百億円で異世界に学園作り〜祖父の遺産で勇者・聖女・魔王の子孫たちを育てます〜

澤檸檬

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異世界学園計画

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「学園・・・・・・ですか?」

 首を傾げ冨岡の顔を覗き込むアメリア。耳馴染みのない言葉だったか、と冨岡が補足する。

「学校というか、身寄りのない子どもたちや学びたくても環境が整っていない子どもたちを受け入れ、生きていくために必要な知識を身につけてもらいたいんです。もちろん、今のフィーネちゃんのように住むこともできるように・・・・・・家族のように受け入れられる場所です。アメリアさんがしてきたことの延長ですけど」
「トミオカさん・・・・・・」

 アメリアは近づかないとわからないほど、少しだけ瞳を潤ませ名前を呼んだ。簡単に泣かないように生きてきたのだろう。涙を我慢しているようにも見える。
 冨岡はどうしようもなく照れ臭くなって、オーブンに顔を貼り付けているフィーネの頭を撫でる。

「まずはフィーネちゃんが安心して暮らしていくための基盤づくりですね。あと、勉強も」

 言いながら冨岡は調理台の上に置いてあった段ボールの中から、教科書を取り出した。それは向こうの世界で小学生が学ぶ算数や理科の教科書である。国語の教科書を持ってきていないのは、扱う文字が違うため。あっても仕方がないという判断だった。

「本?」

 フィーネは冨岡の持つ教科書を見上げながら問いかける。

「そうだよ、これで勉強するんだ」
「えー、お勉強?」

 あからさまに勉強という単語に拒否反応を見せるフィーネ。子どもの反応としては普通かもしれない。
 一方、アメリアは教科書自体に驚いていた。

「紙の本ですか? 初めて見ました・・・・・・なんて綺麗な紙なんでしょうか。書いてある文字は読めませんが綺麗な文字ですね。本当にトミオカさんには驚かされてばかりです」

 アメリアはその美しい唇から「ふふっ」と微笑む吐息を漏らす。
 そんな小さな空気の流れをどうしようもなく色っぽく感じ、冨岡は頬を赤らめた。

「できることは全てしたいですからね。フィーネちゃんも十年経てば独り立ちすることになるかもしれません。そう考えると時間が惜しいです」

 冨岡のいた日本では社会に出るまでの間に九年以上勉学に費やす。十年という時間は長いようで短いのだ。
 何もない状態から学ぶよりも、物や教材が十分に揃った状態で学ぶ方が当然効率はいい。そのためならば手間も金も惜しまない、という冨岡の考えである。

「ありがとうございます、トミオカさん」

 自分が掲げていた理想をより大きく、より良い形で掲げる冨岡にアメリアは心のそこから感謝を述べた。
 冨岡は優しく微笑んでから頷く。

「ここからですよ。語るだけじゃあ形になりません。叶えるために三人で始めましょう異世界学園計画を!」
「いせかい?」
「いせかい?」
「あ、じゃなくて教会学園計画です!」
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