百億円で異世界に学園作り〜祖父の遺産で勇者・聖女・魔王の子孫たちを育てます〜

澤檸檬

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現実的な妥協

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 魔王の意図。何のために魔石を超えた魔石を遺したのか。どうしてこのタイミングでリオに届けたのか。
 その答え次第ではリオを傷つけかねない。彼に全てを伝えるのは、大人たちが知ってからである。
 だが、魔王は既に故人だ。今更話ができるわけもない。

「魔王の意図ですか・・・・・・」

 レボルがそう話始める。

「それこそ、我々が話し合っても想像の域を出ないですよね。答えは過去にしかない」

 確かにその通りだ、と思いながら冨岡は頭を抱えた。

「そうなんですよね。答えは知りようがないんです。でも、ほら、一般的に魔王ってなんていうか魔王じゃないですか」

 頭の使いすぎで一気に語彙力を失う冨岡。新しい情報や考えることが多すぎる。
 だが、アメリアとレボルには充分伝わったようだ。

「ええ、魔王です」
「魔王ですねぇ」

 簡単に翻訳すると『悪とされている』という意味になる。いきなり、自分の父親は国に背いた伝説の悪人である、なんて言われても戸惑うだけだ。幼い子どもがどう受け取るのかは想像に難くない。
 いっそ隠し通すことが優しさなのかとすら思う。
 考え疲れた冨岡は、不意に本音を吐き出した。

「なんでこんなもの送ってきたんだ、魔王」

 そんな冨岡の言葉に、アメリアとレボルは同時に同意する。

「ええ」
「ですよね」

 そもそも魔石を超えた魔石が送られてこなければ、こんな状況にもなっていない。何をされたわけではないが、魔王へのヘイトが溜まってしまう。
 ともかく、ここで話をしていても仕方がない。
 最初から考えてもわからないことを考え始めていた。詰みの状態から手を探しているのようなものだ。
 つまり最初から答えは決まっている。

「一旦、リオくんには何も伝えない方がいいかもしれないですね」

 冨岡が言うと、完全に納得したわけではないが、仕方がないという妥協の雰囲気を纏ってアメリアが頷いた。

「そうですね。今は・・・・・・隠しておくわけではないのですが、あえて触れることもないといったところでしょうか。リオがもう少し理解できるようになるまで」
「大人になるまで、なんて言いませんけど、少なくとも伝える側が動揺していないタイミングのほうがいいでしょうね」

 冨岡はそう答えて、立ち上がる。
 レボルも同意見のようで黙っていた。
 この場はあくまでも確認。認識を合わせるだけでも充分な時間である。
 時間を浪費するだけならば、現状維持で持ち越すのが現実的だ。
 冨岡はため息をついてから原付の鍵をレボルに渡す。

「今日はもう遅いので、原付で帰ってください」
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