百億円で異世界に学園作り〜祖父の遺産で勇者・聖女・魔王の子孫たちを育てます〜

澤檸檬

文字の大きさ
上 下
351 / 498

趣味、スイーツ食べ歩き

しおりを挟む
 翌日、仕入れ等の業務をこなした冨岡は屋台をレボルたちに任せ、一人でキュルケース公爵邸を訪れていた。
 本来なら事前に約束を取り付け、様々な手続きを踏んで入るべき場所なのだろう。しかし冨岡が顔を出せば、公爵邸の前に立っている衛兵が即座にダルクへと話を通すようになっていた。
 常々、少々お待ちくださいという言葉の『少々』が少々ではないことが多い、と思っていたのだが、キュルケース公爵邸の『少々』は本当に少々である。
 衛兵はすぐに冨岡を公爵邸の一室へと通し、お茶と小菓子を置いた。
 冨岡がこちらの世界にも美味しい紅茶があるのだな、と感動しているうちにダルクが部屋に入ってくる。

「お待たせ致しました」

 ダルクはこれ以上ないほどお手本のようなお辞儀をすると、冨岡の向かいに座った。

「それで、今日はどのようなご用でしょうか?」

 そう尋ねられた冨岡は、手土産として持ってきていたおすすめの紅茶と焼き菓子の詰め合わせを出す。

「本題の前にこれを。お口に合えばいいのですが」
「これはこれはご丁寧に」
「お茶と焼き菓子です」
「おお、トミオカ様のお持ちくださるものは、この世のものとは思えないほど美味ですからな。旦那様方にお出しさせていただきます」

 そりゃそうだ、と冨岡は苦笑する。この世のものとは思えなくて当然だ。この世界のものではないのだから。

「公爵様やローズにも味わってもらいたいのですが、ぜひダルクさんにもと思って、小さめのやつを入れてます。個人的に楽しんでくださいよ」
「心遣い痛み入ります、これは楽しみですな。実は甘いものに目がありませんので。暇を頂いた際には、街の菓子店を巡っているくらいです」

 可愛い趣味だな、と冨岡は思わず笑みを溢す。
 趣味、スイーツ食べ歩き。いつかご一緒したいくらいだ。
 目を輝かせながら手土産を受け取ったダルクは、一呼吸置いてから「それでは」と話し始める。

「本題をお聞きいたしましょう」
「ああ、今日はお願いがありまして、その・・・・・・ヴォロンタ家のことなんです」
「ほほう、遂に学園に向けて本格的に動き出しましたか。こちらでもそろそろかと思い、ちょうどこの屋敷にお呼びしているんですよ」
「ええ!?」

 エスパーか何かなのか、この人は。
 今日、冨岡が来ることを予測してヴォロンタ家の者を呼んでいる。そんなことがあるのか、と驚く冨岡。
 するとダルクはクスクスと笑ってから首を横に振る。

「冗談でございます。トミオカ様との出会い以来、ローズお嬢様は随分素直になられまして、他の家庭教師も受け入れるようになったんですよ。そしてちょうど今日は、魔法学の勉強の日。というわけで、屋敷に居られるという話です」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

おじさんが異世界転移してしまった。

明かりの元
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか? モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

処理中です...