66 / 498
色重ね濃く
しおりを挟む
「え、あ、ううっ・・・・・・」
「先生、顔が真っ赤だよ?」
恥ずかしがりながらパンくずを取るアメリアに気づきフィーネが首を傾げる。幼く素直な疑問がさらにアメリアを辱めた。
冨岡視点のアメリアは恥じらいを露わにしていて、可愛らしくもあり色っぽくも見える。
思わず鼻の奥で笑ってしまうと、アメリアが頬を膨らまして不満を表現した。
「もう、トミオカさんまで」
「すみません、馬鹿にしたつもりはないんです。ただ、可愛いなって」
「かわ、か、可愛い、だなんて」
冨岡の言葉を聞いたアメリアの顔色は濃く鮮やかになる。
「先生、また赤くなったね」
フィーネが再び疑問を言葉にするとアメリアは勢いよく両手で顔を覆った。
勢い余り、鼻を叩いてしまったのか小さく「痛い」と漏らして顔を隠す。
「見ないでください!」
そんな動作さえ可愛い、と冨岡は微笑んだ。唇の端から薄く漏れた空気を聞き取ったのかアメリアは指の間から冨岡に視線を送る。
「また笑いましたね?」
「いえ? 全然? ふふっ」
「ほら! 今、笑いました」
「気のせいですよ?」
そんな取り留めない会話も楽しいと感じられるこの時間が、愛おしいと思ってしまった。その気持ちが彼女に向いているとはまだ冨岡自身も気づいていない。
冨岡が否定するように首を横に振る。
そこでようやく恥じらいから解き放たれたアメリアが冷静になり、冨岡のアイデアを振り返った。
「あ、そういえば、屋台に車輪がついている車で販売するんですよね? 骨組みが屋台なのであれば結局、場所が必要になりませんか?」
アメリアの言うことはもっともである。屋台単体、車輪単体であればアメリアにも想像できるものだ。頭の中で組み合わせるのは容易い。
しかし、冨岡の想像力も『結局場所問題』へ届いていた。その上で解決策を見出している。
「確かに小さな屋台分の場所が必要になるんですけど、大丈夫です。土地の権利を侵さないで侵入できるものがありますから」
あえて内容をぼかして説明する冨岡。そこにはアメリアを驚かせたいという思惑があった。
驚かせたい、喜ばせたい、彼女が感情を露わにする瞬間を見たいのだろう。相手の感情を引き出す行為とは本来、愛情表現なのかもしれない。
「権利を侵さず侵入できるもの、ですか」
不思議そうに顎に触れるアメリアに微笑みかけながら、冨岡が言う。
「準備が整ったら説明しますね」
冨岡は頭の中で準備にどれくらいかかるだろうか、と試算していた。
早くアメリアを驚かせたい。彼女の笑顔が見たい。冨岡は食事を進めながら、不思議そうにするアメリアに「準備が整えばわかりますよ」と答える。
準備が整うその日を思いながら。
「先生、顔が真っ赤だよ?」
恥ずかしがりながらパンくずを取るアメリアに気づきフィーネが首を傾げる。幼く素直な疑問がさらにアメリアを辱めた。
冨岡視点のアメリアは恥じらいを露わにしていて、可愛らしくもあり色っぽくも見える。
思わず鼻の奥で笑ってしまうと、アメリアが頬を膨らまして不満を表現した。
「もう、トミオカさんまで」
「すみません、馬鹿にしたつもりはないんです。ただ、可愛いなって」
「かわ、か、可愛い、だなんて」
冨岡の言葉を聞いたアメリアの顔色は濃く鮮やかになる。
「先生、また赤くなったね」
フィーネが再び疑問を言葉にするとアメリアは勢いよく両手で顔を覆った。
勢い余り、鼻を叩いてしまったのか小さく「痛い」と漏らして顔を隠す。
「見ないでください!」
そんな動作さえ可愛い、と冨岡は微笑んだ。唇の端から薄く漏れた空気を聞き取ったのかアメリアは指の間から冨岡に視線を送る。
「また笑いましたね?」
「いえ? 全然? ふふっ」
「ほら! 今、笑いました」
「気のせいですよ?」
そんな取り留めない会話も楽しいと感じられるこの時間が、愛おしいと思ってしまった。その気持ちが彼女に向いているとはまだ冨岡自身も気づいていない。
冨岡が否定するように首を横に振る。
そこでようやく恥じらいから解き放たれたアメリアが冷静になり、冨岡のアイデアを振り返った。
「あ、そういえば、屋台に車輪がついている車で販売するんですよね? 骨組みが屋台なのであれば結局、場所が必要になりませんか?」
アメリアの言うことはもっともである。屋台単体、車輪単体であればアメリアにも想像できるものだ。頭の中で組み合わせるのは容易い。
しかし、冨岡の想像力も『結局場所問題』へ届いていた。その上で解決策を見出している。
「確かに小さな屋台分の場所が必要になるんですけど、大丈夫です。土地の権利を侵さないで侵入できるものがありますから」
あえて内容をぼかして説明する冨岡。そこにはアメリアを驚かせたいという思惑があった。
驚かせたい、喜ばせたい、彼女が感情を露わにする瞬間を見たいのだろう。相手の感情を引き出す行為とは本来、愛情表現なのかもしれない。
「権利を侵さず侵入できるもの、ですか」
不思議そうに顎に触れるアメリアに微笑みかけながら、冨岡が言う。
「準備が整ったら説明しますね」
冨岡は頭の中で準備にどれくらいかかるだろうか、と試算していた。
早くアメリアを驚かせたい。彼女の笑顔が見たい。冨岡は食事を進めながら、不思議そうにするアメリアに「準備が整えばわかりますよ」と答える。
準備が整うその日を思いながら。
0
お気に入りに追加
317
あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。

おじさんが異世界転移してしまった。
明かりの元
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか?
モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる