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澤檸檬

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罪。

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 人を殺してもいい。そう言われた時、実際に行動に移せる人がどれだけいるだろうか。
 つい先程、この国の法が変わった。
 増え続ける人口。それに伴い、食料が不足。全世界の人間が不満を抱き、犯罪が増加した。
 全てを裁ききれないと判断した政府は「一定以上の罪を犯した人間は殺しても罪に問われない」という「全国民執行者法」を制定する。
 これは実質、復讐を容認するということだ。
 何かしら自分に対して害を成した相手を殺してもいい。殺すことで世界から罪人が減り、裁判を行う必要もなくなる。
 全国民執行者法が制定される前、当然ながら世間は反対の声をあげていた。しかし、俺はようやく人生を取り返せる、と希望の光を取り戻したように涙を流しながら祈る。
 俺の両親を殺したアイツ。心神喪失のフリをして罪を逃れたアイツ。そんなアイツに俺は復讐の機会を得た。
 法制定前夜に俺はアイツを襲い、街外れの倉庫に監禁。
「ようやくだよ」
 法制定のニュースがテレビで流れた瞬間、俺は包丁を手にした。
「お前みたいな奴は死んだほうがいい。俺はこの法律に感謝してるよ!」
「やめろ! 俺は無罪だって決まってるんだ! こんなことしていいと思ってんのか」
「こんなことしていいって法律で決まったんだよ! お前を守るものはもうない!」
 そうして俺は復讐を遂げた。
 過去を清算したことで人生が明るく開けたような気がする。復讐は何も生まない、なんて嘘だ。
 俺が人生を取り戻して数日、清々しい気持ちで外を歩いていると背後から、とんでもない衝撃と火傷しそうなほどの熱さを感じる。
 いや、熱さじゃない『痛み』だ。
 包丁を体内に捻じ込まれている。
「うぐああああああ!」
 咄嗟に振り返ると、痩せ細った女性が涙を流しながら笑っていた。
「私は……あなたが殺したあの人の妻です。復讐をしに来ました。あなたがあの人を殺したのは法制定後。しかし、あの人監禁したのは法制定前です。つまりあなたも罪人。全国民執行者法が適応されます」
 復讐が何も生まないなんてやっぱり嘘だ。
 復讐はまた復讐を生む。
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