異世界で俺だけレベルが上がらない! だけど努力したら最強になれるらしいです?

澤檸檬

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悪い顔の倉野

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 倉野の指示を受けたリオネは迷わず矢を手に取った。

「はい! 真正面ですね」

 そう言ってからリオネは弓を構える。
 倉野からは『真正面』という情報しか与えられていない。偽ミミーを射抜くのであれば射出角度や左右の微妙な調整は必要だろう。

「クラノさん、左右の角度は?」
「真正面で大丈夫です。射抜くのが目的ではありませんから」
「え? じゃあ、このまま放ちますよ」

 リオネは倉野の言葉を信頼し、矢に力と魔力を込める。見つめるのは一点、真正面だ。
 彼女は風魔法の付与によって矢を旋回させ、周囲の物を破壊しながら一直線に進む一射を放つ。

「はっ!」

 リオネ自身には偽ミミーの居場所など分からない。スキル『風読み』の範囲外にいるのだから当然だ。
 完全に倉野の言葉を信じた一射である。
 放ち終えたリオネは背後の倉野に声をかけた。

「クラノさん、これで・・・・・・」

 その言葉の途中で、リオネは倉野の気配が消えていることに気づく。

「あれ、クラノさん?」
「はい、どうしました?」
「うわっ、びっくりした。今、いなかったですよね?」
「ああ、ちょうど矢が大量に飛んできていたので叩き落としていました」

 どうやら倉野は、リオネが話しかけた瞬間にスキル『神速』を発動して行動していたらしい。
 スキル『神速』は時間停止の能力ではなく、全ての法則を無視した超高速移動。リオネのスキル『風読み』が倉野の気配を一瞬だけ見失ったのはそれが原因である。

「やっぱりとんでもない能力ですね、クラノさん。改めて見るとそう思います。見えてないんですけど」
「それでも万能ってわけじゃないんです。リオネさんの魔法を借りてなければ矢に触れることもできませんよ。僕は一人じゃあ強敵に勝てない。仲間がいるから戦えるんです」
「クラノさん・・・・・・」
「そういえば僕のことを呼んでましたよね? どうしたんですか?」

 倉野が問いかけると、リオネは疑問を抱いていたのだと思い出して問いかけた。

「えっと、言われた通りや放ったんですけど、これでいいのでしょうか?」
「ええ、大丈夫です。言ったでしょう、目的は偽ミミーを射抜くことじゃないって。目論見通り、偽ミミーは一人で焦り始めています」
「偽ミミーが? そうか! ミミーたちはクラノさんの存在に気づいていても、その能力までは知らない・・・・・・その上、これまで私はミミーの居場所を掴むことができていませんでしたから、突然自分の方向に矢が飛んでくれば慌てますよね。もしかすると『自分の居場所は掴まれているのか』って」

 倉野の作戦に気づいたリオネ。
 それに対して倉野は頷いて答えた。

「その通りです。また偽ミミーは本物ほど能力が高いわけではない。孤独な中、一人だけ狙われた偽ミミーの動揺は大きいでしょう。一体いつまでスキル『感覚共有』を保っていられるか、見ものですね」
「クラノさん、悪い顔してませんか? すごく」
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