720 / 729
連載
戦況支配
しおりを挟む
可能性としてミミーがデュワールから倉野の能力について聞き、知っているかもしれない。
しかし、そもそもデュワールも倉野の全てを知っているわけではないだろう。そんな完全ではない他人か聞いた情報よりも、自分が見ている倉野から判断するはずだ。
そうなれば倉野は『確かに優れた能力を持っているが、直接的な脅威ではない』ように見える。
「なるほど。ミミーがスキル『千里眼』で見ていることを利用して、情報を操作しているんですね。クラノさんが優秀なのは攻撃ではなく、補助能力だと思い込ませ、ミミーを誘き寄せる」
内容を聞いたリオネが作戦を理解したところで、倉野はさらに話を続けた。
「ええ、ミミーの『千里眼』に僕は『リオネさんの補助』として映る。攻撃能力の低いサポーターというわけです。そうなれば、ミミーは僕たちを取り囲み、近距離での攻撃を仕掛けるようとする・・・・・・何せこちらは二人、相手は五人ですからね。そこで一気にミミーを気絶させましょう。その距離ならばリオネさんの魔法も届きますよね?」
「そうですね、ミミーが私たちを目視できる位置にいるなら私の魔法は届きます。でも・・・・・・」
そうリオネは一旦言葉を止める。彼女の口調から小さな不安を感じた倉野は、その言葉の先を察した。
続く言葉は『そんなに上手くいくだろうか』だと考え、倉野は口を開く。
「大丈夫ですよ、リオネさん。ミミーは優秀な傭兵、それは間違いありません。優秀な傭兵は与えられた任務を確実に完遂するもの。離れた場所から僕たちを倒せないとわかれば、距離を詰めて攻撃してくるはずです。いや、そうしなければならない。それが傭兵として育てられたミミーの習性です」
習性に抗うことは簡単ではない。しかも、戦闘中に想定外のことが起きているこの状況だ。困惑の最中、自分を支えるものは習性と経験。
倉野が言葉を終えた瞬間、スキル『説明』の画面でミミーたち四人の動きを確認した。
「あ! ミミーが動きましたよ」
倉野が言った通り、ミミーたちは隠れながらこちらに向けて移動し始める。
まるで最初から倉野にはミミーの動きがわかっていたようだ、とリオネは一瞬言葉を失った。彼の言葉通りに戦況が動いていく。森という大きな盤上で、自分や味方どころか敵という駒も動かしている。
いや、そんなことできるはずがない。
リオネは自分の想像を笑い飛ばすように心の中で呟いた。だが、倉野という男はこれまでにも『できるはずがない』ことをやってのけている。
もしも本当に敵の考えや行動を全て読み、コントロールすることができるのなら、それはどんな戦闘能力よりも強力と言わざるを得ない。
そして、彼女の想像は正しかった。倉野自身まだ気づいていないが、これまでの戦闘で『相手がどんな動きをしてくるのか』と考え戦い続けた結果、新たなスキルを入手したのである。
スキル『戦況支配』だ。
しかし、そもそもデュワールも倉野の全てを知っているわけではないだろう。そんな完全ではない他人か聞いた情報よりも、自分が見ている倉野から判断するはずだ。
そうなれば倉野は『確かに優れた能力を持っているが、直接的な脅威ではない』ように見える。
「なるほど。ミミーがスキル『千里眼』で見ていることを利用して、情報を操作しているんですね。クラノさんが優秀なのは攻撃ではなく、補助能力だと思い込ませ、ミミーを誘き寄せる」
内容を聞いたリオネが作戦を理解したところで、倉野はさらに話を続けた。
「ええ、ミミーの『千里眼』に僕は『リオネさんの補助』として映る。攻撃能力の低いサポーターというわけです。そうなれば、ミミーは僕たちを取り囲み、近距離での攻撃を仕掛けるようとする・・・・・・何せこちらは二人、相手は五人ですからね。そこで一気にミミーを気絶させましょう。その距離ならばリオネさんの魔法も届きますよね?」
「そうですね、ミミーが私たちを目視できる位置にいるなら私の魔法は届きます。でも・・・・・・」
そうリオネは一旦言葉を止める。彼女の口調から小さな不安を感じた倉野は、その言葉の先を察した。
続く言葉は『そんなに上手くいくだろうか』だと考え、倉野は口を開く。
「大丈夫ですよ、リオネさん。ミミーは優秀な傭兵、それは間違いありません。優秀な傭兵は与えられた任務を確実に完遂するもの。離れた場所から僕たちを倒せないとわかれば、距離を詰めて攻撃してくるはずです。いや、そうしなければならない。それが傭兵として育てられたミミーの習性です」
習性に抗うことは簡単ではない。しかも、戦闘中に想定外のことが起きているこの状況だ。困惑の最中、自分を支えるものは習性と経験。
倉野が言葉を終えた瞬間、スキル『説明』の画面でミミーたち四人の動きを確認した。
「あ! ミミーが動きましたよ」
倉野が言った通り、ミミーたちは隠れながらこちらに向けて移動し始める。
まるで最初から倉野にはミミーの動きがわかっていたようだ、とリオネは一瞬言葉を失った。彼の言葉通りに戦況が動いていく。森という大きな盤上で、自分や味方どころか敵という駒も動かしている。
いや、そんなことできるはずがない。
リオネは自分の想像を笑い飛ばすように心の中で呟いた。だが、倉野という男はこれまでにも『できるはずがない』ことをやってのけている。
もしも本当に敵の考えや行動を全て読み、コントロールすることができるのなら、それはどんな戦闘能力よりも強力と言わざるを得ない。
そして、彼女の想像は正しかった。倉野自身まだ気づいていないが、これまでの戦闘で『相手がどんな動きをしてくるのか』と考え戦い続けた結果、新たなスキルを入手したのである。
スキル『戦況支配』だ。
0
お気に入りに追加
2,851
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)
葵セナ
ファンタジー
主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?
管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…
不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。
曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!
ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。
初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)
ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。