百億円で異世界に学園作り〜祖父の遺産で勇者・聖女・魔王の子孫たちを育てます〜

澤檸檬

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教会と幼女

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 いきなり誘われた冨岡が返答できずにいるとアメリアは彼の手を掴んで引っ張る。

「教会はすぐ近くです、是非泊まってください。フィーネにも会ってもらいたいです。この方からご飯をもらいましたよって」

 少し強引だが悪意などは全く感じない。純粋に善意と感謝でそう言ってくれているのだとわかる。
 手を引かれた冨岡はその感触と温度に鼓動を弾ませながら、教会に宿泊すると決めた。

「わかりました。お邪魔させていただきますね」
「本当ですか? やったぁ!」

 冨岡の返答を聞き素直に喜ぶアメリア。今すぐにでもその場で跳ね始めるほどの喜び様である。
 アメリアはそのまま冨岡の手を握り裏路地を出ようとした。

「こっちです!」

 手を引かれた冨岡は慌てて地面に置いたリュックを持ち、自分の足で着いていく。

「ちょ、ちょっと待ってください。アメリアさん」
「ほらほら、急がないと日が暮れてしまいます。そしたら魔物が街の中に入ってくるかもしれませんよ」
「ま、魔物!?」
「ふふっ、冗談です。親が子どもに対して夜遊びさせないよう言い聞かせる嘘ですよ。魔物は街に入ってきません」

 アメリアの背後を歩きながら冨岡は心の中で呟いた。
 やっぱり存在するのか、魔物。まぁ、プチワイバーンの時に聞いてたけど・・・・・・スタンガンで勝てるかな。
 まるでこの先、魔物と対峙するという場面を予期したような心の声である。
 
 そのまま冨岡とアメリアは屋台や店が並んでいた大通りに出て右折した。しばらく進むと左右に道が伸びている十字路に出て、再び右折する。
 少し細くなった道を進むと明らかに周囲の建物よりも古く老朽化した木製の建物が見えた。黒い屋根と白い外壁がところどころ剥がれ、廃屋なのではないかと思ってしまう。
 しかしアメリアはその建物の前で足を止め、嬉々として紹介した。

「ここが教会です。私の家でもあるんですよ!」
「こ、ここが・・・・・・」

 冨岡が元いた世界であれば何らかの法律により住むことが許されないのではないかと思うほどの建物。冨岡は法律に詳しくないのでそう思うだけだが、それほど古く劣化していた。
 簡単にいうならば驚くほどにボロボロである。
 ここで建物の外観に反応するわけにもいかないので冨岡は黙ってアメリアについて行った。
 彼女は冨岡を連れて教会の中に進む。大きな木製の扉を開けると礼拝堂らしき広間になっていた。だが、しばらく使っていないのがわかるほど老朽化している。
 礼拝堂を抜けると普通の扉があり、そこから先が孤児院になっているとアメリアは説明した。
 説明を聞きながらアメリアに着いていく冨岡。アメリアが孤児院への扉を開けた瞬間、元気で透き通った幼い声が響いてくる。

「おかえりー!」

 そう叫びながら走ってきたのは大きな目をした茶髪の幼女だった。
 年齢は五歳くらいだろうか、小さな体を目一杯使ってアメリアに向かってくる。
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