321 / 498
帰宅するサーニャ
しおりを挟む
これからリオが安全に安心して暮らせるだろうことを確認したサーニャは、酒を飲み干してから立ち上がる。
「それじゃあ、そろそろお暇しようかね」
元々、その日のうちに帰る予定だったサーニャ。だが、こんな時間までいたのは想定外である。
冨岡が外を覗くと、女性一人で歩かせるわけにはいかない程度には暗い。
「今からですか? もうすっかり夜ですよ」
そう冨岡が言葉にすると、サーニャは揶揄うような笑みを浮かべた。
「あれぇ、心配してくれるの? あらら、これは愛されちゃってますねぇ」
アメリアに見せつけるよう、わざとらしく言う。
しかし、冨岡はそんなサーニャの真意など考えず、真剣な表情で頷いた。
「そんなの心配に決まってるじゃないですか。何かあってからでは遅いんですよ。女性がこんな遅くに一人で街から街へ歩くなんて」
「ちょ、ちょっと、そんな本気で心配されたら照れるじゃないか」
冗談で言ってみたことを真剣に考えられ、頬を赤くするサーニャ。どちらかというと強そうに見える彼女にとって、心配されることは珍しく、新鮮だったらしい。
柄にも無く恥ずかしそうに手で自分の顔を仰いでいた。
そんな彼女に冨岡は言葉を畳み掛ける。
「サーニャさんは誰が見てもお綺麗なんですから、しっかり自衛してください」
「き、綺麗って、そりゃね、私はね、綺麗だけども」
「はい、綺麗です。だから、今日は」
「今日は?」
「冒険者ギルドで護衛を雇いましょう」
それまで照れていたサーニャの顔が一気に冷静さを取り戻した。
確かに冨岡よりも冒険者の方が安全だろう。それでも冨岡が守る、と言うのを期待していた。そんな自分を馬鹿らしく思う。
「・・・・・・はぁ」
サーニャは溜め息をついてから、アメリアに視線を送った。
「こりゃあ、アメリアも苦労するね。意志の強い天然なんて、困ったもんだよ」
冨岡もアメリアもサーニャの言葉の意味がわからず首を傾げる。その中でレボルだけが笑いそうなのを我慢していた。
呆れ顔のサーニャに対し、アメリアが「今日は泊まっていかない」と誘ったのだが、仕事が残っていると帰る姿勢を崩さない。
それでも心配なことには変わりない、と冨岡がレボルに相談を持ちかけた。
「すみません、レボルさん。仕事終わりで疲れているでしょうけど、俺の依頼を受けてくれませんか?」
「ははっ、依頼されなくてもそのつもりですよ。サーニャさんを隣街まで送っていけばいいんですね。今日は美味しいお酒もいただきましたし、依頼料は先払いでもらったということで」
すかさずレボルは自分の荷物を用意する。料理人兼冒険者であるレボルの有能さに感謝すると共に、彼のスマートさを羨ましく思う冨岡。
これでサーニャの帰り道は安全だろうか。いや、今のレボルは武器を持っていない。ファンタジー異世界にありがちな、武器を持った盗賊が出てきたらどうなるだろう。
何か武器を持っていないと心許ないのではないか。
そう考えた冨岡はレボルにスタンガンを手渡す。軽く使い方を説明すると、レボルは即座に理解して携帯した。
「それじゃあ、そろそろお暇しようかね」
元々、その日のうちに帰る予定だったサーニャ。だが、こんな時間までいたのは想定外である。
冨岡が外を覗くと、女性一人で歩かせるわけにはいかない程度には暗い。
「今からですか? もうすっかり夜ですよ」
そう冨岡が言葉にすると、サーニャは揶揄うような笑みを浮かべた。
「あれぇ、心配してくれるの? あらら、これは愛されちゃってますねぇ」
アメリアに見せつけるよう、わざとらしく言う。
しかし、冨岡はそんなサーニャの真意など考えず、真剣な表情で頷いた。
「そんなの心配に決まってるじゃないですか。何かあってからでは遅いんですよ。女性がこんな遅くに一人で街から街へ歩くなんて」
「ちょ、ちょっと、そんな本気で心配されたら照れるじゃないか」
冗談で言ってみたことを真剣に考えられ、頬を赤くするサーニャ。どちらかというと強そうに見える彼女にとって、心配されることは珍しく、新鮮だったらしい。
柄にも無く恥ずかしそうに手で自分の顔を仰いでいた。
そんな彼女に冨岡は言葉を畳み掛ける。
「サーニャさんは誰が見てもお綺麗なんですから、しっかり自衛してください」
「き、綺麗って、そりゃね、私はね、綺麗だけども」
「はい、綺麗です。だから、今日は」
「今日は?」
「冒険者ギルドで護衛を雇いましょう」
それまで照れていたサーニャの顔が一気に冷静さを取り戻した。
確かに冨岡よりも冒険者の方が安全だろう。それでも冨岡が守る、と言うのを期待していた。そんな自分を馬鹿らしく思う。
「・・・・・・はぁ」
サーニャは溜め息をついてから、アメリアに視線を送った。
「こりゃあ、アメリアも苦労するね。意志の強い天然なんて、困ったもんだよ」
冨岡もアメリアもサーニャの言葉の意味がわからず首を傾げる。その中でレボルだけが笑いそうなのを我慢していた。
呆れ顔のサーニャに対し、アメリアが「今日は泊まっていかない」と誘ったのだが、仕事が残っていると帰る姿勢を崩さない。
それでも心配なことには変わりない、と冨岡がレボルに相談を持ちかけた。
「すみません、レボルさん。仕事終わりで疲れているでしょうけど、俺の依頼を受けてくれませんか?」
「ははっ、依頼されなくてもそのつもりですよ。サーニャさんを隣街まで送っていけばいいんですね。今日は美味しいお酒もいただきましたし、依頼料は先払いでもらったということで」
すかさずレボルは自分の荷物を用意する。料理人兼冒険者であるレボルの有能さに感謝すると共に、彼のスマートさを羨ましく思う冨岡。
これでサーニャの帰り道は安全だろうか。いや、今のレボルは武器を持っていない。ファンタジー異世界にありがちな、武器を持った盗賊が出てきたらどうなるだろう。
何か武器を持っていないと心許ないのではないか。
そう考えた冨岡はレボルにスタンガンを手渡す。軽く使い方を説明すると、レボルは即座に理解して携帯した。
10
お気に入りに追加
317
あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

おじさんが異世界転移してしまった。
明かりの元
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか?
モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

理不尽な異世界への最弱勇者のチートな抵抗
神尾優
ファンタジー
友人や先輩達と共に異世界に召喚、と言う名の誘拐をされた桂木 博貴(かつらぎ ひろき)は、キャラクターメイキングで失敗し、ステータスオール1の最弱勇者になってしまう。すべてがステータスとスキルに支配された理不尽な異世界で、博貴はキャラクターメイキングで唯一手に入れた用途不明のスキルでチート無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる