85 / 498
トラブル発生
しおりを挟む
広場に溢れる笑顔。その中心にいるのは紛れもなくアメリアだろう。アメリアの両隣に冨岡とフィーネがいて、柔らかで優しく美味しい空間を作り上げていた。
「そうですね」
冨岡は優しく口角を上げてから、ハンバーガーを作り続ける。
慣れてくれば考えなくても手が動くもの。あとはミスがないように気をつけるだけだ。
大抵こういう時は慣れてきた頃に何かが起きる。
ミスやトラブルに気をつけ、ようやく百個分のハンバーガーが完成したと同時にメルルの声が聞こえた。
「トミオカさん! 持ってきましたよ、追加のパンです」
冨岡が顔を上げると木製の容器に入れられたパンがカウンターに置かれている。その向こう側には汗だくのメルルが立っていた。
「メルルさん! ちょうどパンがなくなったところでした。ありがとうございます」
「間に合ってよかったです。それにしてもすごい人数ですね」
広場を見渡しながらメルルが言う。その途中でアメリアと目が合い挨拶を交わしていた。
そんな二人の話を聞いていたかったが、調理に追われている冨岡にそんな余裕はない。
パンの追加も届き、今の所ミスもなく、列も滞りなく進んでいる。どうやら問題は起きなさそうだ。
折り返し地点だな、と思いながらも冨岡が安堵を感じた瞬間、警戒していたその時が訪れる。
「おい、邪魔だろうが!」
男の叫び声が行列の後方から響いてきた。粗暴な声である。
ちょうどハンバーグを焼いており、手が離せなかった冨岡が顔を上げてその方向に目を向けた。声の主の姿は見えず、その周辺からザワザワと声だけが聞こえる。
咄嗟のことで動けない冨岡。そんな中、叫び声は続いた。
「おい、どけよ!」
どうやら通行の邪魔になっているということらしい。しかし、ここは広場だ。人混みを避ければ通行は可能。
難癖をつけていることは明白だった。
冨岡がそんなことを考えている一瞬のうちに、メルルと会話していたアメリアが先に動く。
彼女は即座に人混みを掻き分け、叫び声の元へと向かった。
「アメリアさん!」
冨岡の呼びかけにも応えず、アメリアは人混みの中へと消えていく。
「先生!」
その背中を追いかけてフィーネも行ってしまった。
「フィーネちゃんまで」
トラブルに慣れていない冨岡は何が起きているのかと考えるため、一瞬動きが止まってしまう。一方、アメリアたちはこの揉め事の多い世界に慣れているため、考えるよりも先に体が動いたのだ。
アメリアとフィーネの背中を見送った情けなさを感じ、冨岡は全てのスイッチを切って屋台から出る。
「すみません、ちょっと待っててください!」
待っている客にそう伝えると冨岡は叫び声の方に走った。
「そうですね」
冨岡は優しく口角を上げてから、ハンバーガーを作り続ける。
慣れてくれば考えなくても手が動くもの。あとはミスがないように気をつけるだけだ。
大抵こういう時は慣れてきた頃に何かが起きる。
ミスやトラブルに気をつけ、ようやく百個分のハンバーガーが完成したと同時にメルルの声が聞こえた。
「トミオカさん! 持ってきましたよ、追加のパンです」
冨岡が顔を上げると木製の容器に入れられたパンがカウンターに置かれている。その向こう側には汗だくのメルルが立っていた。
「メルルさん! ちょうどパンがなくなったところでした。ありがとうございます」
「間に合ってよかったです。それにしてもすごい人数ですね」
広場を見渡しながらメルルが言う。その途中でアメリアと目が合い挨拶を交わしていた。
そんな二人の話を聞いていたかったが、調理に追われている冨岡にそんな余裕はない。
パンの追加も届き、今の所ミスもなく、列も滞りなく進んでいる。どうやら問題は起きなさそうだ。
折り返し地点だな、と思いながらも冨岡が安堵を感じた瞬間、警戒していたその時が訪れる。
「おい、邪魔だろうが!」
男の叫び声が行列の後方から響いてきた。粗暴な声である。
ちょうどハンバーグを焼いており、手が離せなかった冨岡が顔を上げてその方向に目を向けた。声の主の姿は見えず、その周辺からザワザワと声だけが聞こえる。
咄嗟のことで動けない冨岡。そんな中、叫び声は続いた。
「おい、どけよ!」
どうやら通行の邪魔になっているということらしい。しかし、ここは広場だ。人混みを避ければ通行は可能。
難癖をつけていることは明白だった。
冨岡がそんなことを考えている一瞬のうちに、メルルと会話していたアメリアが先に動く。
彼女は即座に人混みを掻き分け、叫び声の元へと向かった。
「アメリアさん!」
冨岡の呼びかけにも応えず、アメリアは人混みの中へと消えていく。
「先生!」
その背中を追いかけてフィーネも行ってしまった。
「フィーネちゃんまで」
トラブルに慣れていない冨岡は何が起きているのかと考えるため、一瞬動きが止まってしまう。一方、アメリアたちはこの揉め事の多い世界に慣れているため、考えるよりも先に体が動いたのだ。
アメリアとフィーネの背中を見送った情けなさを感じ、冨岡は全てのスイッチを切って屋台から出る。
「すみません、ちょっと待っててください!」
待っている客にそう伝えると冨岡は叫び声の方に走った。
0
お気に入りに追加
317
あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

おじさんが異世界転移してしまった。
明かりの元
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか?
モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる