79 / 498
可愛いと美味しいは正義
しおりを挟む
アメリアは元気よく返事をして、八等分程度の大きさに切ったハンバーガーに短めの串を刺して皿に並べる。屋台のカウンターに皿を置いて、あとはフィーネに任せた。
「じゃあフィーネ、あとはお願いしますね。私はハンバーグを焼いていきますから」
「はーい」
指示を受けたフィーネは踏み台を移動させてカウンターの前に立つ。
「どうぞ、ご自由にお取りくださーい」
これは昨夜の間に冨岡に教えられたセリフだ。試食という作戦を思いついた時に、フィーネが適役であると瞬時に思いついた。
小さな子が一生懸命配っている物を受け取らずにはいられないだろう。
悪どい? 知ったことか。可愛いはどの世界においても正義である。
試食担当のフィーネに目を合わせて「どうぞ」と言われた男は、断るわけにもいかず、動き続ける屋台に歩幅を合わせてハンバーガーの一欠片を受け取った。
「じゃあ、一つ・・・・・・食べても大丈夫なんだよな? 後で料金を請求されることはないよな?」
試食という概念が全くないわけではないが、それほど浸透していないらしく警戒する男。フィーネはそんな不安を払拭するように笑顔で答えた。
「うん、試食はタダだよ。食べてみてね」
「じゃあ、いただきます」
そう言って男はハンバーガーの匂いを嗅いで口に放り込む。周囲の人々は一様に彼の動きを見守っていた。
「おい、どんな味だ?」
「肉の匂いだけど」
男の近くにいた者たちが疑問を投げかける。
ハンバーガーを飲み込んだ男は一気に目を見開き、心臓でも鷲掴みにされたような表情を浮かべた。
「ん!」
「おい、どうした?」
「変なものでも入ってたのか?」
男を心配して声をかける人々。しかし、男が鷲掴みにされたのは心臓ではなく、胃袋と舌である。
「うんめぇ! なんだこれ。柔らかいパンと新鮮な野菜、それに加えて驚くほどジューシーで旨味の強い肉の塊! おい、お前らも食べてみろ。美味すぎるぞ」
一番最初に試食した男の反応を見た冨岡は『勝ち』を確信する。
ハンバーガーの味はアメリアとフィーネだけではなく、この世界の人々にも通用するのだ。
男の言葉に誘導された人々は徐々に集まり、試食用のハンバーガーを食べ始める。
「なんだこれ!」
「美味すぎる!」
「これをタダでもらってもいいのか?」
口々に感想を述べ始めた。そのどれも好意的な意見である。舌と胃袋、そして心を掴まれた人々は、遂に冨岡が待っていた言葉を口にし始めた。
「なぁ、これいくらで売ってるんだ」
「こんな大きさじゃ足りないよ。普通の大きさで売ってくれ」
よしきた、と冨岡は心の中でガッツポーズをし、間髪入れずに答える。
「すみません、大通りは移動のために通っただけですので、販売は大通りの外でお願いします。ちゃんとした商品の料金は一つで銅貨五枚ですよ」
銀貨一枚およそ千円程度の価値。銅貨十枚で銀貨一枚になる。つまりハンバーガーが一つで五百円くらいに設定しているということだ。
異世界料理ということを考えれば良心的な料金だろう。
「じゃあフィーネ、あとはお願いしますね。私はハンバーグを焼いていきますから」
「はーい」
指示を受けたフィーネは踏み台を移動させてカウンターの前に立つ。
「どうぞ、ご自由にお取りくださーい」
これは昨夜の間に冨岡に教えられたセリフだ。試食という作戦を思いついた時に、フィーネが適役であると瞬時に思いついた。
小さな子が一生懸命配っている物を受け取らずにはいられないだろう。
悪どい? 知ったことか。可愛いはどの世界においても正義である。
試食担当のフィーネに目を合わせて「どうぞ」と言われた男は、断るわけにもいかず、動き続ける屋台に歩幅を合わせてハンバーガーの一欠片を受け取った。
「じゃあ、一つ・・・・・・食べても大丈夫なんだよな? 後で料金を請求されることはないよな?」
試食という概念が全くないわけではないが、それほど浸透していないらしく警戒する男。フィーネはそんな不安を払拭するように笑顔で答えた。
「うん、試食はタダだよ。食べてみてね」
「じゃあ、いただきます」
そう言って男はハンバーガーの匂いを嗅いで口に放り込む。周囲の人々は一様に彼の動きを見守っていた。
「おい、どんな味だ?」
「肉の匂いだけど」
男の近くにいた者たちが疑問を投げかける。
ハンバーガーを飲み込んだ男は一気に目を見開き、心臓でも鷲掴みにされたような表情を浮かべた。
「ん!」
「おい、どうした?」
「変なものでも入ってたのか?」
男を心配して声をかける人々。しかし、男が鷲掴みにされたのは心臓ではなく、胃袋と舌である。
「うんめぇ! なんだこれ。柔らかいパンと新鮮な野菜、それに加えて驚くほどジューシーで旨味の強い肉の塊! おい、お前らも食べてみろ。美味すぎるぞ」
一番最初に試食した男の反応を見た冨岡は『勝ち』を確信する。
ハンバーガーの味はアメリアとフィーネだけではなく、この世界の人々にも通用するのだ。
男の言葉に誘導された人々は徐々に集まり、試食用のハンバーガーを食べ始める。
「なんだこれ!」
「美味すぎる!」
「これをタダでもらってもいいのか?」
口々に感想を述べ始めた。そのどれも好意的な意見である。舌と胃袋、そして心を掴まれた人々は、遂に冨岡が待っていた言葉を口にし始めた。
「なぁ、これいくらで売ってるんだ」
「こんな大きさじゃ足りないよ。普通の大きさで売ってくれ」
よしきた、と冨岡は心の中でガッツポーズをし、間髪入れずに答える。
「すみません、大通りは移動のために通っただけですので、販売は大通りの外でお願いします。ちゃんとした商品の料金は一つで銅貨五枚ですよ」
銀貨一枚およそ千円程度の価値。銅貨十枚で銀貨一枚になる。つまりハンバーガーが一つで五百円くらいに設定しているということだ。
異世界料理ということを考えれば良心的な料金だろう。
0
お気に入りに追加
317
あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

おじさんが異世界転移してしまった。
明かりの元
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか?
モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる