百億円で異世界に学園作り〜祖父の遺産で勇者・聖女・魔王の子孫たちを育てます〜

澤檸檬

文字の大きさ
上 下
47 / 498

フィーネとデート

しおりを挟む
 朝食後それぞれの支度を終え、冨岡とアメリアは教会から出ようとした。
 冨岡は市場調査、アメリアは仕事である。残していくフィーネにアメリアが勉強と掃除を言いつけると明らかに嫌そうな表情を浮かべた。

「ええー、お勉強なの?」
「どうしたんですか、フィーネ。いつものことじゃないですか。私が仕事に行っている間は読み書きの勉強をする約束でしょう?」

 そう、それ自体はいつも通りのことである。しかし状況はいつも通りではない。
 
「フィーネ、トミオカさんと一緒にいたいよ」
「ダメですよ。トミオカさんもお仕事のようなものですから」
「ぶー」

 唇を尖らせて不満を表するフィーネ。
 そんなフィーネを見かねて冨岡は口を挟む。

「あの、もしよければフィーネちゃんも連れていきましょうか。もちろん俺よりもクルスマインに詳しいと思いますし、街の中で文字を読めば勉強にもなります。アメリアさんが構わなければ、ですが」

 冨岡がそう話すとフィーネは嬉しそうに頷いた。

「うん、フィーネが案内するよ! お勉強も帰ってきてからする!」
「もう、フィーネったら。トミオカさんの優しさに甘えていますね? うーん、そうですね・・・・・・本当にお邪魔ではないですか?」

 アメリアはフィーネに話してから冨岡に問いかける。
 自分から提案したのだから冨岡がフィーネを邪魔だと思うはずもない。

「もちろんですよ。むしろ一人でいるより心強いです」
「トミオカさんがそう言うなら・・・・・・いい子にしているんですよ、フィーネ」
「うん! フィーネ、いい子にする。お仕事は邪魔しないよ」

 こうして今日の行動が決定した。

「わかりました。それでは私は仕事に行ってきますね」

 そう言ってアメリアは仕事に向かっていく。

「いってらっしゃい、アメリアさん」
「いってらっしゃーい」

 冨岡とフィーネはアメリアの背中を見送ってから教会の前で顔を見合わせた。

「トミオカさん、これからどうするの?」
「そうだなぁ、とりあえず市場に行こうと思ってるよ。この街でどんな食べ物が人気なのかを調べないといけないからね。あとは貴金属の相場を調べたいんだ。一番大きな市場はどこかわかるかい?」

 冨岡がそう問いかけるとフィーネは少し考えてから冨岡の手を握って引っ張る。

「えっとね、こっちだよ!」
「ちょっ、フィーネちゃん」

 驚きながらも冨岡は手を引かれフィーネについていった。
 フィーネの案内は昨日アメリアと歩いたルートを辿っており、気づくとプチワイバーンの串焼きを買った大通りに到着する。

「ここがこのまちで一番大きな市場だよ。いつもいい匂いがするの。どんな味がするかは知らないんだけど匂いだけで幸せになれるんだ」

 そう言いながらフィーネは嬉しそうに微笑んだ。心から幸せを感じているのだろう。
 本人が自らの境遇を嘆いているわけでもないのに、冨岡が心を痛めるわけにはいかない。それでももっと大きな幸せを感じてもらいたいと思い、冨岡はこう提案する。

「そっか、ありがとうフィーネちゃん。今からこの市場でどの食べ物が人気なのか調べたいんだ。色々買ってみるから一緒に味見してくれるかい?」
「え、うん! フィーネいっぱい食べられるよ」
「ははっ、晩御飯が食べられるくらいにしておこうね」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

おじさんが異世界転移してしまった。

明かりの元
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか? モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

文官たちの試練の日

田尾風香
ファンタジー
今日は、国王の決めた"貴族の子息令嬢が何でも言いたいことを本音で言っていい日"である。そして、文官たちにとっては、体力勝負を強いられる試練の日でもある。文官たちが貴族の子息令嬢の話の場に立ち会って、思うこととは。 **基本的に、一話につき一つのエピソードです。最初から最後まで出るのは宰相のみ。全七話です。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...