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モヤモヤ

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 アメリアに問いかけらた冨岡は腹を抱えるようにして答えた。

「流石はキュルケース家の従者だな、と思っただけです。アメリアさんの性格もしっかりと加味して、最適な判断してくれていますね」

 キュルケース家の心遣いと有能さを実感する冨岡。選択肢が多いわけではないが、やはり手を組むのならばキュルケース家以外にないだろう。公爵という地位だけはない魅力がそこにはある。
 貴族に対して良い感情を持っていないアメリアも、少しだけ心を許したような表情を浮かべていた。

「貴族様が私のために、私の話を聞きながら心遣いを・・・・・・ありがたい話ですね」

 結果としてアメリアやフィーネが無事であったこと。実は隠れて護衛を続けてくれていたこと。それをわざわざ明かさなかったこと。
 そんな心遣いに感動しながら、冨岡はふと話を振り返る。

「そういえばよく気づいたね、フィーネちゃん」
「ん?」
「護衛の二人の存在に、だよ。そりゃ、屋台の方が見えるようにしていたとしても、隠れてはいたんでしょ? 話を聞く限り、アメリアさんやフィーネちゃんに気づかれないようにしていたはず。どうやって見つけたの?」

 問いかけながら、冨岡は晩御飯の用意に戻った。話はあくまでも作業をしながら、である。
 フィーネの方も冨岡が用意した計算問題に向き合いながら答える。

「うーんとね、昨日からなんかモヤモヤが見えるようになって」
「モヤモヤ?」
「うん。人それぞれモヤモヤがあって、見えなくても見えるの」

 何を言っているのか、全くわからない。冨岡は玉ねぎを切りながら首を傾げた。

「見えなくても見える? 謎解き?」

 すると、話を聞いていたアメリアが鼻の奥で小さく笑いながら会話に入る。

「ふふっ、どうやらフィーネが入っているのは魔力を感じる、という話のようです」
「魔力・・・・・・ですか」
「ええ、人がそれぞれ持っている魔力を感じ取れるようなんです。あ、トミオカさんの疑問もわかりますよ。ある程度、魔法に慣れた人であれば感じ取れるって話ですよね」

 いや、わからない。慣れた人ならわかるものなの? それじゃあかくれんぼ出来ないじゃん。
 あまりにも異世界あるあるすぎる話に、冨岡の知能は小学生の頃に戻っていた。
 それでも言葉を返さなくては、と頷く。

「あ、ああ、そうですよね」

 そうなのか? それが普通なら何でこの話をしているの?
 心の中で自分にツッコミを入れる。
 何もわかっていない冨岡を理解したかのように、アメリアは補足を続けた。

「それでも、それができるのは魔法の訓練を積んだ冒険者や傭兵くらいです。大人でも出来ない人も多い中、フィーネにそれが出来るなんて驚きですよね」
「そ、そうですよね。そうです、そうです。そこに驚いたんですよ」
「ふふっ、私も昨夜驚きました。実は昨夜、フィーネから『モヤモヤが見えて落ち着かない』と相談されていて、魔力のことだと理解し驚いていたところだったんです」
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