百億円で異世界に学園作り〜祖父の遺産で勇者・聖女・魔王の子孫たちを育てます〜

澤檸檬

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難しいと不可能

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 冨岡の言葉を聞いたレボルは不思議そうに首を傾げる。

「誰もが誰もに優しい世界? 子どもが飢えないことと優しい世界と商売を広げることに繋がりが見えませんね」

 それはそうだ。冨岡の計画について知らなければそう思うのも無理はない。
 冨岡は酒を一口飲んでから話を続ける。

「人が人に優しくする為には様々な余裕が必要じゃないですか。金銭的に追い詰められている人、愛情に飢えた人が見返りなく他人に優しくするのは難しい。もちろん、そうできる人もいますよ。けれど、ほとんどの人が自分のことで精一杯になります」
「生きていく為には仕方のないことでしょう、悲しいけれどそれが現実です」
「だから俺は現実を変えたい。そのための金です。俺は商売で稼いだ金を元手に、学園を作ります。その学園では親を失った子、親がいても食べていけない子が食事と教養を得られるようにしたいんです」
「食事はわかりますが、教養ですか?」

 生きていく為には食べなければならない。そんなことは誰にでもわかる。
 しかし、生きていくために教養が必要なのだという冨岡の言葉をレボルは、理解しきれずに首を傾げた。
 義務教育など存在しないこの世界で、義務教育など受けていないレボルが理解できないのは当たり前なのかもしれない。

「食事があればその日を生きていくことができます。けど、その子の一生を面倒見るなんてできないじゃないですか。そうすれば、俺がいなくなった途端に飢えるでしょう。そうならないように、食っていけるだけの教養を得てほしいんです。教養があれば、リスクのある仕事をしなくてもいい。教養があれば、ある程度仕事を選ぶことができる。そして何より、優しさを受けて育った子は他人に優しくできるかもしれない。それによってこの世界はもっと他人に優しい世界に変わる。まぁ、希望的観測でしかないですけど」

 冨岡がそう言うとレボルは一瞬驚いてから笑い始めた。
 まるで自分の中の毒気を全て吐き出すような笑いである。

「はっはっはっは、いやすまない。馬鹿にしているわけじゃないんだ。けど、なんだか笑いたい気分になってしまったんです。はっはっは」
「自分でも大きなことを言っているのはわかってますよ」
「ははっ、そうですね。確かに難しいでしょう。ただ『難しい』は『不可能』に近くて全く違うものです。実現可能だからこそ『難しい』なんて言葉が出るんでしょう。私はトミオカさんの夢を『不可能』だと思っていないってことなんでしょうね」
「レボルさん」
「そんな話を聞いてしまっては断れないじゃないですか。私もその『難しい』に参加させてください。こんな私でよければ、雇っていただけますか?」
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