ノルマンの説明を聞いた冨岡は、現在教会を学園に改装していることをはっきりと意識した。
 もしも今、炎を纏ってしまうと全てが消し炭になる。
 その上、リオが罪悪感に苛まれてしまうだろう。
 それだけは避けたいところだ。

「そんなことが・・・・・・」
「ワシなら魔力コントロールを教えてやれる。どうじゃ?」

 そんなノルマンの提案を断る理由などなかった。

「もちろんです。ぜひ会ってみてください。そうだ、じゃあ今日一緒に夕食でもどうですか?」
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