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キュルケース家の総意

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 全くの同感である。
 このまま商売人として続けていても、救えるのはせいぜい両手の届く範囲。
 学園という器さえあれば、より多くの子とその未来を救うことができる。
 
「そうですね。すぐにでも資金を用意して、学園という形だけでも整えたいと思ってます。教会を建て直して、勉強を教えられる先生を雇って、それから・・・・・・」

 冨岡がこの先どうしていくか、指折り数えながら話していると、遮るようにダルクが手を挙げた。

「よろしいですかな?」
「え、はい。どうしたんですか?」
「そのことなのですが、トミオカ様がおっしゃっている教会の改修工事にかかる一切を、キュルケース家がお支払いさせて頂けないか、とミルコさんにお話ししていたところです」

 冨岡は「え?」と硬直する。
 どれだけ信頼している、とはいえキュルケース家は貴族社会に組み込まれた存在だ。学園を運営する上で余計なしがらみを発生させるかもしれない。
 
「その、お話はありがたいのですが」

 自由度が減り、誰かに気を遣いながら学園を運営していくよりは、と冨岡が断りの姿勢を見せる。
 すると、ダルクは優しく首を振った。

「はっはっは、何か誤解なさっていますね」
「誤解ですか?」
「キュルケース家に打算などありません。これは正当な支払いです」
「支払い?」
「ええ、旦那様からの依頼を完遂していただいた料金でございます」

 そう言いながらダルクは、ローズの方に一瞬だけ視線を向ける。
 ローズの偏食を解決する。その依頼に対する報酬として、教会改修の料金を支払うというのだ。

「いやいや、金銭感覚どうなっているんですか。当たり前ですけど、とんでもない金額なんですよ。一度依頼を受けた報酬としては、法外にもほどがあります。さすがに受け取れませんよ」

 冨岡は大袈裟に両手を胸の前で振る。
 冗談でも言っているのか、と驚いている冨岡に対し、ダルクは真剣な眼差しを向けた。

「おや、真っ当な金銭感覚ですよ。現に、ミルコさんも驚いていないようです」
「え?」

 冨岡がミルコの表情を確認すると、笑ったり驚いたりすることなく頷いている。

「トミオカさん。依頼の話は聞いてるが、俺も法外な報酬だとは思わねぇぜ?」

 ミルコが言うと、ダルクが言葉を付け足した。

「ローズお嬢様は公爵家の未来そのものです。トミオカ様への依頼はそういう話ですよ。当家の値段・・・・・・そう考えると安すぎるほどではないですか?」

 国にとって重要にも程があるだろう、公爵家。
 そんな公爵家の未来そのものを救ったと言われれば、受け取らないわけにはいかないだろう。
 どう答えればいいのか、と冨岡が言葉を絞り出そうと口を開いた。

「いや、それは・・・・・・」
「キュルケース家の総意として、学園の計画に余計な口を出さない。そういった契約であれば、問題ございませんか?」
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