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冨岡は大工を得た
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「アンタはお人好しだな。どれだけ取り繕っても、俺は金に屈した。権力に屈したんだ。アンタにとって悪であることには変わりない」
「俺にとっての悪は俺が決めるよ。少なくとも、今はミルコ、アンタを悪だなんて思ってない」
冨岡はそう言ってからミルコに手を差し出し、言葉を続けた。
「その上で、俺はミルコにとって悪かな?」
ミルコはその手の意味を即座に察する。
このまま行き先を冨岡に任せるのか。それとも今回だけで手を切るのか。その選択を今、迫られている。
だが考える余地などない。
既にミルコは、冨岡がゴルザードに依頼した内容を推測できていた。自分のことを助けようと動いてくれているのだろう。そこにキュルケース公爵家という、強大すぎる後ろ盾が存在することもわかっている。
それによって、今の状況が救われるとしても、全ては冨岡ありきだ。
この手を握り返さない選択肢などありえない。
ミルコはゆっくりと冨岡の手を握る。
「悪でも何でもいい。俺は家族を守る為なら、何にだって染まるさ。アンタが一番知ってるだろ? 今回のことでな」
「まだその話を笑いにするのは早いって、流石に笑えないよ。けどまぁ、ミルコが家族の為なら何でもすることは知ってる。俺より知ってるのはそこのカウンターじゃないかな」
言いながら冨岡は言葉に反して微笑んだ。
ミルコは気まずそうにカウンターに視線を送る。そして彼は自分が叩いたカウンターが壊れていないことに安堵した。
こうしてミルコという協力者を得た冨岡は、そこである案を思いつく。
「そうだ、ちょっと聞きたいことがあって」
「ん?」
「えっと『白の創世』って知ってますか?」
「ああ、そりゃ知ってるよ。むしろ知らねぇ奴の方が少ないんじゃねぇか。この街にも長らく存在してたが、どっかの国で悪事をやらかして組織ごと瓦解した宗教団体だろう」
ミルコの知識を確認した上で、冨岡は話を続けた。
「じゃあ、まだその教会がこの街に存在していることは知ってます?」
「ああ、街の外れにあるな。ほとんど廃屋になってる場所だろ。そこまで詳しいわけじゃないが、見たことはあるよ」
「良かった。じゃあ、話は早いな。俺の目から見てもあの教会はボロボロなんですけど、補修って出来そうですか?」
職を失ったとはいえ、プロの大工であったミルコの視点を確認する冨岡。
するとミルコは、職人の表情を浮かべてから口を開く。
「中々厳しいんじゃないかな」
「いくらぐらいかかりそうです?」
「いや、金の問題じゃねぇよ。あのレベルになると補修ではどうにもならんさ。そりゃ、外見を取り繕うことはできるが、住み続けるって話になると別だ。一度土台から作り直す必要がある」
「建て替えってことですか?」
「そうなると思うぜ。少なくとも今子どもが住み始めたとしたら、大人になる頃には家無しになってる」
十年は保たないということだろう。
「俺にとっての悪は俺が決めるよ。少なくとも、今はミルコ、アンタを悪だなんて思ってない」
冨岡はそう言ってからミルコに手を差し出し、言葉を続けた。
「その上で、俺はミルコにとって悪かな?」
ミルコはその手の意味を即座に察する。
このまま行き先を冨岡に任せるのか。それとも今回だけで手を切るのか。その選択を今、迫られている。
だが考える余地などない。
既にミルコは、冨岡がゴルザードに依頼した内容を推測できていた。自分のことを助けようと動いてくれているのだろう。そこにキュルケース公爵家という、強大すぎる後ろ盾が存在することもわかっている。
それによって、今の状況が救われるとしても、全ては冨岡ありきだ。
この手を握り返さない選択肢などありえない。
ミルコはゆっくりと冨岡の手を握る。
「悪でも何でもいい。俺は家族を守る為なら、何にだって染まるさ。アンタが一番知ってるだろ? 今回のことでな」
「まだその話を笑いにするのは早いって、流石に笑えないよ。けどまぁ、ミルコが家族の為なら何でもすることは知ってる。俺より知ってるのはそこのカウンターじゃないかな」
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「じゃあ、まだその教会がこの街に存在していることは知ってます?」
「ああ、街の外れにあるな。ほとんど廃屋になってる場所だろ。そこまで詳しいわけじゃないが、見たことはあるよ」
「良かった。じゃあ、話は早いな。俺の目から見てもあの教会はボロボロなんですけど、補修って出来そうですか?」
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「いくらぐらいかかりそうです?」
「いや、金の問題じゃねぇよ。あのレベルになると補修ではどうにもならんさ。そりゃ、外見を取り繕うことはできるが、住み続けるって話になると別だ。一度土台から作り直す必要がある」
「建て替えってことですか?」
「そうなると思うぜ。少なくとも今子どもが住み始めたとしたら、大人になる頃には家無しになってる」
十年は保たないということだろう。
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