異世界で俺だけレベルが上がらない! だけど努力したら最強になれるらしいです?

澤檸檬

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戦況支配

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 可能性としてミミーがデュワールから倉野の能力について聞き、知っているかもしれない。
 しかし、そもそもデュワールも倉野の全てを知っているわけではないだろう。そんな完全ではない他人か聞いた情報よりも、自分が見ている倉野から判断するはずだ。
 そうなれば倉野は『確かに優れた能力を持っているが、直接的な脅威ではない』ように見える。

「なるほど。ミミーがスキル『千里眼』で見ていることを利用して、情報を操作しているんですね。クラノさんが優秀なのは攻撃ではなく、補助能力だと思い込ませ、ミミーを誘き寄せる」

 内容を聞いたリオネが作戦を理解したところで、倉野はさらに話を続けた。

「ええ、ミミーの『千里眼』に僕は『リオネさんの補助』として映る。攻撃能力の低いサポーターというわけです。そうなれば、ミミーは僕たちを取り囲み、近距離での攻撃を仕掛けるようとする・・・・・・何せこちらは二人、相手は五人ですからね。そこで一気にミミーを気絶させましょう。その距離ならばリオネさんの魔法も届きますよね?」
「そうですね、ミミーが私たちを目視できる位置にいるなら私の魔法は届きます。でも・・・・・・」

 そうリオネは一旦言葉を止める。彼女の口調から小さな不安を感じた倉野は、その言葉の先を察した。
 続く言葉は『そんなに上手くいくだろうか』だと考え、倉野は口を開く。

「大丈夫ですよ、リオネさん。ミミーは優秀な傭兵、それは間違いありません。優秀な傭兵は与えられた任務を確実に完遂するもの。離れた場所から僕たちを倒せないとわかれば、距離を詰めて攻撃してくるはずです。いや、そうしなければならない。それが傭兵として育てられたミミーの習性です」

 習性に抗うことは簡単ではない。しかも、戦闘中に想定外のことが起きているこの状況だ。困惑の最中、自分を支えるものは習性と経験。
 倉野が言葉を終えた瞬間、スキル『説明』の画面でミミーたち四人の動きを確認した。

「あ! ミミーが動きましたよ」

 倉野が言った通り、ミミーたちは隠れながらこちらに向けて移動し始める。
 まるで最初から倉野にはミミーの動きがわかっていたようだ、とリオネは一瞬言葉を失った。彼の言葉通りに戦況が動いていく。森という大きな盤上で、自分や味方どころか敵という駒も動かしている。
 いや、そんなことできるはずがない。
 リオネは自分の想像を笑い飛ばすように心の中で呟いた。だが、倉野という男はこれまでにも『できるはずがない』ことをやってのけている。
 もしも本当に敵の考えや行動を全て読み、コントロールすることができるのなら、それはどんな戦闘能力よりも強力と言わざるを得ない。
 そして、彼女の想像は正しかった。倉野自身まだ気づいていないが、これまでの戦闘で『相手がどんな動きをしてくるのか』と考え戦い続けた結果、新たなスキルを入手したのである。
 スキル『戦況支配』だ。
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