百億円で異世界に学園作り〜祖父の遺産で勇者・聖女・魔王の子孫たちを育てます〜

澤檸檬

文字の大きさ
上 下
250 / 498

現実は『現実的』

しおりを挟む

対抗戦当日の朝。俺は緊張や不安というよりも対抗戦に出るのが嫌すぎてゲロりそうになっていた。心の底からドタキャンしたい。誰か代役で出て欲しい。俺には無理。この学園の貧弱生物ですよ?? 人間が亜人に勝てないのは常識だと思うんだけど、華薇先生を見てるとそうでも無いかもと思い込んぢゃうのかな…ここの生徒も先生たちも。

「「はぁ・・・帰りたい」」

俺と妹華の叶わぬ願いの言葉が重なる。こういう所は兄妹だなとしみじみ思う。然し、今更とやかく言ってもどうしようもない。ここに来た時点で帰るという選択肢は無くなっている。今あるのは『敗北』と『降参』のどちらかの選択肢のみ。俺的にはすぐさま降参したいところなんだが、タッグマッチともなるとペアが同意しなければ無効になってしまう。最悪な事に俺のペアは陽汰先輩である為、降参の選択肢は元から排除されているに決まっている。結局、俺に残された選択肢は『勝利』と『敗北』のどちらか。正直、怪我する前に安全に敗北したい。まぁ、無理だと思うが。

「さて、そろそろ開会式だ。行こうか」

陽汰先輩が舞台の袖から、俺達に声をかける。どうやら対抗戦の前に出場メンバーの発表がもうそろ始まるらしい。俺達が席を立つとそのタイミングで、舞台から司会者の声が響き始める。

「今日は待ちに待った一年に一度の対抗戦!!今年も生徒会チームと風紀委員会チームが互いの全てをかけて火花を散らす!!では、先ずは生徒会チームの紹介です!!」

それを合図に壁に貼り付けられたモニターに生徒会のメンバーが映し出されていく。

「先鋒! 生徒会会計・青柳シェロぉぉおお!!そして、彼女のパートナーはなんと!妹絶対主義お兄様!青柳ユウぅぅうううう!!」

どうやら先鋒から大将へという順番で舞台に出ていくらしい。

「よし、行くか。シェロ」

「・・・足だけは引っ張らないでくださいね」

ユウ先輩がシェロさんを肩に座らせて舞台へと緊張もなく堂々と出ていく。歓声が湧き、その後も次々とメンバー紹介が行われ、大将の番が来た。

「お待たせしまた!最後は我らが生徒会長!!誰よりも正義感が強く生徒だけでなく教師からも熱い信頼を寄せられし男!!聖桐陽汰ぁぁあ!!」

そう紹介が終えると先程まで以上の歓声が響き渡る。本当に陽汰先輩は大人気らしい。そんな人の後に俺の紹介とか辛すぎる。

「彼のパートナーは、先程紹介した久慈宮妹華さんのお兄さんであり、華薇先生の下僕で有名な二年生!!久慈宮兄太ぁぁあ!!」

・・・・?? 華薇先生の下僕?俺ってそんな風に思われてたのか…。

「みんな、今日は応援よろしく頼むよ」

「・・・・」

陽汰先輩は舞台に出て、司会者からマイクを受け取ったあと、そう声掛けをする。既に生徒達の大半が生徒会チームに寄っていることだろう。

「それでは、次は風紀委員会チームの紹介を始めます!先鋒!! 全男子の心をへし折ってきた氷結女王こと雪柳結七ゆきやなぎゆいなぁぁあ!!」

その紹介と共に現れたのは、俺の中学時代の後輩だ。枝毛ひとつない美しい白髪と凛とした表情は、慈愛園の男子共の心を撃ち抜くには十分だろう。

「そして次はパートナー・・・・」

次々と風紀委員メンバーが紹介されていく中で、副将で魔宙先輩の名前があがった。それに関しては俺以外にも生徒会メンバーや観客も驚いていた。風紀委員長なら大将戦に出ると思っていた。然し、順番を決めるルールに、大将は必ず生徒会長と風紀委員長のみとは記載されていなかった。という事は、アイツが大将戦に出るというわけだ。

「まさかまさかの風紀委員長が副将との事で驚きですが、気になる大将はコイツだぁぁあああ!!風紀委員会の番犬!天風狗兎ぅぅううう!!」

その紹介と共に、天風が姿を現し、舞台に既に立っていた俺に敵意のこもった視線を向けてくる。勿論、目を合わせることはしない。こんなめんどい奴の相手をするほど俺も暇ではない。というか単純に関わりたくないだけだったりする。

「ふんっ。僕の事を無視するとは相変わらず君は舐めているようだね、久慈宮兄太」

司会者からマイクを奪い取り、そう声をかけてくる。まさかマイクを使用しての発言とは、観客から変に注目されてしまうじゃないか。予想通り観客がざわめき始める。

「はははっ!随分と躾のなってない番犬だね。でも、兄太君には役不足だと思うよ、淫魔風紀委員長」

「あら、そちらこそウチの番犬を舐めてると痛い目を見るわよ、ガリ勉君」

バチバチと陽汰先輩と魔宙先輩が火花を散らす。正直、俺を巻き込まないで欲しいし、役不足なのはこっちだと思うんですが。

「ふんっ。大将戦を楽しみにしているんだな、久慈宮兄太」

「・・・帰りたい」

弱音を吐く俺にそう言葉を吐き捨てて、天風がマイクを司会者に返す。

「とても盛り上がっていますが、まずは先鋒戦!! 出場選手以外は舞台裏での待機をお願いします!」

司会者の進行で、舞台には先鋒戦に出場するメンバーだけが残る。

「では先鋒戦!生徒会チームからは青柳兄妹!!そして風紀委員会チームからは雪柳姉妹!! そして気になる最初の種目は--」

巨大なモニターにルーレットが映し出され、数回まわった後に、針がとある部分で止まる。

「第一種目!!互いの嘘を見抜け!その名も【ブラフゲーム】!!」

司会者が種目名をそう声高らかに告げた。

「ブラフゲーム・・・余裕ですね」

「俺たち、青柳兄妹に負けはねえ!」

余裕満々な青柳兄妹と、

「足を引っ張らないでね、八宵やよい

「 そっちこそ足引っ張んなよ、クソ姉貴」

仲の悪そうな雪柳結七と雪柳八宵。

「それでは第一種目【ブラフゲーム】開幕です!!」

司会者の合図により、対抗戦が始まった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

おじさんが異世界転移してしまった。

明かりの元
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか? モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。

勇者PTを追放されたので獣娘たちに乗り換えて楽しく生きる

まったりー
ファンタジー
勇者を支援する為に召喚され、5年の間ユニークスキル【カードダス】で支援して来た主人公は、突然の冤罪を受け勇者PTを追放されてしまいました。 そんな主人公は、ギルドで出会った獣人のPTと仲良くなり、彼女たちの為にスキルを使う事を決め、獣人たちが暮らしやすい場所を作る為に奮闘する物語です。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

処理中です...