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借りと繋がり
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美作にそう頼まれた冨岡は二つの感情に挟み込まれた。
一つ目は美作と関わり合いたくない、という感情。彼の話を聞き、先ほどまで抱いていた恐怖はある程度薄れたが、全てを信用したわけではない。
結局、怪しくて胡散臭いことに変わりはなかった。
もう一つの感情は、早くこの話を終わらせて買い物に行きたい、というものである。
ただでさえ寝る時間を圧迫しているというのに、これ以上話を長引かせると睡眠時間が消え去ってしまう。
「家の周りですか・・・・・・」
冨岡はどうしようか、と思案しながら呟いた。
「ああ、もちろん家の中までは入らない。ただ土を取らせてもらえればいいんだ。頼むよ」
再び美作に懇願された面倒になり、ため息をつく。
おそらく、きっぱり断っても美作は食い下がってくるだろう。それならば、と冨岡は首を縦に振った。
「わかりました。家の周りを掘ってもいいですよ」
「本当か?」
「ええ。でも、さっきも言いましたけど、俺は今から買い出しに行くんですよ。案内はできませんが、この道を進んだところに一軒だけ家があるので、勝手に掘ってください」
そう言われた美作は、少年のように無垢な笑みを浮かべる。
「全然いいさ。ありがとう、助かるよ!」
その笑顔によって冨岡はようやく気づいたのだが、髪や髭が手入れされていないだけで、美作顔はやけに整っていた。
芸能人だと言われても驚かないくらいである。
だが、そんなことはどうでもいい。今の冨岡には時間がないのだ。
「じゃあ、俺はこれで」
冨岡が車を走らせようと前を向くと、美作が再び窓を叩いた。
「何ですか、まだ何か用が?」
「これを持っててくれ」
美作は言いながら名刺を見せる。先ほど見せてもらったものと同じだ。
それを欲しいとは思わなかったが、ここで断ればまた話が長引く。仕方なく冨岡は窓を開けた。
「特に仕事を頼むことはないと思いますが、一応」
「アンタには借りができたからな。仕事じゃなくて相談でも何でも聞くよ。商売人ってのは一度できた繋がりを大切にしなきゃなんねぇんだ。これは俺の恩人の言葉さ。困ったことがあったら言ってきな」
「あ、はい。ありがとうございます」
意外にも美作はいい人なのかもしれない、と思いながら礼を言い、冨岡は頭を下げる。
「じゃあ、俺行きますね」
「ああ、止めてすまなかったな」
そう言いながら美作が車から離れたのを確認し、冨岡はアクセルをゆっくりと踏んだ。
自分から離れていく車を眺めながら美作はポケットを探る。
くしゃくしゃに潰れた箱からタバコを取り出すと咥えて火をつけた。
「ふぅ、アンタの孫は思ってたより元気そうだったぜ、源次郎さん。受けた恩は孫に返せばいいんだよな?」
煙と言葉を同時に吐き出しながら美作は星空を見上げる。
一つ目は美作と関わり合いたくない、という感情。彼の話を聞き、先ほどまで抱いていた恐怖はある程度薄れたが、全てを信用したわけではない。
結局、怪しくて胡散臭いことに変わりはなかった。
もう一つの感情は、早くこの話を終わらせて買い物に行きたい、というものである。
ただでさえ寝る時間を圧迫しているというのに、これ以上話を長引かせると睡眠時間が消え去ってしまう。
「家の周りですか・・・・・・」
冨岡はどうしようか、と思案しながら呟いた。
「ああ、もちろん家の中までは入らない。ただ土を取らせてもらえればいいんだ。頼むよ」
再び美作に懇願された面倒になり、ため息をつく。
おそらく、きっぱり断っても美作は食い下がってくるだろう。それならば、と冨岡は首を縦に振った。
「わかりました。家の周りを掘ってもいいですよ」
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「全然いいさ。ありがとう、助かるよ!」
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だが、そんなことはどうでもいい。今の冨岡には時間がないのだ。
「じゃあ、俺はこれで」
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「これを持っててくれ」
美作は言いながら名刺を見せる。先ほど見せてもらったものと同じだ。
それを欲しいとは思わなかったが、ここで断ればまた話が長引く。仕方なく冨岡は窓を開けた。
「特に仕事を頼むことはないと思いますが、一応」
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「あ、はい。ありがとうございます」
意外にも美作はいい人なのかもしれない、と思いながら礼を言い、冨岡は頭を下げる。
「じゃあ、俺行きますね」
「ああ、止めてすまなかったな」
そう言いながら美作が車から離れたのを確認し、冨岡はアクセルをゆっくりと踏んだ。
自分から離れていく車を眺めながら美作はポケットを探る。
くしゃくしゃに潰れた箱からタバコを取り出すと咥えて火をつけた。
「ふぅ、アンタの孫は思ってたより元気そうだったぜ、源次郎さん。受けた恩は孫に返せばいいんだよな?」
煙と言葉を同時に吐き出しながら美作は星空を見上げる。
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