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引き金。
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本当に正しいのかわからず俺は引き金を引く。
この戦場に到着してからもう二月が経っていた。軍に所属している俺は命令通りに敵の命を奪うしかない。
体力と精神は引き金を引くたびにすり減っていき、もはやそこに己の感情などなかった。
自分が生き抜くために、自国を守るために戦うしかない。
そんな日々が続く中で、俺の目に前に現れたのは敵国の兵士だった。
いや、兵士と呼べるのだろうか。十歳にも満たないと思われる少年が銃を手にし現れたのである。
「くそったれ」
俺は思わずそう呟いた。
これから自分がしなければならないことを考えればそう呟かずにはいられなかった。
目の前にいるのは子ども。だが、戦う意思があるのは明らかだろう。
銃とはそういうものだ。持っているだけで立場と意思をはっきりさせる。
俺の存在に気づいた少年は驚きながら銃口をこちらに向けた。
「やめろ」
言葉は通じないだろうと分かりながらも俺はそう言い放つ。すると少年は慌てて引き金に指をかけた。
何が正義だ、と心の中で呟きながら俺は少年よりも早く引き金を引く。
空気を揺らす聞き慣れた音とほぼ同時に少年は地面に倒れた。もう息はしていないだろう。
そうなるように俺は銃口を少年の額に向けていたのだ。
撃たなければならなかったと自分を誤魔化す俺自身。十歳にも満たない少年が戦わなければならない戦場。何もかもがくそったれだ。
少なくともこの戦場に神などいない。信じられるのは持っている銃だけだった。
俺はこれからも引き金を引き続けるだろう。いつか自分に銃弾が跳ね返ってくるその日まで。
この戦場に到着してからもう二月が経っていた。軍に所属している俺は命令通りに敵の命を奪うしかない。
体力と精神は引き金を引くたびにすり減っていき、もはやそこに己の感情などなかった。
自分が生き抜くために、自国を守るために戦うしかない。
そんな日々が続く中で、俺の目に前に現れたのは敵国の兵士だった。
いや、兵士と呼べるのだろうか。十歳にも満たないと思われる少年が銃を手にし現れたのである。
「くそったれ」
俺は思わずそう呟いた。
これから自分がしなければならないことを考えればそう呟かずにはいられなかった。
目の前にいるのは子ども。だが、戦う意思があるのは明らかだろう。
銃とはそういうものだ。持っているだけで立場と意思をはっきりさせる。
俺の存在に気づいた少年は驚きながら銃口をこちらに向けた。
「やめろ」
言葉は通じないだろうと分かりながらも俺はそう言い放つ。すると少年は慌てて引き金に指をかけた。
何が正義だ、と心の中で呟きながら俺は少年よりも早く引き金を引く。
空気を揺らす聞き慣れた音とほぼ同時に少年は地面に倒れた。もう息はしていないだろう。
そうなるように俺は銃口を少年の額に向けていたのだ。
撃たなければならなかったと自分を誤魔化す俺自身。十歳にも満たない少年が戦わなければならない戦場。何もかもがくそったれだ。
少なくともこの戦場に神などいない。信じられるのは持っている銃だけだった。
俺はこれからも引き金を引き続けるだろう。いつか自分に銃弾が跳ね返ってくるその日まで。
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