百億円で異世界に学園作り〜祖父の遺産で勇者・聖女・魔王の子孫たちを育てます〜

澤檸檬

文字の大きさ
上 下
154 / 498

見抜きましたぞ

しおりを挟む
「それじゃあ、俺はこれで」

 冨岡が立ち去ろうと背を向けたところで、ローズが身を乗り出す。

「トミー!」
「ん? どうかしましたか、ローズおじょ・・・・・・じゃなくて、ローズ」
「また来るわよね? お父様からの依頼を達成したからって、もう来ないなんてことないわよね?」

 彼女の話し方自体はこれまで通りどこか上からのように感じられた。しかし、言葉からは不安が滲んでおり、両親との間にあった壁を乗り越えたとしても冨岡の存在を必要としているのがわかる。
 そんな彼女の心情をおぼろげながらに理解している冨岡は優しく微笑んで答えた。

「もちろんですよ。ホース公爵様に用があるのもですが、ローズがしっかり食べているのか確認しにきますよ。あ、そうだ。ローズの部屋にリバーシを置いたままなのでダルクさんと練習して俺を負かしてくださいよ」

 冨岡の言葉を聞いたローズは安心したように息を漏らす。

「そう、それなら今日のところは帰ることを認めるわ。早く来ないと知らないわよ、私がどれだけ優秀か思い知ることになるわ」
「ははっ、楽しみにしていますよ」

 最後にそう言い残し、冨岡は公爵家をあとにした。
 移動販売『ピース』が屋台を出している広場への帰り道、車の中でダルクは嬉々として冨岡に話しかける。

「いやぁ、流石でしたな。まさかローズお嬢様の心をあれほど掴まれるとは」
「何度も言いますけど、俺は俺のしたいようにしただけですよ。状況は違いますけど、ローズの気持ちは何となくわかりましたから」
「ほう、トミオカ様にもそのような経験が?」
「ええ。というか、子どもの頃は誰も寂しいと思った経験があるはずですよ。大人になるにつれて忘れていくものかもしれませんが・・・・・・俺より先にローズと相対した講師たちが気付けなかったのはローズを『公爵令嬢』として扱っていたからでしょう。一人の女の子として接すれば、気づくはずです。あれ、そう考えると俺が無礼だから気づけたみたいですね」

 異世界人である冨岡にとって貴族という存在はかなり遠いもの。どれだけ偉いのかも、どのように接するべきなのかもわからない。だからこそ、敬語を使いながらもある程度自然体でいられた。
 その自然な接し方がローズの心に響いたのだろう。
 
「無礼なんてことはありませんでしたぞ。確かに、貴族様相手という気負いは感じられませんでしたが。ほうほう、なるほど。このダルク見抜きましたぞ。トミオカ様は貴族制のない国から渡って来られましたな?」

 本当、この人はすぐに『見抜いた』って言うな。
 そんなことを思いながら冨岡は「そんなところです」と返す。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

おじさんが異世界転移してしまった。

明かりの元
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか? モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

処理中です...