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源次郎の遺書
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『浩哉へ。これを読んでいる頃には私はもう死んでいるだろう。もしかすると死んでから日が開いているかもしれないな。お前は目の前のことで精一杯になってしまう性格だ。だが、それは悪いことではない。何事にも真摯に向き合っているという証拠だ』
「なんでわかるんだよ、爺ちゃん」
自分の行動を予測されていた冨岡は少しの恥ずかしさを感じながら呟く。そしてまた遺書を読み始めた。
『私が筆を取ったのはお前に伝えなければならないことがあるからだ。もっと早くに伝えなければならなかったが、お前が可愛くてどうしても言えなかった。一度深呼吸をしてから読んでくれ。したか? 本当に深呼吸したか? 深呼吸とは深く息を吸い込んで吐き出すことだ。深呼吸をしてから読むんだぞ』
「しつこいよ爺ちゃん。したよ、もう十分なほど深呼吸したよ」
そうコメントしてから冨岡は遺書の続きを読む。
『深呼吸したな。いいか最初に吐き出す動作が重要だ。吐き出さなければ吸い込むことはできない』
「なんで深呼吸に対してこんなに熱量あるんだよ。もうわかったよ」
『そろそろ深呼吸は終わった頃だろう。いいか、お前と私は血が繋がっていない。それだけだ。あと山ははお前にやる。売れば少しは金になるだろう』
そこで遺書は終わっていた。
全てを読み終えた冨岡は思わずこう叫ぶ。
「終わり!? 待って待って、深呼吸についての文字数の方が伝えたいことよりも多いのはどういうことだよ。ってか、サラッと流すな。え、血が繋がっていないってどういう」
遺書の内容に驚いると冨岡は封筒の中に小さなメモが残っているのを発見した。
「ん、なんだこれ」
そう言いながらメモを手に取るとこんなことが書いてある。
『続きは押入れにある』
「いや、謎解きゲームか。全部遺書に書いてよ!」
源次郎の茶目っ気だろうか。そんなものに惑わされながら冨岡は押入れに向かう。
埃っぽい押入れの中を探すと冨岡は『遺書第二章』と書かれた封筒を発見した。
「本当に遺書なのか、これは。死の間際に書いたはずだよな」
言いながらも冨岡は封筒を開け、便箋を読む。
『よく見つけたな。こちらが本題だ。深呼吸してからよく読め』
「もういいよ、深呼吸は」
『深呼吸したか?』
「うるさいな。悲しみも吹き飛ぶぞ?」
『第一章についてを詳しく説明する第二章の始まりです』
「無いから、遺書に章なんて」
『心して読め。お前は私の友人夫婦の子どもだ。その夫婦は私の恩人でな、どうしようもない時に救われている。そんな友人たちが遺したお前を私は愛おしくてたまらなくない。そうして自分の孫として育てることにした。お前との生活は楽しく、お前の成長は私にとって人生の喜びだったよ。ありがとう。その上で私がお前に遺せるものはこの気持ちと山だけだ。誰かが成長していく喜び、それを教えてくれる出会い。それを知るために山を売れ。もう既に業者には連絡してある。連絡先のメモを入れておくから気づいた時に連絡するように。そしてこれが最後の言葉だ。私の家族でいてくれてありがとう、浩哉。お前は私の誇りだよ。どうか困っている人間を助けられる人間であってくれ。お前の両親のようにな。源次郎より』
源次郎の遺書はそう締めくくられていた。
途中、源次郎の茶目っ気に驚き笑っていた冨岡だが読み終えた瞬間に涙が溢れてくる。どうしても止められない涙。
しかし、それは悲しみではなく源次郎からの愛情を感じて流した涙だった。
「なんでわかるんだよ、爺ちゃん」
自分の行動を予測されていた冨岡は少しの恥ずかしさを感じながら呟く。そしてまた遺書を読み始めた。
『私が筆を取ったのはお前に伝えなければならないことがあるからだ。もっと早くに伝えなければならなかったが、お前が可愛くてどうしても言えなかった。一度深呼吸をしてから読んでくれ。したか? 本当に深呼吸したか? 深呼吸とは深く息を吸い込んで吐き出すことだ。深呼吸をしてから読むんだぞ』
「しつこいよ爺ちゃん。したよ、もう十分なほど深呼吸したよ」
そうコメントしてから冨岡は遺書の続きを読む。
『深呼吸したな。いいか最初に吐き出す動作が重要だ。吐き出さなければ吸い込むことはできない』
「なんで深呼吸に対してこんなに熱量あるんだよ。もうわかったよ」
『そろそろ深呼吸は終わった頃だろう。いいか、お前と私は血が繋がっていない。それだけだ。あと山ははお前にやる。売れば少しは金になるだろう』
そこで遺書は終わっていた。
全てを読み終えた冨岡は思わずこう叫ぶ。
「終わり!? 待って待って、深呼吸についての文字数の方が伝えたいことよりも多いのはどういうことだよ。ってか、サラッと流すな。え、血が繋がっていないってどういう」
遺書の内容に驚いると冨岡は封筒の中に小さなメモが残っているのを発見した。
「ん、なんだこれ」
そう言いながらメモを手に取るとこんなことが書いてある。
『続きは押入れにある』
「いや、謎解きゲームか。全部遺書に書いてよ!」
源次郎の茶目っ気だろうか。そんなものに惑わされながら冨岡は押入れに向かう。
埃っぽい押入れの中を探すと冨岡は『遺書第二章』と書かれた封筒を発見した。
「本当に遺書なのか、これは。死の間際に書いたはずだよな」
言いながらも冨岡は封筒を開け、便箋を読む。
『よく見つけたな。こちらが本題だ。深呼吸してからよく読め』
「もういいよ、深呼吸は」
『深呼吸したか?』
「うるさいな。悲しみも吹き飛ぶぞ?」
『第一章についてを詳しく説明する第二章の始まりです』
「無いから、遺書に章なんて」
『心して読め。お前は私の友人夫婦の子どもだ。その夫婦は私の恩人でな、どうしようもない時に救われている。そんな友人たちが遺したお前を私は愛おしくてたまらなくない。そうして自分の孫として育てることにした。お前との生活は楽しく、お前の成長は私にとって人生の喜びだったよ。ありがとう。その上で私がお前に遺せるものはこの気持ちと山だけだ。誰かが成長していく喜び、それを教えてくれる出会い。それを知るために山を売れ。もう既に業者には連絡してある。連絡先のメモを入れておくから気づいた時に連絡するように。そしてこれが最後の言葉だ。私の家族でいてくれてありがとう、浩哉。お前は私の誇りだよ。どうか困っている人間を助けられる人間であってくれ。お前の両親のようにな。源次郎より』
源次郎の遺書はそう締めくくられていた。
途中、源次郎の茶目っ気に驚き笑っていた冨岡だが読み終えた瞬間に涙が溢れてくる。どうしても止められない涙。
しかし、それは悲しみではなく源次郎からの愛情を感じて流した涙だった。
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