百億円で異世界に学園作り〜祖父の遺産で勇者・聖女・魔王の子孫たちを育てます〜

澤檸檬

文字の大きさ
上 下
110 / 498

キュルケース家執事

しおりを挟む
「あれ? もしかして違いましたか? てっきり借金の取り立てかと」

 肩透かしを食らった冨岡がアメリアと男の顔を交互に眺めると、申し訳なさそうな表情でアメリアが説明する。

「トミオカさん。この方はそうではなくて、昨日いらっしゃった・・・・・・」

 そこまでアメリアが言うと男は自分の衣服を正しながら口を開いた。

「昨日は主人がお世話になりました。私、キュルケース家執事のダルクと申します。主人からハンバーガーを買ってくるよう命じられましたので、こちらの女性にお話ししていたところです」

 ダルクと名乗る男はどうやら昨夜、最後に現れた貴族らしき客の執事らしい。
 その話を聞いた冨岡は軽い疑問を抱き首を傾げた。

「あれ? じゃあ、普通のお客さんってことですよね。すみません、アメリアさんが困っているように見えたので・・・・・・何か問題でもあったんですか?」

 冨岡がアメリアに問いかけると、彼女は胸の前で両手を合わせながら口を開く。

「それが・・・・・・」
「ここにある商品を全て買い取らせていただきたい、とお願いしていたところだったのです」

 少し困っているアメリアの様子を察したのか、ダルクが言葉を引き継いだ。

「そうなんです。突然、そう言われたので驚いてしまって・・・・・・その大きな声で『待ってください』と」

 アメリアがそう捕捉した。どうやら困っているというよりも驚きのあまりに声を上げてしまったらしい。
 一安心した冨岡は胸を撫で下ろしながら、もう一度ダルクの話を聞く。

「そうだったんですか。って、えーっと? ハンバーガーを全て買いたいってどう言うことですか?」
「言葉通りでございます。こちらの商品を全て買わせていただきたい、と主人が申しております」

 再びダルクの話を聞いた冨岡は胸の中に浮かび上がる疑問をそのまま言葉にした。

「数を確認せずに全てを買い上げるということは、とても気に入っていただけたんでしょうね」
「ええ、それはもう」
「けど、それだけじゃない。ハンバーガーが本当に欲しいなら、必要な分だけ購入するはず。数も確認せずに全て買う理由はハンバーガー以外にある。違いますか?」

 冨岡の問いかけに対してダルクは優しい笑みを浮かべる。

「なるほど、我が主人が気に入るのも納得です。ええ、その通りですよ。私に命じられたのは『この店の主人をキュルケース家にお招きすること』でした。店に商品が残っている状態ではお招きすることもできません。もちろん、あなた方が売上を逃すこともしたくはない。そこで全て買い上げようと至ったわけです」
「配慮はありがたいですけど、せっかく来てくれたお客さんにはハンバーガーを味わっていただきたいので、全て買い上げるのはやめてください」

 そう冨岡が言うとダルクは残念そうに言葉を返す。

「それでは、我が家には来ていただけない、と?」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

おじさんが異世界転移してしまった。

明かりの元
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか? モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

処理中です...