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澤檸檬

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エンドロール。

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 エンドロールの後、ヒロインたちはどのような生活を送ったのだろうか。
 燃え上がるような恋愛をし、大好きな人と結ばれたヒロイン。その瞬間は間違いなく幸せだっただろう。
 私もそうだった。映画にできるような恋愛ではなかったが、間違いなく恋愛映画よりも燃え上がるような恋。
 彼と結ばれた私は、言いようのない幸せに包まれていた。
 それから数年。あの熱量はどこへ行ったのか、わからないほど『当たり前の日々』を過ごしている。
 当たり前が悪いわけではない。けれど、刺激を感じることは無くなっていた。
 どうしてだろう。あれほど望んだ日々のはずだ。
 彼の隣に入れるだけでいい、それだけだったのに。
「ねぇ、私と一緒にいて幸せ?」
 私が問いかけると、彼は数年前と変わらぬ笑顔で答える。
「もちろんだよ」
 その笑顔が眩しくて、私は心が苦しくなった。
 自分にこの笑顔を向けてくれるよう願い、向けられれば溶けそうなほど喜んでいたはずなのに。
 どうして自分は『当たり前』だと思ってしまうのだろう。
「ねぇ、今週末はどこに出かける?」
 彼が私に問いかけた。私は頬を緩めて「どこでもいいよ。あなたとなら」なんて言ってみる。
 けれどその視線は窓の外に向いてしまっていた。
 降りた幕が上がる場所を探しているのだろうか。
 エンドロールで流れてしまった彼の名前を、私はもう覚えていない。
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