17 / 498
メロンパンの想い
しおりを挟む
諭すようなアメリアの言葉。
これは彼女の経験から生まれた言葉である。失望や絶望は期待や希望から生まれるものだ。期待しなければ失望することもない。
冨岡にアメリアと自分を重ねて同情する気持ちがなかったわけではないだろう。しかし、それだけではなかった。
こちらの世界にはないだろう知識と文明、そして何より百億円が冨岡にはある。
偶然の出会いだったかもしれない。たまたま境遇が似ているだけかもしれない。だが、冨岡はこの出会いに運命的な何かを感じずにはいられなかった。
源次郎の遺言もあり、冨岡はアメリアを救うことが自分の運命なのだと信じて疑わない。
「軽い気持ちではありません。もちろん自分の境遇と重ねてる部分はあるかもしれませんが、それでも俺はアメリアさんを救いたい。アメリアさんが守ろうとしているものを守りたいんです!」
そう言いながら冨岡はアメリアの手を握る。遠くから見ると告白かプロポーズに見えるような状況だ。
いや、当人であるアメリアも半ば告白されているように感じているだろう。冨岡の熱い視線と真剣さ。
冨岡の言葉に胸を打たれたアメリアは頬を赤らめて小さく頷く。
「・・・・・・はい。よろしくお願いします」
これはどちらへの返事なのか、彼女すらもわかっていなかった。
そんな複雑な気持ちなど知らず良い返事を聞いた冨岡は嬉しそうに笑みを浮かべる。
「良かった! こちらこそよろしくお願いしますね!」
思わずアメリアを抱きしめそうになる冨岡。なんとか自制すると冨岡は立ち上がりリュックを取りに向かった。
異世界探索のために食料を多めに詰め込んだリュック。今ではそう判断した過去の自分を褒めたい。
今、アメリアに必要なのは明日を生きる勇気や過去を忘れる希望ではなく今日のための食料だった。
冨岡は躊躇なくリュックを開いて彼女に見せる。
「アメリアさん、とりあえずこれがあればアメリアさんも待っている子もお腹いっぱい食べられませんか?」
「え、これって・・・・・・」
そう言いながら不思議そうにリュックの中を除くアメリア。
入っているのは包装されたおにぎりやパン、お菓子。保存食やミネラルウォーターである。見たこともないアメリアがそれを食料だと認識できるわけもない。
それに気づいた冨岡はメロンパンの袋を開けてアメリアに手渡す。
「ああ、入ってるのはほとんど食べ物なんですよ。はい、どうぞ」
「食べ物・・・・・・これはパンですよね? 甘くて香ばしい匂いがします」
言いながらアメリアはメロンパンを受け取りゆっくり口に運んだ。
「いただきます・・・・・・はむ・・・・・・ん! な、なんですかこれ。サクッとしててフワッとしてて甘くて柔らかくて、こんなの食べたことありません!」
一気に輝き出すアメリアの瞳。古今東西に限らず異世界でも甘味は人に活力を与えるものなのだろう。
彼女の笑顔はどんな宝石よりも輝いて見えた。思わず冨岡はときめいてしまう。
「よ、良かったです。まだたくさんありますから、持って帰ってください」
話しながら冨岡はリュックごとアメリアの足元に置いた。
これは彼女の経験から生まれた言葉である。失望や絶望は期待や希望から生まれるものだ。期待しなければ失望することもない。
冨岡にアメリアと自分を重ねて同情する気持ちがなかったわけではないだろう。しかし、それだけではなかった。
こちらの世界にはないだろう知識と文明、そして何より百億円が冨岡にはある。
偶然の出会いだったかもしれない。たまたま境遇が似ているだけかもしれない。だが、冨岡はこの出会いに運命的な何かを感じずにはいられなかった。
源次郎の遺言もあり、冨岡はアメリアを救うことが自分の運命なのだと信じて疑わない。
「軽い気持ちではありません。もちろん自分の境遇と重ねてる部分はあるかもしれませんが、それでも俺はアメリアさんを救いたい。アメリアさんが守ろうとしているものを守りたいんです!」
そう言いながら冨岡はアメリアの手を握る。遠くから見ると告白かプロポーズに見えるような状況だ。
いや、当人であるアメリアも半ば告白されているように感じているだろう。冨岡の熱い視線と真剣さ。
冨岡の言葉に胸を打たれたアメリアは頬を赤らめて小さく頷く。
「・・・・・・はい。よろしくお願いします」
これはどちらへの返事なのか、彼女すらもわかっていなかった。
そんな複雑な気持ちなど知らず良い返事を聞いた冨岡は嬉しそうに笑みを浮かべる。
「良かった! こちらこそよろしくお願いしますね!」
思わずアメリアを抱きしめそうになる冨岡。なんとか自制すると冨岡は立ち上がりリュックを取りに向かった。
異世界探索のために食料を多めに詰め込んだリュック。今ではそう判断した過去の自分を褒めたい。
今、アメリアに必要なのは明日を生きる勇気や過去を忘れる希望ではなく今日のための食料だった。
冨岡は躊躇なくリュックを開いて彼女に見せる。
「アメリアさん、とりあえずこれがあればアメリアさんも待っている子もお腹いっぱい食べられませんか?」
「え、これって・・・・・・」
そう言いながら不思議そうにリュックの中を除くアメリア。
入っているのは包装されたおにぎりやパン、お菓子。保存食やミネラルウォーターである。見たこともないアメリアがそれを食料だと認識できるわけもない。
それに気づいた冨岡はメロンパンの袋を開けてアメリアに手渡す。
「ああ、入ってるのはほとんど食べ物なんですよ。はい、どうぞ」
「食べ物・・・・・・これはパンですよね? 甘くて香ばしい匂いがします」
言いながらアメリアはメロンパンを受け取りゆっくり口に運んだ。
「いただきます・・・・・・はむ・・・・・・ん! な、なんですかこれ。サクッとしててフワッとしてて甘くて柔らかくて、こんなの食べたことありません!」
一気に輝き出すアメリアの瞳。古今東西に限らず異世界でも甘味は人に活力を与えるものなのだろう。
彼女の笑顔はどんな宝石よりも輝いて見えた。思わず冨岡はときめいてしまう。
「よ、良かったです。まだたくさんありますから、持って帰ってください」
話しながら冨岡はリュックごとアメリアの足元に置いた。
10
お気に入りに追加
317
あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

おじさんが異世界転移してしまった。
明かりの元
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか?
モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

俺の召喚獣だけレベルアップする
摂政
ファンタジー
【第10章、始動!!】ダンジョンが現れた、現代社会のお話
主人公の冴島渉は、友人の誘いに乗って、冒険者登録を行った
しかし、彼が神から与えられたのは、一生レベルアップしない召喚獣を用いて戦う【召喚士】という力だった
それでも、渉は召喚獣を使って、見事、ダンジョンのボスを撃破する
そして、彼が得たのは----召喚獣をレベルアップさせる能力だった
この世界で唯一、召喚獣をレベルアップさせられる渉
神から与えられた制約で、人間とパーティーを組めない彼は、誰にも知られることがないまま、どんどん強くなっていく……
※召喚獣や魔物などについて、『おーぷん2ちゃんねる:にゅー速VIP』にて『おーぷん民でまじめにファンタジー世界を作ろう』で作られた世界観……というか、モンスターを一部使用して書きました!!
内容を纏めたwikiもありますので、お暇な時に一読していただければ更に楽しめるかもしれません?
https://www65.atwiki.jp/opfan/pages/1.html
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる