百億円で異世界に学園作り〜祖父の遺産で勇者・聖女・魔王の子孫たちを育てます〜

澤檸檬

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 レボルが原付で帰宅し、アメリアと二人で屋台に残った冨岡。
 遠のいていくエンジンの音を聞きながら、アメリアがゆっくり口を開く。

「本当にいいのでしょうか」
「何がですか?」

 冨岡が聞き返すと、アメリアは少し悩んだ様子で息を吐いた。

「その・・・・・・リオに全てを話さないという選択です」

 これは元々アメリアが持っていた性質なのだろうか。彼女は一度受け入れると決めた相手に対して、責任を感じすぎる。自分の心を犠牲にするような勢いで、相手の分まで悩み、傷つこうとするのだ。
 それは一見すると美しい慈愛。だが、どこか危なかしく、不安定に見える。
 リオの父親が魔王であるという事実も、アメリアには一切責任がない。それを『今は伝えない』と判断したのも、冨岡やレボルと決めたこと。それに責任があるとしても一人で抱える必要などないはずだ。
 また、リオに今すぐ伝えることを決めていたとしても、彼が内心傷ついていないか、と責任を感じていただろう。

「アメリアさん・・・・・・」

 冨岡は自分の考えがまとまる前に彼女の名前を呼んだ。
 俯いていたアメリアが顔を上げると、冨岡は額を指でトントンと叩いてから考えをまとめ、言葉を続ける。

「いきなりのことですから、驚くのは当然です。戸惑うのも無理はない。アメリアさんの優しさは近くで見てきましたから、それなりに知っているつもりです。その優しさにフィーネちゃんもリオくんも救われた。だからこそ、こうして自分の心を痛め続けるのでしょう」
「私にできることは、それくらいですから。子どもたちが悲しまなくていいように」
「だったら、アメリアさんを救うのは誰なんですか?」

 冨岡がそう問いかけると、アメリアは意外そうな表情で停止した。

「え?」
「誰がアメリアさんの傷ついた心を救うんですか?」
「私はすでに、救われた側です。孤児だった私をこの教会が救ってくれた。そのおかげでここまで生きてくることができ、こうして子どもたちのために悩むことができる。私が考えるべきことは、私のことではないんです。受けた恩を次に繋ぐこと・・・・・・私にできることはそれくらいですから」

 そんなアメリアを愛しく思う反面、腹立たしくもある。尊敬しながら、軽蔑していた。
 彼女にとって子どもたちが大切なように、冨岡にとってはアメリアも大切である。もちろん、子どもたちのことも大切に思っている。
 だからこそ、自分の大切な女性の幸せを軽んじる『アメリア』に腹が立ち、軽蔑の心が湧いてきた。
 けれど、彼女の優しさの一因を否定するわけにはいかない。息を呑みながら考え抜いた冨岡は、ある答えを出した。

「じゃあ、アメリアさんのことは俺が幸せにします。貴女が抱える悩みや苦しみは俺も背負う。だから、何でもかんでも一人で背負おうなんてしないでください」
「トミオカさん・・・・・・どうしてそこまで・・・・・・」
「それは貴女がす・・・・・・」
「す?」
「いえ、こんな時に言うべきことじゃないですね」
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