百億円で異世界に学園作り〜祖父の遺産で勇者・聖女・魔王の子孫たちを育てます〜

澤檸檬

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泊まっていきませんか?

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 大きな口を開けてメロンパンを食べ進めるアメリア。残り一口になったところで食べ過ぎてしまったと感じたのか申し訳なさそうに冨岡に差し出す。

「あ、すみません。私ったら一人でこんなに。小さくなってしまいましたが、トミオカさんもどうぞ。元々トミオカさんの物ですし」

 そう言いながらも彼女は名残惜しそうにメロンパンを見つめていた。
 そんな様子を可愛らしいと思いながら冨岡は首を横に振る。

「全部食べて良いんですよ。俺はいつでも食べられますしね」
「こんな甘くて手の込んだパンをいつでも・・・・・・トミオカさんは貴族様なのですか?」

 アメリアに問いかけられた冨岡は自分のことをどう説明しようかと悩んだ。
 素直に異世界人と話せばリスクが生じる。例えばこの世界の宗教上の理由で異世界人が許されなければ冨岡は追われる身となるかもしれない。そうでなくとも迫害の対象である可能性も否定できないだろう。
 しかし、ある程度納得のできる理由がなければアメリアは冨岡の助けを受け入れない可能性があった。
 そこで冨岡は自分の身分をこう偽る。

「いえ、俺は貴族ではなく商人です。故郷で商人としてある程度の財を築いたのですが、世界を見て歩きたいと思い知人に商売を任せて旅に出てきました。ある程度の資金は持って出ているのでその・・・・・・お金のことは・・・・・・その」

 気にせずに、と続けようと思った冨岡だったが嫌味に聞こえるかもしれないと言葉を止めた。
 言葉の先を察し、それも冨岡の気遣いだと理解したアメリアは優しく微笑みメロンパンを食べきった。

「ごちそうさまでした。本当に美味しかった・・・・・・ありがとうございます」
「いえ、アメリアさんが美味しそうに食べている表情でこっちまで幸せになりましたよ」
「な、何言ってるんですか。そりゃ、こんなに美味しいものを食べたら自然と笑顔になっちゃいますけど・・・・・・」

 言いながらアメリアは両手で赤くなった頬を覆う。
 照れている彼女を可愛く思い、冨岡は優しく微笑んだ。
 そんな話をしていると空は青から橙色に変化を始める。黄昏時も近いと感じた冨岡がどうしようかと考えているとアメリアの方から話しかけた。

「あの、トミオカさん」
「はい?」
「旅をしていると仰っていましたが、本日の宿は決まっていますか?」

 質問された冨岡は一瞬鏡の方に視線を送ってからどうしようかと考える。
 一度、元の世界に帰って日を改めるかこちらの世界で宿泊するか。まだ決めかねていた冨岡だが、長く沈黙するのも不自然なのでそのまま答える。

「えっと、まだ決まっていないんです。少し街を探索しようと思っていたところだったので」
「そうですか!」

 嬉しそうに立ち上がるアメリア。どうしたのかと冨岡が見つめると彼女は自分の胸に手を当てながら言葉を続けた。

「もしよろしければ、教会に泊まって行きませんか? 宿泊する部屋は余っていますし、助けていただいたお礼もできていません。ううん、私にできるお礼はそれくらいですから」
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