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炭酸ジュース
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ホース公爵邸に戻ってきた冨岡は、一直線にローズの部屋を目指した。
背負ったリュックが上下に揺れて腰の部分を叩く。
ようやく戻ってきた白い扉に飛び込もうとしたが、公爵邸であることを思い出し軽く扉を叩いた。
そういえばノックは何回するのが正しいのかわからず、冨岡が六回叩いたところで中からローズの声が響く。
「うるさいわね! 何回叩くのよ。早く入りなさい」
どうやら六回は叩きすぎらしい。冨岡がゆっくり扉を開けると中からダルクが押していたので、後ろに倒れそうになった。
「おっと、失礼いたしました」
ダルクが慌てて冨岡の手を引いて支える。
「ありがとうございます、ダルクさん。ちょっと荷物が重くて」
倒れそうになった理由を冨岡が話すと、ダルクはリュックに目をやってから軽く驚いた。
「これは随分お持ちになられましたね。全て食べ物なのでしょうか?」
「ははっ、どれがローズお嬢様に気に入ってもらえるかわからず、思いつく限り持ってきました。食材もあるので簡単な料理ならできますよ」
ダルクに説明していると、部屋の中でアンティーク調の可愛らしいソファに座ったローズがいつも通り腕を組みながら言葉を挟む。
「何を話しているのよ。私が貴重な時間を割いて待っているってこと忘れてるんじゃないの?」
急いで帰ってきたつもりだったが、待たされたこと自体不満だったようだ。
冨岡は慌ててリュックを置いて中からいくつかの物を取り出す。
「お待たせしてすみません、ローズお嬢様。それではまずはこちらからどうぞ」
そう言って冨岡が取り出したのはぶどう果汁入りの炭酸飲料だ。
ペットボトル入りのワインに近い赤紫の液体を見たローズは首を傾げ、ダルクは目を丸くしていた。
「ト、トミオカ様それは葡萄酒では?」
お酒だと思い込んだダルクは冨岡を止めようとする。たしかにペットボトルがワインボトルに、炭酸飲料がワインに見えなくもない。
その勘違いに気づいた冨岡は笑顔で首を横に振る。
「大丈夫ですよ、ダルクさん。お酒ってわけじゃありませんから。あ、そうだ、グラスをお借りできますか?」
「そ、そうですか。つい取り乱してしまいました。グラスですね、すぐにご用意いたします」
ダルクが別の部屋からグラスを取ってくる間、冨岡はこの可愛らしく豪華な部屋に二人で残された。
何を話そうか、と考えているとローズがペットボトルを指さす。
「それはなに? 葡萄酒じゃないなら、果実を絞った汁ってこと?」
興味があるのはありがたいことだ、と冨岡は優しく微笑んだ。
「たしかに果実のような味はしますがそれだけではありません。きっと驚きますよ?」
「随分期待させるじゃない。口だけじゃなければいいけれど」
背負ったリュックが上下に揺れて腰の部分を叩く。
ようやく戻ってきた白い扉に飛び込もうとしたが、公爵邸であることを思い出し軽く扉を叩いた。
そういえばノックは何回するのが正しいのかわからず、冨岡が六回叩いたところで中からローズの声が響く。
「うるさいわね! 何回叩くのよ。早く入りなさい」
どうやら六回は叩きすぎらしい。冨岡がゆっくり扉を開けると中からダルクが押していたので、後ろに倒れそうになった。
「おっと、失礼いたしました」
ダルクが慌てて冨岡の手を引いて支える。
「ありがとうございます、ダルクさん。ちょっと荷物が重くて」
倒れそうになった理由を冨岡が話すと、ダルクはリュックに目をやってから軽く驚いた。
「これは随分お持ちになられましたね。全て食べ物なのでしょうか?」
「ははっ、どれがローズお嬢様に気に入ってもらえるかわからず、思いつく限り持ってきました。食材もあるので簡単な料理ならできますよ」
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「何を話しているのよ。私が貴重な時間を割いて待っているってこと忘れてるんじゃないの?」
急いで帰ってきたつもりだったが、待たされたこと自体不満だったようだ。
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「お待たせしてすみません、ローズお嬢様。それではまずはこちらからどうぞ」
そう言って冨岡が取り出したのはぶどう果汁入りの炭酸飲料だ。
ペットボトル入りのワインに近い赤紫の液体を見たローズは首を傾げ、ダルクは目を丸くしていた。
「ト、トミオカ様それは葡萄酒では?」
お酒だと思い込んだダルクは冨岡を止めようとする。たしかにペットボトルがワインボトルに、炭酸飲料がワインに見えなくもない。
その勘違いに気づいた冨岡は笑顔で首を横に振る。
「大丈夫ですよ、ダルクさん。お酒ってわけじゃありませんから。あ、そうだ、グラスをお借りできますか?」
「そ、そうですか。つい取り乱してしまいました。グラスですね、すぐにご用意いたします」
ダルクが別の部屋からグラスを取ってくる間、冨岡はこの可愛らしく豪華な部屋に二人で残された。
何を話そうか、と考えているとローズがペットボトルを指さす。
「それはなに? 葡萄酒じゃないなら、果実を絞った汁ってこと?」
興味があるのはありがたいことだ、と冨岡は優しく微笑んだ。
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「随分期待させるじゃない。口だけじゃなければいいけれど」
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