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闇の中で目を閉じる

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 一体、自分の身に何が起きたのかさえ、理解が追いつかない。
 ツクネがここにいた理由も、どんな魔法をかけられたのかもわかっていないが、そんなことは大した問題ではなかった。
 リオネにとって大切なのはもう一度戦えること。
 失いかけていた命を拾ったことである。
 ツクネは次にすべきことのために去ったのだろう、と推測しリオネは再び弓を握った。

「一度死んだようなものだもの・・・・・・もう何も恐れない!」

 たった一人で孤独に闇の中、見えない敵と戦い続けていたリオネ。当然ながら体も疲弊していたが、最も疲れていたのは精神だった。
 そこに現れたツクネが癒したのもまた、体だけではない。
 自分には仲間がいる、と再認識したリオネは心に溢れていく熱を感じる。
 最低限、時間を稼げば役目は果たせるのだと、下方修正していた目標。しかし、戦い始める前はミミーを超えると誓っていたはずだ。
 リオネは当初の誓いを思い出し、眉間にシワを寄せる。

「私とミミーとの最大の違いは敵の居場所を把握しているかどうか。矢が飛んできた方向からミミーの場所を炙り出そうとしても、移動し続けているのなら不可能ね。『風読み』を魔法で無理やり広げても、集中力を持っていかれすぎてまだ反撃まではできない。なら、純粋に弓で戦う土俵に引き摺り出せばいい!」

 自分に言い聞かせるように呟いたリオネは、弓と矢を構えたままそっと目を閉じた。
 
「見えるから恐るなら、見なければいい。目に頼ってる限りミミーは越えられないの」

 そう付け足して、スキル『風読み』を発動する。
 矢の飛来に関しては目視で確認するよりも、『風読み』だけにした方が確実だ。目から入ってくる情報がない分、感覚が研ぎ澄まされる。
 リオネが目を閉じてすぐ、スキル『風読み』が矢の飛来を感知した。

「来た・・・・・・右!」

 リオネは目を閉じたまま、向かってくる矢に向けて鏃を向ける。
 呼吸を整え、たった一点を感覚で捉えた。

「違う、もう少し上・・・・・・左・・・・・・ここ!」

 一気に息を吐き出しながら、リオネは矢を放った。
 目指すのは飛来する矢の先端。もちろんそれは途轍もなく難しい一射だ。
 移動し続ける一点をタイミングよく射抜かなければならない。
 その上、夜の闇では目で追いかけることも難しく、目視確認した直後には射抜かれているだろう。だからこそリオネは目を閉じ、スキル『風読み』のみで矢の居場所を捉えていた。
 動き続ける豆粒を射抜くような正確さを求められる一射。
 練習などあるはずもなく、一発勝負の本番。
 失敗して当然の一射だったが、リオネはそれを見事に成し得る。
 矢と矢は先端同士でぶつかり合い、互いの軌道が左右に逸れた。

「よし!」
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