百億円で異世界に学園作り〜祖父の遺産で勇者・聖女・魔王の子孫たちを育てます〜

澤檸檬

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三方よし

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 冨岡の提案を聞いたアメリアは先ほどの野菜スープとチョコレートを思い出した。
 確かに冨岡の持っていた食事は手間がかかっており、旨味が複雑に重なってこの世界にはない美味しさになっている。
 それに対してこの世界の料理はシンプルなものが多い。素材の味を活かしているといえば聞こえはいいが、そこに大きな創意工夫は感じられなかった。
 冨岡の話している『一歩先』とは『満腹感』だけではなく『味』と『バリエーション』を楽しむという意味である。
 アメリアは冨岡の真意に気づき目を輝かせた。

「思います! 私やフィーネがいただいたような料理を売ることが出来るのであれば、あっという間に噂になって飛ぶように売れるはずです」

 そう言ってからアメリアは何か懸念があるように言葉を止める。

「あ・・・・・・」
「どうしたんですか、アメリアさん。何か気になることが?」

 冨岡が問いかけるとアメリアは少し言いづらそうに口を開いた。

「はい、少し・・・・・・その、あまりに高価なものであれば庶民の手には届かないのかなと思ってしまいまして。もちろんどれだけお金を払ってでも食べたい人はいると思うので商売としては成功しそうですが・・・・・・」

 どうやらアメリアは冨岡が食べ物を売る場合の客層を考えていたらしい。これはアメリア自身が購入すると考えた時に手の届かないものであるという話だ。
 もちろん、商売としてはそれでも成功だろう。
 その点に関しては冨岡も考えていた。

「俺もどうせなら多くの人に食べてもらいたいと思っていますよ。だから、簡単に食べられるようなものを安価で売るつもりです。薄利多売というやつですね」
「はくりたばい?」
「ええ、一つ一つの利益は少なくとも多くの人が買ってくれれば商売として成り立つという話です。誰でも手の届く料金で美味しいものを・・・・・・三方よしの精神ですよ」

 冨岡が口にした『三方よし』という言葉は源次郎から教え込まれたものである。
 それをアメリアが知るわけもなく再び首を傾げた。

「さんぽうよし・・・・・・?」
「俺の故郷の言葉で商売は買い手と売り手が満足するのは当然、その上で社会に貢献してこそ良い商売だって意味です。貴族や豊かな人だけでなく、誰でも気軽に手に入れられるものを売らなければ、社会貢献にはなりません」

 冨岡の言葉を聞いたアメリアは言葉の意味に納得したものの、疑問は残る。

「どうしてトミオカさんがそこまで考えてくださるんですか?」

 アメリアが問いかけると冨岡は爽やかに微笑んでこう答えた。

「美味しい食べ物は心を豊かにします。心が豊かになれば人は人に優しく出来る。そうすれば、アメリアさんのように身寄りのない子どもたちを気にする人が現れるかもしれない。巡り巡ってフィーネちゃんのような子を救える・・・・・・そう思いませんか?」
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