百億円で異世界に学園作り〜祖父の遺産で勇者・聖女・魔王の子孫たちを育てます〜

澤檸檬

文字の大きさ
上 下
33 / 498

人はそれを愛と呼ぶ

しおりを挟む
 冨岡は軽く笑いながらそう話した。
 自分でもどうしてこんなに真剣なのかわかっていない。源次郎の遺言や運命だと思える出会いなどアメリアを救いたいと思う要素はある。だが、誰かのために何かのために救いたいと思っているのではなかった。
 冨岡は冨岡自身のためにアメリアを救いたいと思っている。アメリアとフィーネを幸せにしたいと思っているのだ。
 人はそれを愛と呼ぶのかもしれない。もしくは偽善と呼ぶのかもしれない。
 けれど確かに冨岡の胸には熱く強く激る想いが存在した。
 アメリアは冨岡の言葉を聞き、思わず涙ぐむ。

「トミオカさん・・・・・・でも、一体どうすればいいのか」

 彼女の綺麗な瞳から透き通った涙が落ちた。冨岡に心を許し安心したからなのだろう。これまで様々な苦しみに一人で立ち向かってきたアメリアだからこそこのタイミングで涙が溢れてしまった。

「アメリアさん、大丈夫ですよ。多分俺はこのためにここにきたんです」

 冨岡は真剣な表情でそう言い聞かせる。
 意味のわからない言葉に戸惑うアメリア。

「え?」
「俺がなんとかしてみせます」
「でも・・・・・・どうやって・・・・・・」

 冨岡の勢いに押されながらもアメリアが聞き返した。
 聞き返された冨岡は少し考えてから自分なりの解決方法を話す。

「こういう場合、問題を分解して一つずつ解決していけばいいんです。今考えるべきは借金とフィーネちゃんが将来生きていけるような教育の場。あとはそうですね、安定した収入でしょうか」

 冨岡の言葉を聞いたアメリアは異論がないと頷いた。しかし、大切なのはその中身である。問題を分解して考えたところでどのようにして解決するのかがわかっていないと意味がない。

「確かにその三つを解決できれば教会の存続もフィーネの将来も悩まなくていいのですが、どれも簡単なことではないと・・・・・・」

 そう、簡単にできるのであればアメリアはこれほど悩み苦しんでいないだろう。
 この世界よりも技術の進んだ世界から訪れた冨岡といえど普通ならば簡単には解決できない。しかし、今の冨岡にはアメリアを救える自信があった。
 自身の源は百億円である。祖父、源次郎が残してくれた百億円。それが冨岡に勇気を与えていた。

「大丈夫って言ったじゃないですか。まずは借金からなんとかしましょう。えっと・・・・・・これってどれくらいの価値になりますか?」

 言いながら冨岡は右手の人差し指に着けていた純金の指輪(十五万円)をアメリアに見せる。
 この世界において金がどれくらいの価値になるかという確認だ。
 問いかけられたアメリアはまじまじと指輪を眺めてから顔を上げる。

「これは金でしょうか? すみません、私そういったものには疎くて・・・・・・むしろ商人であるトミオカさんの方が詳しいのではないですか?」

 そういえばそんな設定だったなと思い出し冨岡は慌てて言葉を付け足した。

「いや、その、この国での物価を知りたくて聞いてみたんです。じゃあ、例えば宿だと一泊いくらくらいですか?」

 なんとなく価値の分かるものからこの世界の物価と通貨を知ろうと探る冨岡。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

おじさんが異世界転移してしまった。

明かりの元
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか? モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

処理中です...