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トラブル発生
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広場に溢れる笑顔。その中心にいるのは紛れもなくアメリアだろう。アメリアの両隣に冨岡とフィーネがいて、柔らかで優しく美味しい空間を作り上げていた。
「そうですね」
冨岡は優しく口角を上げてから、ハンバーガーを作り続ける。
慣れてくれば考えなくても手が動くもの。あとはミスがないように気をつけるだけだ。
大抵こういう時は慣れてきた頃に何かが起きる。
ミスやトラブルに気をつけ、ようやく百個分のハンバーガーが完成したと同時にメルルの声が聞こえた。
「トミオカさん! 持ってきましたよ、追加のパンです」
冨岡が顔を上げると木製の容器に入れられたパンがカウンターに置かれている。その向こう側には汗だくのメルルが立っていた。
「メルルさん! ちょうどパンがなくなったところでした。ありがとうございます」
「間に合ってよかったです。それにしてもすごい人数ですね」
広場を見渡しながらメルルが言う。その途中でアメリアと目が合い挨拶を交わしていた。
そんな二人の話を聞いていたかったが、調理に追われている冨岡にそんな余裕はない。
パンの追加も届き、今の所ミスもなく、列も滞りなく進んでいる。どうやら問題は起きなさそうだ。
折り返し地点だな、と思いながらも冨岡が安堵を感じた瞬間、警戒していたその時が訪れる。
「おい、邪魔だろうが!」
男の叫び声が行列の後方から響いてきた。粗暴な声である。
ちょうどハンバーグを焼いており、手が離せなかった冨岡が顔を上げてその方向に目を向けた。声の主の姿は見えず、その周辺からザワザワと声だけが聞こえる。
咄嗟のことで動けない冨岡。そんな中、叫び声は続いた。
「おい、どけよ!」
どうやら通行の邪魔になっているということらしい。しかし、ここは広場だ。人混みを避ければ通行は可能。
難癖をつけていることは明白だった。
冨岡がそんなことを考えている一瞬のうちに、メルルと会話していたアメリアが先に動く。
彼女は即座に人混みを掻き分け、叫び声の元へと向かった。
「アメリアさん!」
冨岡の呼びかけにも応えず、アメリアは人混みの中へと消えていく。
「先生!」
その背中を追いかけてフィーネも行ってしまった。
「フィーネちゃんまで」
トラブルに慣れていない冨岡は何が起きているのかと考えるため、一瞬動きが止まってしまう。一方、アメリアたちはこの揉め事の多い世界に慣れているため、考えるよりも先に体が動いたのだ。
アメリアとフィーネの背中を見送った情けなさを感じ、冨岡は全てのスイッチを切って屋台から出る。
「すみません、ちょっと待っててください!」
待っている客にそう伝えると冨岡は叫び声の方に走った。
「そうですね」
冨岡は優しく口角を上げてから、ハンバーガーを作り続ける。
慣れてくれば考えなくても手が動くもの。あとはミスがないように気をつけるだけだ。
大抵こういう時は慣れてきた頃に何かが起きる。
ミスやトラブルに気をつけ、ようやく百個分のハンバーガーが完成したと同時にメルルの声が聞こえた。
「トミオカさん! 持ってきましたよ、追加のパンです」
冨岡が顔を上げると木製の容器に入れられたパンがカウンターに置かれている。その向こう側には汗だくのメルルが立っていた。
「メルルさん! ちょうどパンがなくなったところでした。ありがとうございます」
「間に合ってよかったです。それにしてもすごい人数ですね」
広場を見渡しながらメルルが言う。その途中でアメリアと目が合い挨拶を交わしていた。
そんな二人の話を聞いていたかったが、調理に追われている冨岡にそんな余裕はない。
パンの追加も届き、今の所ミスもなく、列も滞りなく進んでいる。どうやら問題は起きなさそうだ。
折り返し地点だな、と思いながらも冨岡が安堵を感じた瞬間、警戒していたその時が訪れる。
「おい、邪魔だろうが!」
男の叫び声が行列の後方から響いてきた。粗暴な声である。
ちょうどハンバーグを焼いており、手が離せなかった冨岡が顔を上げてその方向に目を向けた。声の主の姿は見えず、その周辺からザワザワと声だけが聞こえる。
咄嗟のことで動けない冨岡。そんな中、叫び声は続いた。
「おい、どけよ!」
どうやら通行の邪魔になっているということらしい。しかし、ここは広場だ。人混みを避ければ通行は可能。
難癖をつけていることは明白だった。
冨岡がそんなことを考えている一瞬のうちに、メルルと会話していたアメリアが先に動く。
彼女は即座に人混みを掻き分け、叫び声の元へと向かった。
「アメリアさん!」
冨岡の呼びかけにも応えず、アメリアは人混みの中へと消えていく。
「先生!」
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「すみません、ちょっと待っててください!」
待っている客にそう伝えると冨岡は叫び声の方に走った。
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