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制限と権限

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 リオネの言葉を即座に受け入れ、拳を握る倉野。
 相手は五人のミミーだ。二人で共闘することを狡猾だの、卑怯だのと非難される覚えはない。
 正々堂々と二人で五人に挑む。リオネは改めてその気持ちを固めた。
 これは競技ではない。負ければ終わりの『戦い』である。
 気持ちの切り替えも強さの一つだと言っていい。

「それじゃあクラノさん、ミミーの居場所ってわかりますか?」

 状況を把握するためにリオネが、弓を構えながら問いかける。
 当然ながら倉野は、スキル『説明』でミミーの居場所を把握していた。

「はい。さっき矢が飛んできた方向に四人、その正反対に一人です。嵐のような連射は四人で同時に放っていたものでした。その四人の中に本物のミミーがいます。ミミーのスキルは『千里眼』魔法の属性は風。その二つを組み合わせることで、長距離の索敵と強力な一射を叶えているんです。五人の連携を支えているのは正反対の場所にいる一人。その偽ミミーがスキル『感覚共有』を所持していて、本物のミミーが持っている『千里眼』の景色を全ミミーに共有することで『最強の一人』を演出しているんです」

 リオネは一気に明かされる情報になんとか食らいつき、一つずつ理解する。

「スキル『千里眼』と『感覚共有』で五人を一人に。それがミミーの強さの正体。ううん、弓に関しては五人じゃなくても十分過ぎるほどの実力。敵を確実に追い詰めるための五人か・・・・・・ミミーの強さはミミー本人の能力によるもの」

 彼女が情報を噛み砕き受け止めた様子を確認し、倉野は四人のミミーがいる方向を指差した。

「スキル『千里眼』で見ているんですから当たり前ですけど、ミミーたちは今、僕の存在に気づいて慌てています。流石に想定外だったようですね。あまりにも一瞬すぎて矢が叩き落とされたことまでは気づけていないようですが」

 それに関しては仕方ないだろう。倉野以外の誰が目にも映らぬ速度で矢の嵐を叩き落とせるのか。戦いを知っていればいるほど思いつかない。

「じゃあ・・・・・・」

 倉野の説明を聞いたリオネは希望を見出したように目を見開く。
 相手にとって想定外なことが起きた瞬間は、明らかな好機。

「ええ、相手が慌てている今がチャンスです」

 倉野がそう続けると、リオネは首を傾げた。

「ここからクラノさんがスキル『神速』でミミーたちを?」
「それはできません。ミミーには『ドラゴンの逆鱗』の発動権限があります。その上で、現在他の幹部クラスたちは全て打ち破りました。ミミーをスキル『神速』で倒してしまえば、同じく権限を持っているデュワール・オレンジが動くかもしれません。拮抗しているように見せなければならないんです」

 こちら側がギリギリの戦いを繰り広げているように見せなければならない、という制限。
 だが、結局のところ勝って仕舞えばデュワール・オレンジが動くかもしれない。
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