百億円で異世界に学園作り〜祖父の遺産で勇者・聖女・魔王の子孫たちを育てます〜

澤檸檬

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帰宅するサーニャ

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 これからリオが安全に安心して暮らせるだろうことを確認したサーニャは、酒を飲み干してから立ち上がる。

「それじゃあ、そろそろお暇しようかね」

 元々、その日のうちに帰る予定だったサーニャ。だが、こんな時間までいたのは想定外である。
 冨岡が外を覗くと、女性一人で歩かせるわけにはいかない程度には暗い。

「今からですか? もうすっかり夜ですよ」

 そう冨岡が言葉にすると、サーニャは揶揄うような笑みを浮かべた。

「あれぇ、心配してくれるの? あらら、これは愛されちゃってますねぇ」

 アメリアに見せつけるよう、わざとらしく言う。
 しかし、冨岡はそんなサーニャの真意など考えず、真剣な表情で頷いた。

「そんなの心配に決まってるじゃないですか。何かあってからでは遅いんですよ。女性がこんな遅くに一人で街から街へ歩くなんて」
「ちょ、ちょっと、そんな本気で心配されたら照れるじゃないか」

 冗談で言ってみたことを真剣に考えられ、頬を赤くするサーニャ。どちらかというと強そうに見える彼女にとって、心配されることは珍しく、新鮮だったらしい。
 柄にも無く恥ずかしそうに手で自分の顔を仰いでいた。
 そんな彼女に冨岡は言葉を畳み掛ける。

「サーニャさんは誰が見てもお綺麗なんですから、しっかり自衛してください」
「き、綺麗って、そりゃね、私はね、綺麗だけども」
「はい、綺麗です。だから、今日は」
「今日は?」
「冒険者ギルドで護衛を雇いましょう」

 それまで照れていたサーニャの顔が一気に冷静さを取り戻した。
 確かに冨岡よりも冒険者の方が安全だろう。それでも冨岡が守る、と言うのを期待していた。そんな自分を馬鹿らしく思う。

「・・・・・・はぁ」

 サーニャは溜め息をついてから、アメリアに視線を送った。

「こりゃあ、アメリアも苦労するね。意志の強い天然なんて、困ったもんだよ」

 冨岡もアメリアもサーニャの言葉の意味がわからず首を傾げる。その中でレボルだけが笑いそうなのを我慢していた。
 呆れ顔のサーニャに対し、アメリアが「今日は泊まっていかない」と誘ったのだが、仕事が残っていると帰る姿勢を崩さない。
 それでも心配なことには変わりない、と冨岡がレボルに相談を持ちかけた。

「すみません、レボルさん。仕事終わりで疲れているでしょうけど、俺の依頼を受けてくれませんか?」
「ははっ、依頼されなくてもそのつもりですよ。サーニャさんを隣街まで送っていけばいいんですね。今日は美味しいお酒もいただきましたし、依頼料は先払いでもらったということで」

 すかさずレボルは自分の荷物を用意する。料理人兼冒険者であるレボルの有能さに感謝すると共に、彼のスマートさを羨ましく思う冨岡。
 これでサーニャの帰り道は安全だろうか。いや、今のレボルは武器を持っていない。ファンタジー異世界にありがちな、武器を持った盗賊が出てきたらどうなるだろう。
 何か武器を持っていないと心許ないのではないか。
 そう考えた冨岡はレボルにスタンガンを手渡す。軽く使い方を説明すると、レボルは即座に理解して携帯した。
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