百億円で異世界に学園作り〜祖父の遺産で勇者・聖女・魔王の子孫たちを育てます〜

澤檸檬

文字の大きさ
上 下
251 / 498

枯れ木のような手足

しおりを挟む
 周囲の住民と変わらず、痩せこけた男の子だ。年齢はフィーネとそう変わらないだろう。
 手足は枯れ木の枝の如く、簡単に折れてしまいそうだった。
 体についた汚れなど気にしていないという雰囲気から、清潔さなど意識できないほど切迫した生活をしているのだろうと推測できる。
 当然ながら、男の子の全身で気にならない箇所はなかったのだが、特に気になるのは右腕にある大きな青痣。不健康なのは言うまでもないが、怪我までしている。
 男の子は屋台を見つけると、気だるそうな体を必死に動かし、近づいてきた。

「今日もハンバーガーくれるの?」

 冨岡を見上げながら男の子が問いかける。
 肺を直接握られたかのような息苦しさを感じながら、冨岡は頷いた。

「あ、ああ、そうだよ。すぐに準備するからちょっと待っててね」
 
 そう答えてから冨岡は屋台を停止させる。
 屋台の中で停止を感じ取ったアメリアは、カウンターから顔を覗かせ冨岡に話しかけた。

「あ、トミオカさん。すみませんが、屋台は端に寄せてもらってもいいですか? その・・・・・・慈善活動とはいえ、不快に感じ怒ってくる人もいるので・・・・・・」

 過去に何度も貧民街で活動を行ってきたアメリアの言葉だ。ここは従っておくべきだろう。
 冨岡は即座に屋台を端に寄せ、カウンターからアメリアに話しかけた。

「通行の邪魔にならなくて、家の出入り口でもない場所に止めました。これでいいですか?」
「はい! 大丈夫だと思います。こちらも移動中にハンバーグを焼いておいたので、すぐに配れますよ」
「ありがとうございます。既に男の子が来ているので、すぐに渡してあげましょう」

 冨岡の言葉を聞いたアメリアは、身を乗り出して男の子の姿を確認した。

「ああ、昨日も来ていた子ですね。覚えててくれたみたいです。私も気になっていたんですよ。怪我をしているみたいだし、家があるはずなのに道に座り込んでいて」

 そこで冨岡はアメリアの話した違和感に気づく。他にも座り込んでいる人がいたため、気にしていなかったが、座り込んでいる子どもはこの子だけだ。
 その前提で見渡してみると、座り込んでいる者たちは仕事を探しているか、家がないため道端に藁を敷いて生活している形跡があった。
 しかし、この子は何もない道端に座り込んで縮こまっていたのである。

「トミオカさん、聞いてますか?」

 思案によって手を止めていた冨岡は、屋台の中からレボルに声をかけられた。

「あ、はい、すみません。何ですか?」
「せっかくなので積んである食材を使い、簡単なスープを作ってもいいでしょうか? と確認したんです。ハンバーガーだけでは足りないかもしれないと思いまして」

 実際に貧民街を目の当たりにしたレボルの提案。
 料理人がやる気になっているのなら止める理由はない。

「もちろんです。ぜひお願いしますよ」

 そういえば酒を飲んでいたはずじゃなかったか、と思いながらも冨岡は了承する。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

おじさんが異世界転移してしまった。

明かりの元
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか? モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...