142 / 498
想いのケチャップ
しおりを挟む
いや、まだ完成ではない。
オムライスを三つ作り終えたところで、冨岡はローズにケチャップの容器を手渡した。
「あとはお嬢様の手で完成させてください」
冨岡がそう言うとローズは首を傾げる。
「先ほどもこれを入れてたわよね? まだ使うの?」
「ええ、そうです。オムライスはケチャップをふんだんに使うものなんですよ。ケチャップじゃなくてデミグラスソースやホワイトソースの場合もありますけどね。ケチャップでオムライスを彩って完成です」
「彩る?」
「俺の国では・・・・・・そうですね、ハートを描いたり文字を書いたりすることが多いですよ」
冨岡の説明を聞いた上でローズは意味が分からず再び首を傾げた。
「ハート?」
「あなたのことが好きですって意味のマーク・・・・・・えっと、紋章のようなものですね」
ようやく『ハート』の意味を理解したローズは恥ずかしそうに言い返す。
「す、好きな殿方なんていないわよ!」
「ははっ、好きにもいくつか種類があって俺の国では『ラブ』と『ライク』なんて言い方をします。異性としてではなく友人としての好きとか、家族としての好きとか色々・・・・・・ローズお嬢様の好きは一つではないでしょう? それにハートじゃなくて言葉でもいいんですよ。例えば、いつもありがとうとか・・・・・・面と向かっては言えないことを伝えられるのもオムライスの良さですね」
「面と向かって言えないこと・・・・・・」
そこで言葉が詰まるローズ。
その背後にいたダルクがオムライスの数について冨岡に問いかけた。
「そういえばトミオカ様。これはローズお嬢様の夕食ではなかったのですか? 一人分にしては多いでしょう」
「ふっふっふ、美味しいものは人と人を繋ぐんです。俺はこのオムライスでホース公爵様の悩みを解決しますよ。それと同時にローズお嬢様の悩みもね」
「ローズお嬢様の?」
理解できずに聞き返すダルクを尻目に、冨岡はローズの前でしゃがんで目線を合わせる。
「ローズお嬢様、このオムライスはお嬢様が初めて作った料理です。せっかくですからホース公爵様と公爵夫人様にも召し上がっていただきましょう」
「お父様とお母さまに?」
「そうです。お二人に普段言えない思いを書いてみてはいかがですか? もし思いが伝わらなくても、料理のソースでした、で誤魔化すこともできます。いえ、ローズ様を愛しておられる公爵様に伝わらないことなんてありえません。俺が保証しますよ」
冨岡の言葉を聞いたローズは反射的に言い返した。
「あなたの保証なんて・・・・・・」
言いかけたものの途中で言葉を止める。
「俺の保証なんて、意味ないですか?」
オムライスを三つ作り終えたところで、冨岡はローズにケチャップの容器を手渡した。
「あとはお嬢様の手で完成させてください」
冨岡がそう言うとローズは首を傾げる。
「先ほどもこれを入れてたわよね? まだ使うの?」
「ええ、そうです。オムライスはケチャップをふんだんに使うものなんですよ。ケチャップじゃなくてデミグラスソースやホワイトソースの場合もありますけどね。ケチャップでオムライスを彩って完成です」
「彩る?」
「俺の国では・・・・・・そうですね、ハートを描いたり文字を書いたりすることが多いですよ」
冨岡の説明を聞いた上でローズは意味が分からず再び首を傾げた。
「ハート?」
「あなたのことが好きですって意味のマーク・・・・・・えっと、紋章のようなものですね」
ようやく『ハート』の意味を理解したローズは恥ずかしそうに言い返す。
「す、好きな殿方なんていないわよ!」
「ははっ、好きにもいくつか種類があって俺の国では『ラブ』と『ライク』なんて言い方をします。異性としてではなく友人としての好きとか、家族としての好きとか色々・・・・・・ローズお嬢様の好きは一つではないでしょう? それにハートじゃなくて言葉でもいいんですよ。例えば、いつもありがとうとか・・・・・・面と向かっては言えないことを伝えられるのもオムライスの良さですね」
「面と向かって言えないこと・・・・・・」
そこで言葉が詰まるローズ。
その背後にいたダルクがオムライスの数について冨岡に問いかけた。
「そういえばトミオカ様。これはローズお嬢様の夕食ではなかったのですか? 一人分にしては多いでしょう」
「ふっふっふ、美味しいものは人と人を繋ぐんです。俺はこのオムライスでホース公爵様の悩みを解決しますよ。それと同時にローズお嬢様の悩みもね」
「ローズお嬢様の?」
理解できずに聞き返すダルクを尻目に、冨岡はローズの前でしゃがんで目線を合わせる。
「ローズお嬢様、このオムライスはお嬢様が初めて作った料理です。せっかくですからホース公爵様と公爵夫人様にも召し上がっていただきましょう」
「お父様とお母さまに?」
「そうです。お二人に普段言えない思いを書いてみてはいかがですか? もし思いが伝わらなくても、料理のソースでした、で誤魔化すこともできます。いえ、ローズ様を愛しておられる公爵様に伝わらないことなんてありえません。俺が保証しますよ」
冨岡の言葉を聞いたローズは反射的に言い返した。
「あなたの保証なんて・・・・・・」
言いかけたものの途中で言葉を止める。
「俺の保証なんて、意味ないですか?」
0
お気に入りに追加
317
あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

おじさんが異世界転移してしまった。
明かりの元
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか?
モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

理不尽な異世界への最弱勇者のチートな抵抗
神尾優
ファンタジー
友人や先輩達と共に異世界に召喚、と言う名の誘拐をされた桂木 博貴(かつらぎ ひろき)は、キャラクターメイキングで失敗し、ステータスオール1の最弱勇者になってしまう。すべてがステータスとスキルに支配された理不尽な異世界で、博貴はキャラクターメイキングで唯一手に入れた用途不明のスキルでチート無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる