百億円で異世界に学園作り〜祖父の遺産で勇者・聖女・魔王の子孫たちを育てます〜

澤檸檬

文字の大きさ
上 下
46 / 498

肉じゃが朝食とグルメレポーター

しおりを挟む
 それがどんなものか説明しようとした冨岡だが百聞は一見に如かずということで実際に保存食セットから白米と味噌汁、肉じゃがを手に取る。
 
「これがそのセットです。昨夜のように湯を用意してもらえますか?」
「あ、はい。わかりました」

 アメリアはそう答えると水と熱の魔法を組み合わせ鍋に湯を用意した。
 持っていたものを包装のまま湯に入れると冨岡は頭の中で時間を測る。
 温まるのを待って器に移し、アメリアの前に並べると冨岡の故郷らしい肉じゃが朝食の完成だ。

「どうぞ、肉じゃが朝食です。おにぎりにもなっていたこの白い穀物が白米、こちらのスープが味噌汁、肉とじゃがいもを煮たのが肉じゃがですよ。食べてみてください」

 まるで一から自分で作ったかのように冨岡が披露するとアメリアは目を輝かせる。三品も朝食に並んでいるという豪華さに感動していたのだ。
 
「わぁ、ありがとうございます。なんだかすごく豪華ですね」
「俺の故郷では家庭的な料理の代表です。ぜひ食べてみてください」

 冨岡が促すとアメリアはスプーンを手に取って、味噌汁を掬う。

「それではこの味噌汁から。いただきます」

 口の中に入れると味噌の香りとまろやかな旨味がアメリアの舌に広がった。心地よい塩気が体の中を突き抜けていく。

「んっ、美味しい・・・・・・食べたことのない味なのでうまく表現できませんが体に馴染んでいくような気がします」
「ははっ、味噌汁は体に優しい味がしますよね。それでも塩分自体は高いので白米と一緒に食べるといいですよ」
「白米と一緒にですか? それでは・・・・・・はむっ」

 続いてアメリアは白米を口に入れた。モチモチとした食感と米の甘みが口の中に広がり、彼女は感動を覚える。

「うん、おにぎりの中に入っているものと同じですね。確かに美味しいですがこれだけでは物足りないような・・・・・・」
「そうですね。白米だけで食べる人もいなくはないですが、大体は塩気のあるものと一緒に食べるんですよ。味噌汁を飲んでみてください」
「わかりました。味噌汁ですね」

 アメリアは白米の味を口に残したまま味噌汁を啜った。すると先ほど物足りないと思っていた白米の味と味噌汁が合わさり、これ以上にないほど調和する。

「んんっ! なんですか、これ。白米の甘みと味噌汁の塩気がお互いの足りない部分を補い、尖っている部分を丸くしているような気がします」
「でしょ? 俺の故郷の味です。喜んでもらえたならよかった。是非肉じゃがもどうぞ」
「これですね。じゃあ、いただきます」

 日本食の虜になりつつあるアメリアはそのまま肉じゃがを頬張った。
 肉独特の旨味と甘み、それらを吸ったほくほくのじゃがいもがアメリアの口の中で途轍もない満足感に変わる。

「な、なんですか、これ! こんなの食べたことありません。まるで旨味の宝箱ですよ」

 そんなアメリアの言葉をグルメレポーターみたいだなと思いながら冨岡は満足そうな彼女の表情を眺めていた。

「ははっ、感想はいいので食べてください。俺もおにぎり食べますね」

 こうして冨岡たちはそれぞれの朝食を食べ終える。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

おじさんが異世界転移してしまった。

明かりの元
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか? モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

文官たちの試練の日

田尾風香
ファンタジー
今日は、国王の決めた"貴族の子息令嬢が何でも言いたいことを本音で言っていい日"である。そして、文官たちにとっては、体力勝負を強いられる試練の日でもある。文官たちが貴族の子息令嬢の話の場に立ち会って、思うこととは。 **基本的に、一話につき一つのエピソードです。最初から最後まで出るのは宰相のみ。全七話です。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...