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終止符を打つ時

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 倉野の言葉を聞いたリオネは小さく頷く。

「確かに・・・・・・その通りかもしれません。でも、危険性を考えるとここで確実に息の根を」

 そこまでリオネが口にすると、倉野は悲しげな表情を浮かべた。
 たとえ敵でも、命を奪うようなことはしたくない。その考えだけは変わっていなかった。
 もちろん、相手を殺すことに慣れていない点や、殺したくないというこれまでの人生で刷り込まれてきた常識がそう思わせているのだが、一番は『相手の死を背負う覚悟』がないことである。
 相手の命を奪った事実は、未来永劫ついて回る。それに耐えられるほどの精神を倉野は持ち合わせていなかった。
 リオネの判断が正しいこともわかっている。そうすることが最善種であることも。
 だが、どれだけ力を手にしても、倉野の根底だけは変わっていなかった。
 生クリームを山のように盛ったケーキのように甘い思想だ、と言われても仕方がない。
 その上、倉野はリオネにも『ミミーの死』を背負わせたくない。
 
「・・・・・・ミミーはゼット商会の一員です。その罪は重い。けど・・・・・・ミミーの罪を裁くのは僕やリオネさんじゃないですよ。無力化さえできれば、命までは奪う必要はないでしょう。僕のこんな理想にリオネさんを巻き込んで申し訳ないと思いますが・・・・・・」

 倉野が弱々しくそう言うと、リオネは一呼吸置いてから答えた。

「ゼット商会はバレンドットという国を乗っ取ろうとしているどころか、私たちの仲間、ノエルさんを連れ去ったんです。それにこの戦いは私たちだけの問題ではありません。戦いの結果は世界中に影響を及ぼすでしょう。少しでも危険性を排除できる道があるのならば、そちらを選ぶべきだと思います」
「リオネさん・・・・・・」
「けれど、私はクラノさんの計算から外れた優しさに救われたんです。生身でドラゴンに立ち向かうような優しさがなければ、私は生きていません。クラノさんの優しさで救われた命ですから、クラノさんの優しさに着いていきますよ。私はそんなクラノさんが大好きですからね。それに、これまでクラノさんは、相手の命を奪わずに勝ち続けてきたじゃないですか。だったら、命を奪わない方法の方が勝算があるはずです。クラノさんの中に躊躇がなくなりますから」

 倉野の心をよく理解したリオネの言葉に、背中を押される。
 自分でも甘い考えだと思っていた倉野だが、確かにミミーの命を奪うことを作戦に加えたとしても、直前になって躊躇する可能性が高い。
 ならば命を奪わない作戦を貫いた方が成功率は高いだろう。

「ありがとうございます、リオネさん。そう言ってもらえたおかげで、迷いなく進めます。さぁ、行きましょう。ミミーとの戦いを終わらせに!」
「はい!」
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