226 / 498
一応の二乗
しおりを挟む
言いながらレボルは冨岡に握手を求める。
自分の思いを受け止め、熱量を重ねて返してくれるその握手を断るはずもなく、冨岡はレボルの手を強く握った。
「ぜひよろしくお願いします!」
その後、冨岡はギルドの受付でレボルの斡旋手数料を払い、正式に冒険者レボルを雇用。
レボルの話を聞き、護衛を請け負わなくても雇いたいと思っていた冨岡だったが、レボル自身が「護衛も兼ねたい」と言い出してくれた。
彼自身が、大きな夢を抱いている冨岡を守りたい、と思ったらしい。
護衛兼料理人としてレボルが加入。これは冨岡にとって大きい出来事である。
自分よりも遥かに強いレボルがいることで安心して屋台を任せることができるのだ。その分、仕事の幅を広げていける。
二つの仕事を兼ねてくれるというレボルに払う給料は、一ヶ月で金貨五枚。日本円に換算するとおよそ五十万円ほどだ。
元々冒険者としてレボルが月に稼いでいたのは金貨三枚程度。それを考えればレボルとしても文句のつけようがない。むしろレボルは「もう少し低くてもいい」と言っていたのだが、冨岡は「それだけの仕事を期待している」と金貨五枚での雇用を決定した。
レボルの初出勤は翌日の朝から。広場に集合するということで話は決まった。
話を終えた冨岡は慌てて冒険者ギルドをあとにする。
「レボルさんとの話が盛り上がってちょっと遅くなっちゃったな。買い出しも行かないといけないし、晩御飯もまだだし急ぐか」
帰りながら冨岡はそんなことを呟いていた。
毎日ではないとはいえ、買い出しは労力がかかる。一度元の世界に戻って往復三時間以上の距離を運転しなければならない。その上、大きな荷物を乗せた台車を引いて教会まで歩く。
その時間がなければ他のことをできるし、新しい仕事を考えられる。
それについて冨岡は、一つ考えていることがあった。
「一応、聞いてみるか・・・・・・爺ちゃんの知り合いだし、まぁ怪しい人じゃないだろ。いや怪しい人ではあるけど」
教会に戻った冨岡は、出迎えてくれたアメリアとフィーネにレボルを雇った話をしてから「買い出しに行ってくる」と言い、すぐに元の世界に向かった。
先に寝るようにも伝えてあるので遅くなっても問題はない。
路地裏の鏡から元の世界に戻ってきた冨岡は、急いである男に電話をかける。
「もしもし」
冨岡が言うと電話の向こうから、たった今起きましたと言わんばかりの声とテンションで「ん? 誰だ?」と返ってきた。
「あ、冨岡です。源次郎の孫の・・・・・・覚えてますか?」
「ああ、なんだアンタか」
「なんだってなんですか。美作さんが名刺をくれたんじゃないですか」
そう、電話の相手は美作。何でも屋を営んでいる源次郎の知り合いである。
美作はあくびをしてから気怠そうに笑った。
「はは、そうだったな。それで何か用かい?」
「一応確認なんですけど、美作さんって何でも屋ですよね?」
「一応答えるけど、一応な」
人の言葉を勝手に引用しないでくれ、と思いながらも冨岡は話を続ける。
自分の思いを受け止め、熱量を重ねて返してくれるその握手を断るはずもなく、冨岡はレボルの手を強く握った。
「ぜひよろしくお願いします!」
その後、冨岡はギルドの受付でレボルの斡旋手数料を払い、正式に冒険者レボルを雇用。
レボルの話を聞き、護衛を請け負わなくても雇いたいと思っていた冨岡だったが、レボル自身が「護衛も兼ねたい」と言い出してくれた。
彼自身が、大きな夢を抱いている冨岡を守りたい、と思ったらしい。
護衛兼料理人としてレボルが加入。これは冨岡にとって大きい出来事である。
自分よりも遥かに強いレボルがいることで安心して屋台を任せることができるのだ。その分、仕事の幅を広げていける。
二つの仕事を兼ねてくれるというレボルに払う給料は、一ヶ月で金貨五枚。日本円に換算するとおよそ五十万円ほどだ。
元々冒険者としてレボルが月に稼いでいたのは金貨三枚程度。それを考えればレボルとしても文句のつけようがない。むしろレボルは「もう少し低くてもいい」と言っていたのだが、冨岡は「それだけの仕事を期待している」と金貨五枚での雇用を決定した。
レボルの初出勤は翌日の朝から。広場に集合するということで話は決まった。
話を終えた冨岡は慌てて冒険者ギルドをあとにする。
「レボルさんとの話が盛り上がってちょっと遅くなっちゃったな。買い出しも行かないといけないし、晩御飯もまだだし急ぐか」
帰りながら冨岡はそんなことを呟いていた。
毎日ではないとはいえ、買い出しは労力がかかる。一度元の世界に戻って往復三時間以上の距離を運転しなければならない。その上、大きな荷物を乗せた台車を引いて教会まで歩く。
その時間がなければ他のことをできるし、新しい仕事を考えられる。
それについて冨岡は、一つ考えていることがあった。
「一応、聞いてみるか・・・・・・爺ちゃんの知り合いだし、まぁ怪しい人じゃないだろ。いや怪しい人ではあるけど」
教会に戻った冨岡は、出迎えてくれたアメリアとフィーネにレボルを雇った話をしてから「買い出しに行ってくる」と言い、すぐに元の世界に向かった。
先に寝るようにも伝えてあるので遅くなっても問題はない。
路地裏の鏡から元の世界に戻ってきた冨岡は、急いである男に電話をかける。
「もしもし」
冨岡が言うと電話の向こうから、たった今起きましたと言わんばかりの声とテンションで「ん? 誰だ?」と返ってきた。
「あ、冨岡です。源次郎の孫の・・・・・・覚えてますか?」
「ああ、なんだアンタか」
「なんだってなんですか。美作さんが名刺をくれたんじゃないですか」
そう、電話の相手は美作。何でも屋を営んでいる源次郎の知り合いである。
美作はあくびをしてから気怠そうに笑った。
「はは、そうだったな。それで何か用かい?」
「一応確認なんですけど、美作さんって何でも屋ですよね?」
「一応答えるけど、一応な」
人の言葉を勝手に引用しないでくれ、と思いながらも冨岡は話を続ける。
0
お気に入りに追加
317
あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。

おじさんが異世界転移してしまった。
明かりの元
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか?
モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる