百億円で異世界に学園作り〜祖父の遺産で勇者・聖女・魔王の子孫たちを育てます〜

澤檸檬

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影三つ

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 発車したフォンガ車を見送りながらフィーネが「帰っちゃったの?」と冨岡を見上げる。

「気を遣ってくれたみたいだね」

 そう答えてから、冨岡はフィーネの手を握った。小さいながらにしっかりと働いてくれたフィーネを労うように優しく包み込むと、強く握り返してくる。

「へへっ」

 嬉しそうに微笑むフィーネの顔が、消えかけの淡い夕日に照らされて輝いた。
 
「トミオカさん、お帰りなさい」

 駆け寄ってきたアメリアは夕日と同じ色の頬を緩ませて言う。

「あの・・・・・・」

 今後のために貴族との繋がりが必要だったとはいえ、二人に慣れない屋台を任せてしまったのだ。申し訳なさを感じ、思わず謝罪しようとした冨岡。
 だが、握っているフィーネの手は、そんなものを求めていないのだと何故か確信が持てた。
 伝わってくるのは、自分を家族だと思ってくれている安心感。必要としてくれたことへの喜び。
 おそらくアメリアもフィーネと同じ気持ちだろう。
 そんな相手に謝罪するのは、果たして最適と言えるだろうか。いや、違う。必要なのは謝罪ではない。
 冨岡は優しく微笑み、アメリアにこう伝える。

「今日はありがとうございました。おかげで未来に希望を繋げられたと思います」

 するとアメリアは嬉しそうに目を細めて笑みを浮かべた。

「ふふっ、それなら良かったです。貴族様のお屋敷はどうでしたか・・・・・・っと、そんな話は帰ってから、ですね」

 屋台の片付けが先だろう、とアメリアが話を引き上げると続いてフィーネが冨岡に話しかける。

「フィーネも頑張ったの」
「そうだよね、フィーネちゃんもありがとう。よし、今日の晩御飯は豪華にしようか」

 労いの気持ちを込めて冨岡が言うと、フィーネその場で跳ねる。

「わーい! フィーネは美味しいものが食べたいの。あと、甘いもの」
「ははっ、美味しいものか。材料を見ながら考えようね。それと、チョコレートはナシだよ」

 その後、冨岡も片付けに協力し手早く屋台を撤収した。
 もちろん話を続けたい気持ちはあったが、話の途中で引き上げてくれたアメリアのことを考え、続きは帰ってからにしようと考えたのである。
 屋台や周辺の掃除を終えると冨岡が屋台を動かし始めた。
 だが、これまでとは違いアメリアとフィーネも屋台の外にいる。

「あれ、乗らないんですか?」

 そう冨岡がアメリアに問いかけると、彼女は優しく頷いた。

「はい、今日は一緒に歩きたい気分なんです」
「フィーネも!」

 すっかり暗くなった帰り道に、月の輝きが三人と屋台の影を映す。
 
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