118 / 498
今は昔
しおりを挟む
ダルクの言葉を聞いた冨岡はとある昔話を思い浮かべた。
「何だか、かぐや姫みたいな話ですね。いや、無理難題で追い返すってところだけか、似てるのは」
そんな独り言を聞いていたホースが首を傾げる。
「カグヤヒメ?」
「あー、俺の国に伝わるお伽噺みたいなものって言えばわかりますか?」
ホースの問いかけに対して冨岡が答えると、彼は納得したように首を縦に振った。
「ふむ、お伽噺か。無理難題を出す話なんだね?」
「はい、美しいと評判の娘に数々の男が求婚したのですが、無理難題を押し付けられ誰もこなすことができなかった、という話です」
「求婚だと!」
「言うと思いましたよ。だから似てるのは無理難題で追い返す部分だけだって言ったじゃないですか」
ホースの勢いに押されながら冨岡が言うとダルクが隣から口を挟む。
「旦那様の前でローズお嬢様の結婚を匂わせるようなお話は禁物でございますよ。普段は温厚な方ですが、文字通り見境をなくされますので」
「それはもう、身をもって理解しましたよ」
そんな二人の会話に対して、ホースは咳払いで割り込んだ。
「それじゃあ私がタチの悪い親バカみたいじゃないか?」
「そうでしょう」
「そうでしょう」
冨岡とダルクが同時に言い返す。二人の言葉を受けたホースは、バツの悪そうな表情を浮かべて話を進めた。
「と、ともかく、だよ。私はトミオカ殿が我々にはない知識を持っていると確信している。あれほど美味なものを作り出すのだからね。ローズにあれだけの量を完食させただけでもすごいことだ。他にもローズが食べられるものを生み出してほしい。そのためにローズと直接向き合い、情報を得てくれ。そしてハンバーガーを生み出したトミオカ殿の話ならば、ローズも素直に聞き入れるかもしれない。もしもローズの講師になれそうならば、その役も担ってもらいたいということだ」
親バカだという自覚のあるホースは早口で内容を話し切る。言葉を割り込ませないためだ。
依頼内容を全て確認した冨岡は少し考えてから頷き、了承する。
「わかりました。まだ、子どもが好みそうな料理の当てもあるので試してみましょう」
「そうか! 受けてくれるか。よかった、よろしく頼むよトミオカ殿」
冨岡の答えを聞いたホースは立ち上がって握手を求めた。その手を取りながら冨岡も頷く。
「こちらこそよろしくお願いします」
「じゃあ、早速ローズに紹介しようか! よしダルク、今すぐローズの部屋に案内だ」
先走るホースに対して、ダルクは優しく下から諌めた。
「旦那様、少々お待ちください。まずはトミオカ様のお話を聞いて差し上げるのが先ではないでしょうか。全ての話を聞いていたわけではないですが、トミオカ様がここにいらしたのは、トミオカ様なりの理由があったからでしょう。今からローズお嬢様のもとに向かってしまうとトミオカ様のお話を聞くことができませんよ」
「何だか、かぐや姫みたいな話ですね。いや、無理難題で追い返すってところだけか、似てるのは」
そんな独り言を聞いていたホースが首を傾げる。
「カグヤヒメ?」
「あー、俺の国に伝わるお伽噺みたいなものって言えばわかりますか?」
ホースの問いかけに対して冨岡が答えると、彼は納得したように首を縦に振った。
「ふむ、お伽噺か。無理難題を出す話なんだね?」
「はい、美しいと評判の娘に数々の男が求婚したのですが、無理難題を押し付けられ誰もこなすことができなかった、という話です」
「求婚だと!」
「言うと思いましたよ。だから似てるのは無理難題で追い返す部分だけだって言ったじゃないですか」
ホースの勢いに押されながら冨岡が言うとダルクが隣から口を挟む。
「旦那様の前でローズお嬢様の結婚を匂わせるようなお話は禁物でございますよ。普段は温厚な方ですが、文字通り見境をなくされますので」
「それはもう、身をもって理解しましたよ」
そんな二人の会話に対して、ホースは咳払いで割り込んだ。
「それじゃあ私がタチの悪い親バカみたいじゃないか?」
「そうでしょう」
「そうでしょう」
冨岡とダルクが同時に言い返す。二人の言葉を受けたホースは、バツの悪そうな表情を浮かべて話を進めた。
「と、ともかく、だよ。私はトミオカ殿が我々にはない知識を持っていると確信している。あれほど美味なものを作り出すのだからね。ローズにあれだけの量を完食させただけでもすごいことだ。他にもローズが食べられるものを生み出してほしい。そのためにローズと直接向き合い、情報を得てくれ。そしてハンバーガーを生み出したトミオカ殿の話ならば、ローズも素直に聞き入れるかもしれない。もしもローズの講師になれそうならば、その役も担ってもらいたいということだ」
親バカだという自覚のあるホースは早口で内容を話し切る。言葉を割り込ませないためだ。
依頼内容を全て確認した冨岡は少し考えてから頷き、了承する。
「わかりました。まだ、子どもが好みそうな料理の当てもあるので試してみましょう」
「そうか! 受けてくれるか。よかった、よろしく頼むよトミオカ殿」
冨岡の答えを聞いたホースは立ち上がって握手を求めた。その手を取りながら冨岡も頷く。
「こちらこそよろしくお願いします」
「じゃあ、早速ローズに紹介しようか! よしダルク、今すぐローズの部屋に案内だ」
先走るホースに対して、ダルクは優しく下から諌めた。
「旦那様、少々お待ちください。まずはトミオカ様のお話を聞いて差し上げるのが先ではないでしょうか。全ての話を聞いていたわけではないですが、トミオカ様がここにいらしたのは、トミオカ様なりの理由があったからでしょう。今からローズお嬢様のもとに向かってしまうとトミオカ様のお話を聞くことができませんよ」
0
お気に入りに追加
317
あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

おじさんが異世界転移してしまった。
明かりの元
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか?
モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる