百億円で異世界に学園作り〜祖父の遺産で勇者・聖女・魔王の子孫たちを育てます〜

澤檸檬

文字の大きさ
上 下
346 / 498

国是と神

しおりを挟む
 その時代、その国にとって何が罪になるのかは大きく異なる。
 様々な国で歴史上罪とされてきたものの中には、『国是に逆らう』というものがあった。国是とは国全体が正しいと認める政治上の方針。国の教えというのは国是たり得るだろう。
 例え『それ』が真実であり事実だとしても、国の教えに背いたものであれば、国是に逆らうという罪に該当してしまう。
 それ、とは人間の文明を進めるために研究を積み上げた学者の意見。
 研究の結果、新たな真実を発見したとしよう。もしもその真実が国の教えに逆らうものであれば、黙っておくのが最適解だ。
 しかし、人類の知は停滞してしまうだろう。真実から目を背け続けるのだから、必然である。
 そんな停滞を許せなかった学者がおり、その学者は『国の教えに背いた』として罰せられた。
 冨岡はそこまで説明してから、一呼吸おいて言葉を続ける。

「・・・・・・これが取り潰された家庭教師の一族の話です。ダルクさんが言うには二百年ほど前の話だそうですけど」

 現在の王がそうしたわけではない、というのはダルクにとって重要なところらしい。王との血縁関係が存在するキュルケース公爵家に使えているのだから、気遣うのは当然だ。
 黙って話を聞いていたアメリアは、おずおずと尋ねる。

「その一族が背いたという国の教えって、どういうものなんですか?」

 子どもたちを教える教師候補の話だ。慎重になるのは、彼女の責任感故なのだろう。
 問いかけられた冨岡は、ダルクから聞いた話を思い出した。話の内容的に冨岡からすれば『そうなんだ』という感想しか持てなかったし、最終的にそういうものとして理解しただけである。
 けれど、自分も知っていたという口調で答えた。

「現在では当然になっている話なんですし、唖然としちゃうかもしれないんですけど、『魔法は理解によって増幅する』という事実の発表です」
「え?」

 驚きながら停止したアメリア。そこで冨岡は間髪入れずに言葉を付け足す。

「今の魔法学では当然なのですが、魔法を発動する時は何が起きてどうなるのかを理解し、強くイメージすることが大切」

 冨岡は言葉の最後に心の中で『なんですよね?』を付属しておいた。魔法なんて使えないのだから、曖昧なのは仕方がない。
 さらに説明は続く。

「しかし、二百年ほど前までこの国ではこう考えられていました。『魔法は神が与えた力』であると。つまり、魔法は神の祝福という認識であり、人間が神の領域を犯すようなことをすべきではない。人間が神の領域を左右できるという考え自体が、神への冒涜である、と。その頃の魔法学といえば、神の祝福を顕現する方法を学ぶのが一般的だったそうですからね」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

おじさんが異世界転移してしまった。

明かりの元
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか? モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

処理中です...