218 / 498
冒険者ギルド
しおりを挟む
広場でそんな約束を交わしたところで、屋台を置くために一度教会には戻る冨岡。
教会の前でもアメリアたちに数時間の別れを惜しまれたのは言うまでもない。
それは冨岡にとって、心の奥がこそばゆくも温かくなる瞬間だった。
アメリアの手描き地図に従い、冨岡は冒険者ギルドに向かう。
異世界というものに慣れてはきたものの、やはり冒険者ギルドと聞けば高揚するものだ。
これぞファンタジー。これぞ異世界。
「この角を曲がってすぐの大きな建物」
冨岡は地図を確認しながらアメリアの説明を思い出し、目の前を確認した。
すると木造の大きな建物が、独特の存在感を放っている。
「これ・・・・・・だよな」
入り口は大きめの扉になっており、その上には看板が掲げてあった。冨岡には読めない文字とおそらく水晶と剣を模した絵。
中からはガヤガヤと人の声が聞こえてくる。
周囲を確認しながら冨岡が扉を開けると、大勢の人が集まっている時特有の熱気が中から溢れてきた。
ざっと見渡し冨岡は中の構造を把握する。
右手一番奥には二階に上がる階段。そこから左に向けて長いカウンターと、数人の受付嬢。その奥にはいくつかの扉があった。カウンターより手前には、まるで酒場のように机が点在し、これぞ冒険者といったような風貌の者たちがそれぞれの机で酒を楽しんでいる。
ガヤガヤと聞こえてきた声は酒を飲む冒険者たちのものだろう。
「酒場も兼ねているのか?」
そんなことを呟きながら扉を閉める冨岡。屋台とはいえ飲食店を持っている冨岡としては、冒険者ギルドの中で酒を提供しているのが冒険者ギルド側なのか、それとも一般の店がこの中で許可を得て営業しているのか気になった。もしも一般の店ならば何か酒のつまみを売れるかもしれない。
「一応あとで確認してみるかな」
そのまま冨岡は冒険者たちの間を抜け、カウンターに向かう。
商店などとは違い、いらっしゃいませと出迎えられるわけもない。誰も冨岡が入ってきたことなど気にしてはいなかった。
「あの、すみません」
冨岡が一人の受付嬢に話しかける。
彼女は手元の書類を整理していたらしく、手を止めて冨岡に視線を向けた。
赤毛の凛とした女性である。
「はい、なんでしょう」
彼女はそう答えてから冨岡の容姿を確認し、どうみても冒険者ではないと判断。
「えっと、何かご依頼でしょうか?」
依頼を受ける側ではなく、する側だと考え冨岡に問いかけた。
話が早くて助かる、と冨岡は話を進める。
「あ、はい。こんな依頼をしていいのかわからないのですが、ある程度料理ができる護衛を雇いたいんです」
「護衛のご依頼ですね。条件として料理ができること・・・・・・これは珍しいですね。どこかの国へ移動されるまでの、ということでしょうか?」
教会の前でもアメリアたちに数時間の別れを惜しまれたのは言うまでもない。
それは冨岡にとって、心の奥がこそばゆくも温かくなる瞬間だった。
アメリアの手描き地図に従い、冨岡は冒険者ギルドに向かう。
異世界というものに慣れてはきたものの、やはり冒険者ギルドと聞けば高揚するものだ。
これぞファンタジー。これぞ異世界。
「この角を曲がってすぐの大きな建物」
冨岡は地図を確認しながらアメリアの説明を思い出し、目の前を確認した。
すると木造の大きな建物が、独特の存在感を放っている。
「これ・・・・・・だよな」
入り口は大きめの扉になっており、その上には看板が掲げてあった。冨岡には読めない文字とおそらく水晶と剣を模した絵。
中からはガヤガヤと人の声が聞こえてくる。
周囲を確認しながら冨岡が扉を開けると、大勢の人が集まっている時特有の熱気が中から溢れてきた。
ざっと見渡し冨岡は中の構造を把握する。
右手一番奥には二階に上がる階段。そこから左に向けて長いカウンターと、数人の受付嬢。その奥にはいくつかの扉があった。カウンターより手前には、まるで酒場のように机が点在し、これぞ冒険者といったような風貌の者たちがそれぞれの机で酒を楽しんでいる。
ガヤガヤと聞こえてきた声は酒を飲む冒険者たちのものだろう。
「酒場も兼ねているのか?」
そんなことを呟きながら扉を閉める冨岡。屋台とはいえ飲食店を持っている冨岡としては、冒険者ギルドの中で酒を提供しているのが冒険者ギルド側なのか、それとも一般の店がこの中で許可を得て営業しているのか気になった。もしも一般の店ならば何か酒のつまみを売れるかもしれない。
「一応あとで確認してみるかな」
そのまま冨岡は冒険者たちの間を抜け、カウンターに向かう。
商店などとは違い、いらっしゃいませと出迎えられるわけもない。誰も冨岡が入ってきたことなど気にしてはいなかった。
「あの、すみません」
冨岡が一人の受付嬢に話しかける。
彼女は手元の書類を整理していたらしく、手を止めて冨岡に視線を向けた。
赤毛の凛とした女性である。
「はい、なんでしょう」
彼女はそう答えてから冨岡の容姿を確認し、どうみても冒険者ではないと判断。
「えっと、何かご依頼でしょうか?」
依頼を受ける側ではなく、する側だと考え冨岡に問いかけた。
話が早くて助かる、と冨岡は話を進める。
「あ、はい。こんな依頼をしていいのかわからないのですが、ある程度料理ができる護衛を雇いたいんです」
「護衛のご依頼ですね。条件として料理ができること・・・・・・これは珍しいですね。どこかの国へ移動されるまでの、ということでしょうか?」
0
お気に入りに追加
317
あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

おじさんが異世界転移してしまった。
明かりの元
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか?
モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる