百億円で異世界に学園作り〜祖父の遺産で勇者・聖女・魔王の子孫たちを育てます〜

澤檸檬

文字の大きさ
上 下
247 / 498

魔法を使わない魔法みたいなもの

しおりを挟む
 レボルの言葉の意味を理解していない冨岡だったが、本人がやる気になってくれたのならばこれ以上言うことなどない。

「楽しみにしてますね」

 とだけ言って、微笑んだ。
 その後、昼のピークを迎え一気に客が押し寄せる。
 昼食休憩をもらった労働者がこのタイミングで並ぶのだ。
 元々普通に働いていた冨岡からすると、貴重で短い昼休みの時間を行列に並ぶことで浪費させるのは申し訳ない。そこで、各職場への宅配サービスなんかがあればもっと効率的に売れるだろう、なんて考え始めた。
 接客しながら冨岡の思考は、さらに進む。昼の時間だけでなく料理の宅配サービスは、この世界でも重宝されるはずだ。
 多少割高になるが、美食を欲する貴族たちならばいくらでもお金を払うだろう。そうなれば、それ専門の従業員が必要になる。
 
「バイクを持ち込めば、元の世界と遜色のない宅配サービスができるか?」

 ふと思考の狭間でそう呟いた冨岡。
 その言葉を聞いていたレボルが、調理の手を止めずに問いかける。

「タクハイサービス?」
「ああ、なんでもないですよ。こんなのあったらいいのかなぁ、ってアイデアを練ってただけです」
「ほほぉ、どんなアイデアか聞いてもいいですか? せっかくなので、トミオカさんのように突飛なことを考えられる人のアイデアを聞いてみたい」

 そこまで期待されるほど斬新なアイデアではないのだが、わざわざ隠すものでもない。
 冨岡は『宅配サービス』について説明する。
 作った料理を温かい内に家庭や職場に届けること。その分、料金を割増にすること。
 それだけを簡潔に説明すると、レボルは不思議そうに首を傾げた。

「料理を温かい内に届ける・・・・・・そうは言っても簡単じゃないでしょう? この街だってそこそこ広いですから。人の足で届けていたのでは冷めてしまいませんか? 保温の為に魔法使いを雇うのも、資金的にどうかと思いますし」

 バイクのことを言っていなければ、レボルのように考えるのも無理はない。
 慌てて冨岡は情報を付け足す。

「人の足じゃなくて、乗り物を使おうと思ってます」
「乗り物? フォンガをってことですか? 確かにそれならば温かい内に届けられるでしょうけど・・・・・・フォンガは専門の業者を介さなければならないし、現実的ではないかもしれないですね」
「もちろん、フォンガじゃなくて・・・・・・なんて説明すればいいのかな。自動で走るカラクリというか・・・・・・」

 何とか説明しようとする冨岡だが、レボルには伝わらない。

「自動で走るフォンガじゃないもの? 他の魔物とかですか?」
「それでもないですね。めちゃくちゃ簡単に言えば、魔力を使わずに使える魔法みたいなものです。今度実物を持ってきますね。宅配サービスを始めるかはともかくとして、何かに使えるかもしれませんから」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

おじさんが異世界転移してしまった。

明かりの元
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか? モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

文官たちの試練の日

田尾風香
ファンタジー
今日は、国王の決めた"貴族の子息令嬢が何でも言いたいことを本音で言っていい日"である。そして、文官たちにとっては、体力勝負を強いられる試練の日でもある。文官たちが貴族の子息令嬢の話の場に立ち会って、思うこととは。 **基本的に、一話につき一つのエピソードです。最初から最後まで出るのは宰相のみ。全七話です。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...