百億円で異世界に学園作り〜祖父の遺産で勇者・聖女・魔王の子孫たちを育てます〜

澤檸檬

文字の大きさ
上 下
287 / 498

気まずい二人

しおりを挟む
 慌てて入り口まで迎えにいくと、申し訳なさそうな表情を浮かべるブルーノが立っている。

「おはようございます、ブルーノさん」

 冨岡が声をかけると、ブルーノは俯き気味に頷いた。

「あ、ああ」

 昨日対面した時は、酒が入っている状態だったブルーノ。決して酒が悪いというわけではないが、普段通りの性格だったとは言い難い。その状態の記憶を保っているのならば、自分が暴力的に接した相手と素面で会うことに気まずさを感じているのだろう。
 つまり、今のブルーノは昨夜から酒を飲んでいなかった。
 短い間だが約束を守ってくれているのだ、と判断した冨岡は優しく微笑む。

「ブルーノさん、朝ごはんは食べましたか?」
「い、いや」
「そうだと思ってハンバーガーを置いておきました。食べてください」
「あ、いや、でも」
「いい仕事をするためにも、食事は大切です。あ、アレックスにもちゃんと朝食は食べてもらってますから安心してください」

 そう言って、冨岡はブルーノにハンバーガーを手渡した。
 教会の椅子に座るように促し、水も追加で置いておく。冨岡の勢いに押されブルーノが食べ始めると、冨岡は元の世界から持ってきた大工道具を見せた。

「一応、ブルーノさん用に大工道具も用意しているので持っていきましょうか」
「その・・・・・・すまん、じゃなくてありがとうございます」
「今更口調なんてどうでもいいですよ。俺だって失礼なことを言ってしまいましたから、お互い様です。それよりもちゃんと食べてください。職人は体が資本でしょう?」
「あ、ああ」

 ブルーノは涙でも流しているのか、と思うような表情でハンバーガーを食べ終える。
 その様子を見ていた冨岡は椅子から立ち上がった。

「じゃあ行きましょうか。ミルコの工房の場所はアメリアさんに地図を書いてもらったので」

 冨岡が言うと、ブルーノは首を傾げる。

「場所知らなかったのか?」
「まぁ、そんなこともありますよね」
「ある・・・・・・のか? いや、ここまできたら信じるしかない。というか、大工工房の場所ならわかる」
「それは心強い。じゃあ行きましょう」

 冨岡とブルーノ。どこかぎこちなく、会話に不自然さがあるのは仕方ないことだろう。
 互いに牽制し合っていた仲だ。元々友人というわけでもない二人が、ぶつかった後などこんなものである。
 教会を出た二人はブルーノの指示に従い、まっすぐ大工工房が立ち並んでいる区画に向かった。
 特に会話もなく進み、工房区画に入ったところでブルーノが人差し指を立てる。

「あそこだ。確か、あそこがミルコって職人の工房だよ」

 示された工房は二階建ての木造建築。一階は開けた作業場になっており、屋内と呼べる場所は二階にしか存在しない。階段で直接二階に入る構造になっていた。
 
「二階に行けばいいのかな?」

 冨岡が呟いていると、一階の作業場で動く人影が見える。
 それがミルコであるとすぐに気づいた冨岡は、右手を挙げて呼びかけた。

「ミルコー!」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

おじさんが異世界転移してしまった。

明かりの元
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか? モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

文官たちの試練の日

田尾風香
ファンタジー
今日は、国王の決めた"貴族の子息令嬢が何でも言いたいことを本音で言っていい日"である。そして、文官たちにとっては、体力勝負を強いられる試練の日でもある。文官たちが貴族の子息令嬢の話の場に立ち会って、思うこととは。 **基本的に、一話につき一つのエピソードです。最初から最後まで出るのは宰相のみ。全七話です。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...