百億円で異世界に学園作り〜祖父の遺産で勇者・聖女・魔王の子孫たちを育てます〜

澤檸檬

文字の大きさ
上 下
213 / 498

二つの契約

しおりを挟む
 キュルケース家は名前を貸すだけ。それ以外は何もない。
 もしもミルコがキュルケース家の名前を傷つけるようなことがあれば、冨岡が責任を取る。
 冨岡自身がするべきは、ミルコの行動に責任を持つことだ。
 他人を救うという行動には責任が生じるのだと、冨岡は改めて感じる。
 自分で責任を持てないのであれば、そもそもミルコを救うべきではない。他人に頼るべきではない。

「そりゃそうですよね。ってことだけど、ミルコはそれでいい?」

 公爵家の名前を借りる重みを冨岡よりも理解しているミルコは、あまりにもあっさりした問いかけに驚きを隠なかった。

「え? お、俺に聞くのか? アンタ次第というか、俺に決定権はないだろう」

 そんな戸惑うミルコにダルクが微笑みかける。

「トミオカ様は『覚悟はあるのか』とミルコさんに問いかけているのですよ。何かあれば貴方を救おうとしたトミオカ様に迷惑がかかる。その重みに耐えながら、生きていくことはできますか? 一度全てを失い、復帰の機会を得たのです。貴方に二度目はありません」

 言ってしまえば、ミルコにとって冨岡は恩人だ。ここから先、失敗すれば自分や家族だけではなく恩人をも巻き添えに沈んでいく。

「・・・・・・そうだな。すまない・・・・・・俺は無意識に大きな決断と覚悟を避けていた。罪人として裁かれるべき俺に、ここまで手を差し伸ばしてくれた男に迷惑はかけない。トミオカ・・・・・・いや、トミオカさん。これからアンタをオーナーと呼ばせてくれ」
「ははっ、トミオカでいいですよ。それじゃあ、これから先はくれぐれも平和にお願いしますよ」
「ああ、約束する。もう二度と悪事に手を染めない。二度と家族を悲しませるようなことはしない」

 こうして冨岡とミルコは約束の握手を交わした。
 二人の話がまとまったところで、タイミングを見計らっていたダルクが言葉を挟む。

「それでは細かな契約などは明日にでも、キュルケース邸にて。旦那様へは私が話を通しておきます。トミオカ様も同席していただきたいのですが、ご予定はいかがでしょうか?」
「えーっと、今から従業員を雇おうとしてて、明日はまだ見ぬ新人さんに仕事を教えなければと思っていたんですよね。ミルコだけでどうにかならないですか?」
「工房の契約ですので、キュルケース家側はミルコさんだけでも問題ありませんよ。そうなれば、また違う機会にお二人で工房の経営権譲渡の契約をお願いします」

 本来ならば、工房の経営者を冨岡に変えてからキュルケース家との契約を行うつもりだったダルク。冨岡の都合を聞き、急遽キュルケース家との契約を先にすることにした。
 そこに大きな違いはない。どちらが先か、というだけの話である。
 冨岡が「わかりました」と答えると、ダルクは話を先に進めた。

「それでは工房の経営権がトミオカ様に渡り次第、仕事を割り振るという形でよろしいですか?」

 その問いかけに対し、予想外にもダルクは首を横に振った。
 
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

おじさんが異世界転移してしまった。

明かりの元
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか? モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...