718 / 729
連載
包囲網を倍返し
しおりを挟む
「そんなことありませんよ。ただ・・・・・・」
「ただ?」
「これまでリオネさんを獲物と見定め追い詰める側にいた人間が、逆に追い詰められていくんです。どれほどの恐怖か・・・・・・叩き込んでやりましょう。何せ、リオネさんの命を奪おうとしたんですから」
これほど荒ぶっている倉野をリオネは見たことがなかった。
穏やかで陽だまりのような倉野が、その熱源を露わにし怒りを燃やしている。自分の為に怒気を纏う倉野には頼もしさと、敵に回した時の恐ろしさを感じた。
「クラノさん、一体何を?」
「当然、リオネさんの感じた恐怖と痛みをそのままお返しするんですよ。いや、そのままじゃあ足りませんよね。ああ、僕の国にはこんな言葉があります・・・・・・倍返しってね」
そう言ってから倉野は足元を指差す。
「ほら、ちょうどここにはミミーが放ってきた矢が大量に落ちてます。背中は僕が守りますし、偽ミミーの場所をお伝えしますので可能な限り矢を放ってください。狙いは大体でいいです。むしろその方がいい。こちらが確実な居場所を掴んでいる、と悟られずに済む」
これまでリオネに余裕がなかったので認識していなかったが、確かにミミーから放たれた矢が周辺に散乱していた。これだけあれば矢が切れる心配はない。
リオネは倉野の指示通りに矢を拾い集めてから、先ほどと同じ方向に弓を構える。
「この方向でいいんですか?」
リオネが問いかけると、倉野は振り向かずに答えた。
「ええ、多少のズレは気にせずに数を放ってください。大変だとは思いますが」
「これまでの追い詰められていたことを考えれば、百本や二百本放つくらいなんてことありませんよ!」
彼女はその言葉と同時に最高速度で矢を放つ。そんな速度で矢を放てば手持ちの分はすぐになくなる。その度に足元の矢を拾い補充した。
矢の嵐とまでは言わずとも、小気味のいいリズムで矢が偽ミミーに向かう。
「いい感じですよ、リオネさん」
スキル『説明』の一画面を使って偽ミミーの動きを確認していた倉野は、思わず口角を上げた。
森を抜けたところで偽ミミーは次の行動を決められず慌てふためく。自分の体を射抜く位置に飛んではこないものの、周囲に飛来する矢。スキル『感覚共有』を利用して本物のミミーにどうすればいいのかと尋ねるが、向こう側も混乱の最中にあった。
「残念だな、偽ミミー。本物の方はどうして矢が届かないのか、解明している途中だよ。それも連続で矢を放ちながらね!」
本物と偽の動向を確認しながら話している倉野だが、リオネからすると完全に独り言である。それも自分の作戦が上手くいき、悪い顔をしたままだ。
偽ミミーに矢を放ち続けているリオネから倉野の表情は見えないが、声で大体わかる。
「クラノさんが良い人でよかったですよ、本当に」
「ただ?」
「これまでリオネさんを獲物と見定め追い詰める側にいた人間が、逆に追い詰められていくんです。どれほどの恐怖か・・・・・・叩き込んでやりましょう。何せ、リオネさんの命を奪おうとしたんですから」
これほど荒ぶっている倉野をリオネは見たことがなかった。
穏やかで陽だまりのような倉野が、その熱源を露わにし怒りを燃やしている。自分の為に怒気を纏う倉野には頼もしさと、敵に回した時の恐ろしさを感じた。
「クラノさん、一体何を?」
「当然、リオネさんの感じた恐怖と痛みをそのままお返しするんですよ。いや、そのままじゃあ足りませんよね。ああ、僕の国にはこんな言葉があります・・・・・・倍返しってね」
そう言ってから倉野は足元を指差す。
「ほら、ちょうどここにはミミーが放ってきた矢が大量に落ちてます。背中は僕が守りますし、偽ミミーの場所をお伝えしますので可能な限り矢を放ってください。狙いは大体でいいです。むしろその方がいい。こちらが確実な居場所を掴んでいる、と悟られずに済む」
これまでリオネに余裕がなかったので認識していなかったが、確かにミミーから放たれた矢が周辺に散乱していた。これだけあれば矢が切れる心配はない。
リオネは倉野の指示通りに矢を拾い集めてから、先ほどと同じ方向に弓を構える。
「この方向でいいんですか?」
リオネが問いかけると、倉野は振り向かずに答えた。
「ええ、多少のズレは気にせずに数を放ってください。大変だとは思いますが」
「これまでの追い詰められていたことを考えれば、百本や二百本放つくらいなんてことありませんよ!」
彼女はその言葉と同時に最高速度で矢を放つ。そんな速度で矢を放てば手持ちの分はすぐになくなる。その度に足元の矢を拾い補充した。
矢の嵐とまでは言わずとも、小気味のいいリズムで矢が偽ミミーに向かう。
「いい感じですよ、リオネさん」
スキル『説明』の一画面を使って偽ミミーの動きを確認していた倉野は、思わず口角を上げた。
森を抜けたところで偽ミミーは次の行動を決められず慌てふためく。自分の体を射抜く位置に飛んではこないものの、周囲に飛来する矢。スキル『感覚共有』を利用して本物のミミーにどうすればいいのかと尋ねるが、向こう側も混乱の最中にあった。
「残念だな、偽ミミー。本物の方はどうして矢が届かないのか、解明している途中だよ。それも連続で矢を放ちながらね!」
本物と偽の動向を確認しながら話している倉野だが、リオネからすると完全に独り言である。それも自分の作戦が上手くいき、悪い顔をしたままだ。
偽ミミーに矢を放ち続けているリオネから倉野の表情は見えないが、声で大体わかる。
「クラノさんが良い人でよかったですよ、本当に」
0
お気に入りに追加
2,845
あなたにおすすめの小説
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい
増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。
目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた
3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ
いくらなんでもこれはおかしいだろ!
死んだのに異世界に転生しました!
drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。
この物語は異世界テンプレ要素が多いです。
主人公最強&チートですね
主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください!
初めて書くので
読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。
それでもいいという方はどうぞ!
(本編は完結しました)
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。