百億円で異世界に学園作り〜祖父の遺産で勇者・聖女・魔王の子孫たちを育てます〜

澤檸檬

文字の大きさ
上 下
139 / 498

卵割れたで賞

しおりを挟む
 ダルクのアドバイス通り、ローズはゆっくり卵を調理台にぶつけた。あまりにも弱かったために、卵の殻には傷一つ入らない。
 恐る恐る卵の下を覗き込むローズだが、割れていなかったため不満そうな表情を浮かべる。

「割れないわ」
「もう少し強く、叩きつけるというよりも調理台の上で跳ねさせるようなイメージです」

 簡単に補足する冨岡。それを踏まえてローズはもう一度挑戦する。

「叩きつけるより跳ねさせる・・・・・・やってみるわ・・・・・・えいっ」

 彼女は慎重に卵の殻にひびを入れた。二度目だというのに成功させたローズは嬉しそうに冨岡を見上げる。

「やったわ! これでいいんでしょ?」

 得意げに卵を見せつけてきたので、冨岡は微笑んで答えた。

「おお、完璧ですよ。ひびが入った卵は潰れやすいので優しく持ってくださいね」
「優しく・・・・・・こうね?」
「そうです。そのまま両手で持って、半分にするように割るんです。もう一度やって見せますね」

 そう言って冨岡はもう一つ卵を割って見せる。

「いいですか? ひびを起点として半分にするんです。この時、ひびを大きくしてしまうと殻が入るので、優しく割ってくださいね」
「また優しくなのね。卵ってすごく気を遣う食材だわ」
「ははっ、そうですね。物としての扱いもそうですけど、調理にも気を遣う食材だそうですよ。料理人の腕は卵料理でわかるって言われるほど、調理の技術に味が左右されるんです。シンプルな食材だからこそ腕がわかるって言われています。それでも使いこなせれば卵はメインにも副菜にもなれるすごい食材なんです、卵は」

 冨岡の話を聞いてからローズはより慎重に扱い始めた。
 ひびの近くに両手の親指をかけて、ゆっくりと左右に力を加えていく。卵の殻は別れを惜しむようにゆっくり二つに割れた。
 それと同時に殻で守られていた中身がボウルに落ちる。

「できたわ!」

 彼女は踏み台の上で飛び跳ねかねない勢いのまま冨岡にアピールした。

「すごいじゃないですか! 二回目で成功するなんて」

 冨岡が褒めるとローズは可愛らしいドヤ顔を浮かべる。

「ふふっ、そう? これってすごいのかしら?」

 私、なにかやっちゃいました、とでも言いそうな勢いだ。
 冨岡に少し遅れてダルクも彼女を称える。

「お嬢様、さすがでございます! このダルク感動いたしました」

 さらに他の料理人たちも拍手を送った。さながら授賞式である。
 卵割っただけなんだけどな、と思いながらも冨岡は笑顔を向けた。

「じゃあ、次はかき混ぜていきましょう」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

おじさんが異世界転移してしまった。

明かりの元
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか? モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...