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朝とメルル
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翌朝、早くに目覚めた冨岡はアメリアやフィーネを起こさないよう静かににメルルズパンに向かう。
相場、パン屋の朝は早い。今日の分のパンを受け取りに来たのだった。
「おはようございます」
まだ開店していないメルルズパンの扉を開けると、中から香ばしい匂いが漂ってくる。焼きたてパンのの匂いは鼻腔を通って食欲を刺激してきた。
冨岡の声を聞いたメルルが奥から出てきて、額の汗を拭いながら微笑む。
「あ、トミオカさん。おはようございます。随分と早いですね」
「何だか目が覚めてしまって。あ、もしかしてまだパンは焼けてないですか?」
「いえ、もう焼けていますよ。それは全然大丈夫ですけど、目が覚めてしまったのは昨日のことがあったからでしょうか?」
メルルは心配そうに冨岡の表情を伺った。
すると冨岡は平気そうにヘラヘラと答える。
「全然そんな感じじゃないですよ。むしろ楽しみで」
「楽しみで目覚めちゃったんですか? 今日遊ぶの楽しみだから早く起きちゃったーって子どもみたいな理由で?」
「そんな感じです」
「もう、心配したじゃないですか」
メルルは頬を膨らませながら冨岡の方を軽く叩いた。
「ははっ、すみません」
「元気そうならよかったです。それで、何が楽しみなんです? 今日の屋台?」
「それもそうですけど、これから何を売っていこうかなって」
冨岡がそう答えるとメルルは首を傾げる。
「昨日ハンバーガーを売り始めたのに、もう次の商売を考えているんですか。早すぎませんか? あんなに売れていたのに」
「もちろんハンバーガーの屋台を辞めるわけじゃないですよ。それプラス新しい商売をしていこうって話です。もっともっと稼がないといけないな、と思ったんです」
そんな冨岡の言葉を聞いたメルルは「もしかして」と言葉を続けた。
「昨日のことがあったから、アメリアさんたちを守るために傭兵でも雇うつもりですか?」
「よく分かりましたね」
素直に驚いた冨岡に対し、メルルは自分のうなじを摩りながら更に話を続ける。
「実は私がこの店を開く前に、私の父がパン屋を開いていたんですよ。開店当初から評判が良く、人気のパン屋だったのですが、それを妬んだ同業者からの嫌がらせに遭いまして。その時に同じような解決方法を考えていました。まぁ、傭兵を雇う資金を集めることもできず、雇えたとしても売上のほとんどがなくなってしまうということで諦めざるを得なかったんです。その結果、私は今のパンを追求することにしたんですけどね」
「そうだったんですか。それは大変でしたね」
「いえ、もう昔の話ですから。でも傭兵を雇えるほどの売上が確保できるなら、安全は保証されますよね。トミオカさんにとってアメリアさんたちは大切だってことが分かりました」
「ん? もちろん、メルルさんが困っていたら同じように何とかしようとしますよ」
他意はなく、冨岡が素直に放った言葉は存外にもメルルの心に刺さったらしい。
彼女は一気に耳まで赤く染め、目を見開いた。
「も、もう、トミオカさんったら」
「え? どうしたんですか?」
「何でもありませんよ。ほら、パンを持ってきますから待っててください」
相場、パン屋の朝は早い。今日の分のパンを受け取りに来たのだった。
「おはようございます」
まだ開店していないメルルズパンの扉を開けると、中から香ばしい匂いが漂ってくる。焼きたてパンのの匂いは鼻腔を通って食欲を刺激してきた。
冨岡の声を聞いたメルルが奥から出てきて、額の汗を拭いながら微笑む。
「あ、トミオカさん。おはようございます。随分と早いですね」
「何だか目が覚めてしまって。あ、もしかしてまだパンは焼けてないですか?」
「いえ、もう焼けていますよ。それは全然大丈夫ですけど、目が覚めてしまったのは昨日のことがあったからでしょうか?」
メルルは心配そうに冨岡の表情を伺った。
すると冨岡は平気そうにヘラヘラと答える。
「全然そんな感じじゃないですよ。むしろ楽しみで」
「楽しみで目覚めちゃったんですか? 今日遊ぶの楽しみだから早く起きちゃったーって子どもみたいな理由で?」
「そんな感じです」
「もう、心配したじゃないですか」
メルルは頬を膨らませながら冨岡の方を軽く叩いた。
「ははっ、すみません」
「元気そうならよかったです。それで、何が楽しみなんです? 今日の屋台?」
「それもそうですけど、これから何を売っていこうかなって」
冨岡がそう答えるとメルルは首を傾げる。
「昨日ハンバーガーを売り始めたのに、もう次の商売を考えているんですか。早すぎませんか? あんなに売れていたのに」
「もちろんハンバーガーの屋台を辞めるわけじゃないですよ。それプラス新しい商売をしていこうって話です。もっともっと稼がないといけないな、と思ったんです」
そんな冨岡の言葉を聞いたメルルは「もしかして」と言葉を続けた。
「昨日のことがあったから、アメリアさんたちを守るために傭兵でも雇うつもりですか?」
「よく分かりましたね」
素直に驚いた冨岡に対し、メルルは自分のうなじを摩りながら更に話を続ける。
「実は私がこの店を開く前に、私の父がパン屋を開いていたんですよ。開店当初から評判が良く、人気のパン屋だったのですが、それを妬んだ同業者からの嫌がらせに遭いまして。その時に同じような解決方法を考えていました。まぁ、傭兵を雇う資金を集めることもできず、雇えたとしても売上のほとんどがなくなってしまうということで諦めざるを得なかったんです。その結果、私は今のパンを追求することにしたんですけどね」
「そうだったんですか。それは大変でしたね」
「いえ、もう昔の話ですから。でも傭兵を雇えるほどの売上が確保できるなら、安全は保証されますよね。トミオカさんにとってアメリアさんたちは大切だってことが分かりました」
「ん? もちろん、メルルさんが困っていたら同じように何とかしようとしますよ」
他意はなく、冨岡が素直に放った言葉は存外にもメルルの心に刺さったらしい。
彼女は一気に耳まで赤く染め、目を見開いた。
「も、もう、トミオカさんったら」
「え? どうしたんですか?」
「何でもありませんよ。ほら、パンを持ってきますから待っててください」
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