百億円で異世界に学園作り〜祖父の遺産で勇者・聖女・魔王の子孫たちを育てます〜

澤檸檬

文字の大きさ
上 下
36 / 498

現代料理で異世界無双

しおりを挟む
 しかし冨岡の考えが分かるはずもなくアメリアは首を傾げる。

「安定した収入って・・・・・・考えようによっては大金貨二枚よりも難しいのではないでしょうか。確かにトミオカさんは商人ですから稼ぎ方はご存知でしょうけど、それはトミオカさんの収入ですし」

 そう言われた冨岡はアメリアの基本的な考え方を理解した。
 彼女は冨岡に頼り切るつもりはなく、冨岡が稼いだ分を受け取るつもりもないのだろう。そこで冨岡はアメリアが遠慮しなくてもいい方法を考えた。
 
「アメリアさん、これは俺にとっても利益のあることなんですよ。俺がこの土地で商売をしようと思っても土地勘や人との繋がりを持っていない。アメリアさんが協力してくれれば俺は稼ぐことができ、アメリアさんは安定した収入を得ることができる。どうでしょう、悪い話ではないと思いませんか?」

 アメリアが気を遣わないよう、冨岡は自分にとっての利益を開示する。しかし、そもそも冨岡がこの国、エクスルージュで商売をする理由などなく完全にアメリアのためだった。
 彼女もそれを察して冨岡の優しさを感じる。
 自分やフィーネのためにここまで行動してくれるのだと思った瞬間、つい暖かな涙が溢れた。
 アメリアの涙を見た冨岡は慌てて話しかける。

「え、アメリアさん。どうしたんですか? 何か嫌でした?」
「ううん、ごめんなさい。何だか涙が・・・・・・悲しいのではなく嬉しいんです。私やフィーネのためにここまで考えてくださる方がいることが」

 もしかすると、いやもしかしなくても彼女は優しさに飢えていたのかもしれない。
 頼れる人などおらず、それでもフィーネを育て孤児院を守っていかなければならない状況。そこに現れた冨岡という存在が彼女の心を優しくほぐしたのだった。
 アメリアは自分で涙を拭うと優しく微笑む。

「お話を遮ってすみません。あの、続きを聞かせて頂いてもいいですか?」

 そう話すアメリアの目は冨岡への信頼と好意で満ちていた。
 冨岡はそんなアメリアの表情に心拍を上げながら話を進める。

「は、はい。それではアメリアさんが協力してくれるという前提でお話ししますね。今日、大通りを歩いている時に気づいたことがあるんですよ」
「大通りで気づいたこと、ですか?」
「様々なお店が並んでいましたが、一番多いのは食べ物を売る店でした」

 冨岡が話すとアメリアは納得したように頷いた。

「ええ、そうですね。食べるという行為は生きていくために不可欠でありながら、娯楽の一つでもあります。必然的に食べ物を扱う店は多いですよ」
「俺もそう思いました。だからと言って安易に食べ物を売ろうと考えているわけではありません。今ある店よりも一歩先を行く店を作りたいんです」
「一歩先? それは一体どういうことですか?」

 アメリアがそう問いかけてくることも当然想定内。冨岡はさらに言葉を続ける。

「今あるお店を見ると売っているのはシンプルなものばかりでした。果実をそのまま売っていたり、焼いた肉に塩をかけたものだったり」
「それはそうですね。でもそれが普通じゃないんですか?」
「だからこそ、手の込んだ美味しいものを売れば人気になると思いませんか?」

 冨岡は野望に目を輝かせて言い放った。
 『現代料理で異世界無双』という何とも夢のある言葉が冨岡の頭には浮かんでいる。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

勇者PTを追放されたので獣娘たちに乗り換えて楽しく生きる

まったりー
ファンタジー
勇者を支援する為に召喚され、5年の間ユニークスキル【カードダス】で支援して来た主人公は、突然の冤罪を受け勇者PTを追放されてしまいました。 そんな主人公は、ギルドで出会った獣人のPTと仲良くなり、彼女たちの為にスキルを使う事を決め、獣人たちが暮らしやすい場所を作る為に奮闘する物語です。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

処理中です...