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体外魔力の利用

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 おそらくツクネは自分の役目を放棄するようなことはしていないはずだ。そんな性格をしていないことくらいはリオネにもわかる。

「そうよね、クラノさんからお願いされてたもの。じゃあ、どうしてここに?」

 リオネが問いかけると、ツクネはトコトコと傷口に近寄り、前足で触れた。

「ククッ!」
「傷を?」

 何となくではあるがツクネのやりたいことを理解したリオネは、右手を傷口から離し任せてみる。
 当然ながら、リオネはツクネに『傷を癒す』能力があることなど知らない。それでも任せてみるのは心から信頼する仲間だからだ。

「クー!」

 ツクネ自身も任せろと言っているように感じ、リオネは頷く。

「私を心配してきてくれたの? ありがとう、ツクネ」
「ククー!」

 リオネの言葉に返答しながら、ツクネの毛が風の魔力で逆立った。

「風の魔法? もしかして、ここから逃げるつもり? だめ、私はまだ戦えるわ」

 風の魔力からリオネが想像したのは、飛翔。この場で飛翔するなら、逃避行動以外に考えられなかった。
 まだ戦いたい。自分は何の役にも立っていない。ちゃんとミミーを超えたい。勝ちたい。リオネはそう強く願いながらツクネに言う。
 もちろん、ツクネに逃げるつもりはない。

「クー、ククッ」

 ツクネは大丈夫だよ、と自分なりの言葉でリオネに伝え、回復魔法を発動させる。
 周囲に旋風が発生し、木の葉を巻き上げた。その中心にはリオネの傷口があり、魔力が集まっていくのがわかる。
 通常、魔法を発動するとなれば自らの体内に貯蔵している魔力を消費するものだ。
 しかし、リオネが魔力の流れを見る限り、ツクネは魔力を消費していない。

「空気中の魔力を集めているの? こんな魔法、見たことがない・・・・・・」

 その凄さに驚いていると、リオネは足の感覚が戻っていくことに気づいた。
 さらに驚いたのは、まるで逆再生でもするかのように傷口が小さくなっていくことである。

「え・・・・・・傷口が・・・・・・これは回復魔法なの?」

 途轍もない速度で小さくなった傷口は、次第に消えてなくなった。
 それと同時に全身の痛みも疲れも消え失せていることに気づくリオネ。

「傷どころか疲れまで・・・・・・ツクネ、あなたは・・・・・・」
「クー?」
「ううん、ありがとう。何でもない。あなたのおかげで、私はまだ戦える!」
「クー!」

 リオネの傷を癒したツクネは、嬉しそうに体を伸ばす。その直後、再び飛翔し、素早く夜の闇へと消えていった。
 しっかりとした礼も言えず、信じられないほどの回復魔法を受けたリオネは呆気に取られる。
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